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2020-04

『ある醜聞(スキャンダル)』ベルトン・コッブ

 - 2020.03.22 Sun
コッブ,ベルトン
ある醜聞
『ある醜聞(スキャンダル)』ベルトン・コッブ(論創海外ミステリ)

非業の死を遂げたロンドン警視庁の女性職員。その背後には警察内部の醜聞が隠されていた……。事件を追うブライアン・アーミテージ警部補は真相を明らかにできるのか?(本書あらすじより)

これまで翻訳が『消えた犠牲』しかなかったベルトン・コッブの作品が、論創から出ました。てっきり作数の少ないクラシック作家かと思っていたのですが、最初のミステリ作品が1936年、そこから1971年に亡くなるまで、50作以上も発表していたんですね、ベルトン・コッブって。活動期間を考えると、カーと同時期なんだよなぁ。
で、『ある醜聞』ですが……全体的には面白かったと言えますし、200ページの長編と考えればまぁこんなもんで良いんじゃないでしょうか、という感じ。クラシック本格ミステリとしては、悪くない論創ではないでしょうか。

ロンドン警視庁のアーミテージ警部補は、週末の田舎町で、上司のバグショー警視が宿泊するホテルに彼の秘書が入っていくところを見かける。翌週、秘書が死体となって発見されるが、バグショーは週末のことを何も言わなかった。アーミテージは上司が何を隠しているのか暴こうとするが……。

主人公のアーミテージがやや暴走気味なところとか、終盤のツイストとか、最後の皮肉な結末とか、これ誰かの作風っぽいなぁと思ったら、あれなんですよ、バークリーですよ。これ、バークリーファンが好きなやつですよ、間違いない。
原題が『スコットランドヤードのスキャンダル』となっているように、ロンドン警視庁の刑事たちが後ろ暗いことを隠している話です。主要登場人物4人もみな刑事。主人公のアーミテージは警部補なので警視や部長刑事の間に挟まれる中間管理職としてもなかなか苦労人です。
結構一発ネタ寄りの作品なのに、ミスディレクションが露骨で容疑者も少ないため、割と真相は予想しやすいかもしれません。まぁでも、この短さならこういうネタでも許せるかな……。

主人公は名探偵でも名刑事でもなく、とにかく「上司は何かを隠しているに違いない!」と突っ走るだけな人で、一方で上司は終始堂々とした態度。さらに、主人公は上司の泊まっていたホテルに秘書を送り届けはしたものの、ホテルに入っていくところ自体は実は見ていないのです(ということに中盤気付くのがちょっと遅いんですが)。言ってしまえばパターンとしては、「(実際に殺人犯かはともかく)本当に上司が秘書と付き合っていた」と「主人公の勘違いだった」のどちらかしかないわけで、しかも主人公が全然迷わないので、謎解きミステリ的な転がし方としてはあんまり意外性が生まれにくいわけです。
という具合なので、大枠としてはあまりどんでん返しがないのですが、そこからもう一歩、読者への騙しがあるので、やはり出来は悪くはないでしょう。ただでもこれ、1969年の作品なんですよねー。1930〜40年代の黄金時代ならまだ分かりますが、1969年にしちゃあ……なんだろう、うっすい内容のような気がするのです。いや十分に面白いしそこそこ楽しみましたが。ちょっとミスディレクションをやりすぎなのかな。

というわけで、本書を読んだ結果、ベルトン・コッブに対する期待値が無にリセットされたので、『消えた犠牲』を読むまでは評価は保留とします。作者の死の二年前に書かれた『ある醜聞』とは異なり、『消えた犠牲』は1958年の作品なので、またちょっと作風が違うかもしれないですね。

原 題:Scandal at Scotland Yard (1969)
書 名:ある醜聞(スキャンダル)
著 者:ベルトン・コッブ Belton Cobb
訳 者:菱山美穂
出版社:論創社
     論創海外ミステリ 245
出版年:2019.12.25 初版

評価★★★★☆
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『「レインボウズ・エンド」亭の大いなる幻影』マーサ・グライムズ

 - 2020.02.27 Thu
グライムズ,マーサ
「レインボウズ・エンド」亭の大いなる幻影
『「レインボウズ・エンド」亭の大いなる幻影』マーサ・グライムズ(文春文庫)

朝靄にけぶる古代遺蹟の穴ぼこで息絶えていた女性、そして別の日、別の町でさらに二人の女性が急死した。一見なんの関連もなさそうな三人の死を結ぶ一本の線が―三人とも同じ時期にアメリカのある町にいたのだ。魅惑の地ニューメキシコのサンタフェである。それだけの幻のような線をたぐり、ジュリー警視はふたたび海を渡る。(本書あらすじより)

2019年1月から続けてきた月一マーサ・グライムズ再読、2020年1月をしそびれてしまいましたが、とにかくついに最終回です。いやー感慨深いなぁ……で、今回は感想が鬼長いので、ご覚悟ください。あとまとまりもないです。最後だから書きたいこと全部書く。
シリーズ13作目『「レインボウズ・エンド」亭の大いなる幻影』ですが、シリーズの過去作をやたらと織り交ぜながら660ページにわたってグライムズ節でダラダラ読ませるという、一見さんお断り感ハンパねえ作品なのであります。とはいえ、ここまで徹底して「シリーズ」として作られると、なんかもう好き放題やればいいんじゃいか、みたいな気持ちになってきました。

前作『「乗ってきた馬」亭の再会』の完全な続編で、そもそも前作で起きた未解決の事件が題材。バラバラな場所、バラバラな時期に、3人の女性が心臓発作で倒れた。3人が一時期アメリカのサンタフェにいたことから、マキャルヴィ方面部長は殺人であると断言し、ジュリー警視は単身アメリカに飛ぶが……。

前作と今作をまとめるなら「アメリカ編」なんですが、趣はだいぶ異なります。前作はシリーズキャラクター何人かでアメリカに行き、しかもボルティモアというポオの街を観光しつつ捜査……というトラベル・ミステリ感満載の内容でしたが、今回はジュリー警視一人でアメリカに行く上に、あまり観光地感のない街で一人いつもの捜査を進める、というものです。
連続心臓発作というとらえどころのない事件なので、ミステリとしてはフーダニットに加えてもちろんハウダニットもあるわけですが、これに関しては(いつも通り)かなりお粗末。犯人の造形もいい加減ですし、まぁ正直言って謎解きミステリとしては見どころはありません。ぶっちゃけアメリカを舞台とする意味もあんまりないし。

ちなみに意外と本作を嫌いになれない理由のひとつが、アメリカでジュリー警視が会う容疑者たちが全員キャラクターとしてかなり良く出来ているところです。グライムズはうじうじ考えたり、逆に浮世離れしていたりする人間を描くのがやっぱり上手いんですよねぇ。
特に、被害者の19歳離れた妹メアリの人物造形は、グライムズが得意とする利発な「子供」の完成形の一つ。仲の良い姉の性格との対比で現実主義的な面をしっかり描きつつ、ネイティブアメリカンの風習を取り入れた神秘主義的な面も違和感なく持たせています(メアリの登場を限界まで引っ張るのも上手いですよね)。

また、今作で面白いのが、まずジュリー警視と元貴族メルローズ・プラントの二人の関係性、というか性格の変化。今までは「無自覚にモテるジュリー」と「嫉妬するプラント」だったのに、ジュリーがアメリカに行きプラントが取り残され、そこでプラントが思いっきり自由に捜査を行うことで、ジュリーに対しやや優位に立つようになるのです。ここ数作のプラントは探偵として結構優秀なんです。
二人は連絡は取り合うけど会うことはなく、660ページの最後の最後でのみ、直接会います。ここでジュリーがらしくない弱さを見せます。ジュリーとプラントが、両方がっつり恋愛のことを考えまくる……という展開も、実は珍しいし。これ、次作以降どうなっていくのかなぁ。決まった相手が出来るとはとても思えないんだけど……。

単体としてはもう全く評価できない作品になってしまいましたが、13作コツコツ読んできた身としては初期からの大きな変化が感じられてやっぱり面白く読めました。もはやダラダラ読むのが楽しくなってきていますし。とはいえ、ここで翻訳が止まってしまったのも仕方ないかなと思わなくもありません。やっぱ分厚すぎるしな……。
なお、翻訳が止まった理由の一つではないかと疑っているのですが、『「レインボウズ・エンド」亭の大いなる幻影』は、過去作の登場人物が意図的に多数登場します。シリーズ3作目・9作目の登場人物はかなり出てくる他、セリフだけで5作目のことを匂わせたりと、明らかに出まくっているのです。作者としてもシリーズの総括的な位置付けにしたかったのでしょうか。
今度13作品の総括もちゃんとやりましょう。次も何か月一読書やってみたいなぁ。

原 題:Rainbow's End (1995)
書 名:「レインボウズ・エンド」亭の大いなる幻影
著 者:マーサ・グライムズ Martha Grimes
訳 者:山本俊子
出版社:文藝春秋
     文春文庫 ク-1-14
出版年:1998.08.10 1刷

評価★★★★☆

『おちび』エドワード・ケアリー

 - 2020.02.23 Sun
ケアリー,エドワード
おちび
『おちび』エドワード・ケアリー(東京創元社)

マリーは、お世辞にも可愛いとはいえない小さな女の子。父の死後、母と共に人体のパーツを蝋で作る医師のところに住み込むが、そのあまりのリアルさに敬虔なクリスチャンである母は耐えられずに自殺、残されたマリーが、医師の手伝いをすることに。やがてマリーは医師に伴われてパリに行き、ルイ16世の妹に仕える。だがパリには革命の嵐が。〈アイアマンガー3部作〉の著者が激動の時代を生きたマリーの生涯を描く、驚天動地の物語。(本書あらすじより)

アイアマンガー三部作が面白かったので、他のケアリーも全部買って積んでいたところ、さっそうと新刊が登場したので読んでみました。ですが……あんまり刺さらなかったんだよなぁ。なぜだろう、というのを読み終わってずっと考えています。以下は、感想というより、読み終わって書いたメモのようなもの、とお考え下さい。

後にマダム・タッソーの蝋人形館をロンドンで作ることになる少女マリーは、スイスのベルンで人付き合いの苦手な医師クルティウスに出会う。母親を亡くしクルティウスの下で暮らすことになったマリーは、彼の蝋人形制作を手伝うようになる。やがてパリに移住した彼らは、蝋人形制作を行う中で、フランス革命に巻き込まれていくのだが……。

たぶんですけど、「かわいそうな孤児物」があんまり好きじゃないんですよね……パリに移住後、居候先となる仕立て屋のピコー夫人がクルティウスとマリーをいいように利用していくところか、結構つらい……ピコー夫人の息子エドモンドとの出会いとかは、アイアマンガー三部作を思い起こさせるボーイミーツガールで好きなんですけど。
中盤、ルイ16世の妹エリザベートに気に入られ、マリーはついに家を出て、エリザベート専属の蝋人形の先生としてヴェルサイユ宮殿に住み始めます。フランス革命前のブルボン王家や貴族の様子がたっぷり描かれており、このへんの雰囲気はすごく好き。ルイ16世がすごく良い人だ……ケアリーの生み出す登場人物って、ぶっちゃけ好きになれない人が多いんですけど、彼だけ割と純粋に良い人だ……。

フランス革命後、マリーたちは王党派ではないかと疑われたり、スイス人であることから他国のスパイではないかと疑われたり、けど彼らの作る蝋人形が重宝されたりと、とにかく激動の人生を送っていくことになります。特に、フランス革命に突入した後の、暴動に明け暮れる民衆、恐怖政治のもとで周りを告発しまくる民衆、戦争に向けてヒートアップしていく民衆など、ナポレオン登場前のひたすらに暴力的なパリが描かれるのが素晴らしいです。フランス革命と言えば、恐怖政治を挟みつつも、とにかく革命に賛同していた民衆か、あるいは虐げられた貴族かのどちらかの視点から見ることが多いように思いますが、この視点からの物語はすごく貴重なのかも。

ただ、やっぱりハマれなかったんですよね。常に気丈で、気高くて、自分のやりたいことをやり通そうとするマリーは応援したくなるキャラクターですが、ザ・イヤな人物として描かれるピコー夫人はともかく、マリーが慕いマリーの「保護者」であるクルティウス医師がどうしても好きになれなかったからかも。こういう、そこはかとなくイヤ~な大人を描くのがケアリーの本領発揮なんでしょうけど……。
あとは、自分がアイアマンガー三部作を楽しめたのって、作者ケアリーの尋常でないモノへのこだわり、そしてファンタジックさの2つだったと思うのですが、『おちび』にはそこがあまりなかったのもハマれなかった理由かも。どうも『望楼館追想』を読むべきらしいので、今度はそっちでケアリーとの相性を考えてみようかなぁ。

原 題:Little (2018)
書 名:おちび
著 者:エドワード・ケアリー Edward Carey
訳 者:古屋美登里
出版社:東京創元社
出版年:2019.11.29 初版

評価★★★☆☆

『白衣の女』ウィルキー・コリンズ

 - 2020.02.08 Sat
コリンズ,ウィルキー
白衣の女 上 白衣の女 中 白衣の女 下
『白衣の女(上・中・下)』ウィルキー・コリンズ(岩波文庫)

暑熱去らぬ夏の夜道、「ロンドンに行きたい」と声をかけてきた白ずくめの女。絵画教師ハートライトは奇妙な予感に震えた――。発表と同時に一大ブームを巻き起こし社会現象にまでなったこの作品により、豊饒な英国ミステリの伝統が第一歩を踏み出した。ウィルキー・コリンズ(1824-89)の名を不朽のものにした傑作。(本書上巻あらすじより)

毎年恒例年越しディケンズ(6回目)……をいつもなら年末年始にやるのですが、2019年はもう『オリヴァー・ツイスト』を春に読んだ上に『荒涼館』の再読までしているので、今回はやりません。
じゃあ代わりに何を読むか、19世紀のディケンズ代わりになりそうなミステリっぽい作家っていたっけ……そうだ、ウィルキー・コリンズだ!というわけで、今年は番外編年越しコリンズ、岩波文庫版『白衣の女』に挑戦です。最適解でしょこれ。
そして、大興奮のまま読み終えていました。自分がクラシックが好きとかヴィクトリア朝作家が好きすぎとかそういうの全部抜きにして、客観的に見てスーパーウルトラ傑作だと思います。マジです

ディケンズの面白さって、個人的には超好きなんですが、たぶん19世紀の小説としての面白さなんですよ。ところが『白衣の女』の面白さは明らかに20世紀のエンタメを読む面白さのように思えるのです。クラシックを読んでいて、この作品がこの時代に書かれたの?!ってたまになることがありますが(『ビッグ・ボウの殺人』とか)、あの感覚に非常に近いというか。
『月長石』に興奮したのが2010年。そしてそれを上回る興奮を『白衣の女』が与えてくれたのが2020年。ウィルキー・コリンズ、最高!

岩波文庫版で言うと上中下巻がそれぞれ第一部、第二部、第三部となっていて、話が大きく変わっていきます。第一部では、貧しい中流階級の絵描きが上流階級の女性の美術の家庭教師となり、お互いに身分違いの恋に落ち、しかし彼女には決められた貴族の結婚相手がいて……みたいなやつ。よくある。
しかしその絵描きが偶然出会った、精神病院から抜け出した「白衣の女」が、貴族の女性の結婚相手となっている準男爵に関する何らかの秘密を知っているらしく……みたいな謎が提示されます。準男爵がかなりうさんくさい人間である中、さぁどうなる、という顛末が、関係者の手記で語られていくのです。

さて、第二部ではある巧妙な犯罪が行われ、そして第三部では追いやられた主人公たちが復讐の鬼と化し、中ボスと究極の大ボスと命がけの戦いを繰り広げます。そう、これは復讐譚なんですよ! 特に第二部以降は、お互いが相手の裏をかこうとする頭脳編なんです。だから、とにかくハラハラドキドキ、サスペンスフルで、クソ面白い。第二部のラストとかめっちゃビビる面白さ。『荊の城』の上巻読了時みたいな感じ(だから、サラ・ウォーターズが好きな人にはもれなく読んでもらいたい……)。

さて主要登場人物。全然ダラダラしていない、気の休まらない頭脳戦を繰り広げる善側が、まず恋に落ちた美術教師ウォルター・ハートライト。そしてもう一人が、ウォルターと恋仲になったローラの姉、マリアン・ハルカム嬢なのであります。このマリアンがもうとにかく魅力的なんですよ……ここだけで1000字は語れるな……。
マリアン・ハルカムという、超絶魅力的な、ヒロインじゃないけど実質ヒロインを生み出せたという時点で作者の完全勝利と言っていいのではないでしょうか。邪悪な企みから妹を守るため、とにかく頭を使い何とかしようとする彼女がむちゃくちゃかっこいいのです。本当にこの作品が19世紀に書かれたのかよ。信じられねぇな。

さらに敵役の、とりあえずネタバレを避けるため誰とは言いませんが、ある人物がこれまた信じられないくらい魅力的。007とかルパン三世のラスボスのような悪のカリスマ。謎の情けとかかけちゃうあたりがますます悪のカリスマっぽいし。
この魅力的な敵味方が争いつつ、全ての謎が解かれる第三部は圧巻としか言いようがありません。ウィルキー・コリンズがこだわる(『月長石』と同様の)手記リレー形式にも必然性があり、多視点を生かしてこれだけの物語を紡ぎ出せるのは本当にすごいと思います。全力でおすすめ。

19世紀の長編ミステリの始祖として語られるディケンズの『荒涼館』とコリンズの『白衣の女』、どっちも好きですが、どちらかをおすすめするとなると、万人向けの面白さと言う点で『白衣の女』の圧勝と言う他ないかな……悔しいけども……(だって19世紀離れしてるからさぁ)。今後もウィルキー・コリンズの長編はなるべく読んでいきたいですね(あんまり手に入らないけど)。

ところで、岩波文庫版『荒涼館』の感想でも書きましたが、つくづく自分は岩波文庫の翻訳をなめていたなぁと反省しています。とにかくべらぼうに読みやすい。なんか、勝手に読みにくいイメージがあったので……いや昔のは実際読みにくかったと思うんだけど……。

原 題:The Woman in White (1959~1960)
書 名:白衣の女(上・中・下)
著 者:ウィルキー・コリンズ Wilkie Collins
訳 者:中島賢二
出版社:岩波書店
     岩波文庫 赤284-1,2,3
出版年:1996.03.18 1刷
     2011.06.06 6刷

評価★★★★★

『「乗ってきた馬」亭の再会』マーサ・グライムズ

 - 2020.01.18 Sat
グライムズ,マーサ
「乗ってきた馬」亭の再会
『「乗ってきた馬」亭の再会』マーサ・グライムズ(文春文庫)

春先の憂鬱にとらわれたジュリーのもとに、旧知の貴族夫人からお呼び出しがかかった。恩あるレディに頼まれて、アメリカの殺人事件を調べるはめになり、警視、ついに大西洋を渡る。(本書あらすじより)

月一グライムズ再読、ついに12冊目(読んだのはちゃんと12月頭なんですよ、感想は今ですけど)。ジュリー警視一向、友人に頼まれアメリカに行く、の巻。初読時の印象はかなり悪いのですが……。
思ったよりアメリカにいる主人公たちの描写に違和感がなく(というかイギリスにいるのと変わらない)、ボルティモアを舞台にポオが密接に絡んでいくのも割と面白い……とは思います。ただ、ここ数作全般に言えることですが、シリーズ要素がいくら何でも強すぎてストーリー的に邪魔なんだよなぁ。

ポオの未発表原稿を入手し論文を書こうとしていた女子大学生殺し、山中のロッジで殺された若い男性、ホームレス殺しという3つの無関係な殺人。前作の登場人物に頼まれて女子大生殺しを調べにアメリカに来たジュリー警視らによって、3つの殺人が結び付けられていく様は悪くありません。いつもより元貴族プラントがめちゃめちゃ推理しているのもダブル主人公的に良いですし。

大学が舞台の一つとなるせいでクセの強い大学教授たちが出てきたりと、容疑者も結構魅力的。ただ、動機は良いとして、そこからの犯人特定要素が全くない(このままだと容疑者は2人はいるはずでは)あたり、あぁグライムズは謎解きミステリやめちゃったんだなぁ感がハンパないですね……(初期からそこまでゴリゴリの謎解きでもないとはいえ)。

しかしそんなことより、問題は本書が『「レインボウズ・エンド」亭の大いなる幻影』との実質二部作であることなのです。一作で完結はしているけど、キャラクター同士の関係とかもろもろが次に持ち越された感があります。だから事件解決後にダラダラと何十ページもまだ残りがあるわけで……。
このシリーズは、シリーズキャラクターが雪だるま式に増えまくっていきます。もちろん彼らの登場は楽しいし魅力的なことこの上ないんですが、あくまでそれをストーリーの副にしてほしかったんですよ。だから最後の何十ページかは完全に蛇足。アメリカにいる間の捜査とかもろもろすごく良いだけに、本当にもったいないのです。

来月読む『「レインボウズ・エンド」亭の大いなる幻影』は、それこそここまでの12作の総括的な意味合いのある作品。これを読んだら、グライムズ総括的なことをやって、月一グライムズ再読を終わりにしようかな、と思っています。

原 題:The Horse You Came In On (1993)
書 名:「乗ってきた馬」亭の再会
著 者:マーサ・グライムズ Martha Grimes
訳 者:山本俊子
出版社:文藝春秋
     文春文庫 ク-1-13
出版年:1996.05.10 1刷

評価★★★★☆

『「老いぼれ腰抜け」亭の純情』マーサ・グライムズ

 - 2019.12.26 Thu
グライムズ,マーサ
「老いぼれ腰抜け」亭の純情
『「老いぼれ腰抜け」亭の純情』マーサ・グライムズ(文春文庫)

警視ジュリーが恋のとりこになった。相手は美貌の未亡人だがどこか暗い影がある。そのカギは亡き夫の過去にあると見て、親友の独身貴族メルローズを湖水地方へ調査に派遣する。(本書あらすじより)

月一での再読を続けてついに11作目。出ました、ついに『「老いぼれ腰抜け」』亭の純情』です!
客観的に見て、良い点と悪い点が半々くらい……ではあるんですが、個人的に『「老いぼれ腰抜け」亭』の良さにはくらくらっと来てしまいます。陰鬱な雰囲気が前面に出てからの、シリーズの一つの到達点ではないでしょうか。

ジュリー警視が結婚を考えた相手が、自殺と思われる死を迎えた。彼女の一族の中で、この数年間で2件の自殺と2件の事故が起きていたことを知ったジュリーは、湖水地方の金持ち一家にまつわる死の謎を調べることになる。

ぶっちゃけ言うと、謎解きミステリとしては事件の真相はかなり厳しいのです。唐突さもあるし、説得力にもやや欠けるし、証拠はないし、容疑者の掘り下げも足りないし。それはもうふわっふわした謎解きなので、期待してはいけません。まぁ、そもそもこのシリーズに謎解きを期待しすぎて良かったことはないけれども……。

じゃあ何が良いのかって言ったら、この500ページの本全体に漂う雰囲気と、老人と、子供。これにつきます。
いやいや、毎回グライムズはそうじゃねぇか、と言われるとぐうの音も出ないのですが、でもその中でも良いんです。マジで良い。
失意のどん底にあるジュリー警視、周りに無関心で世俗離れした湖水地方の名家、老人ホームに住む強烈で最高なじいさんとばあさん、母の自殺を受け入れられない少年、母の死の真相を調べる下働きの少女。こういったものがとにかく全部素晴らしくて、500ページ全く飽きさせません。

そしてこの雰囲気を最後に彩るのが、(やや残念な)真相解明後の、あの見事なラストシーン。安易? 唐突? やりきれない? もちろんそういうご意見もありましょうが、俺はこれが好きなんです。少なくとも、このシリーズは、これをやっていいだけの積み上げがここまでにあると思うのです。

再読も残り2作となりましたが、この残り2作は、いわばジュリー警視たちがアメリカ(作者の国)に行く「アメリカ編」で、これがもう微妙にもほどがあった記憶しかないので、全然期待していません。再読して評価が変わると良いんだけど……。

原 題:The Old Contemptibles (1991)
書 名:「老いぼれ腰抜け」亭の純情
著 者:マーサ・グライムズ Martha Grimes
訳 者:山本俊子
出版社:文藝春秋
     文春文庫 ク-1-10
出版年:1993.12.10 1刷

評価★★★★★

『「古き沈黙」亭のさても面妖』マーサ・グライムズ

 - 2019.11.19 Tue
グライムズ,マーサ
「古き沈黙」亭のさても面妖
『「古き沈黙」亭のさても面妖』マーサ・グライムズ(文春文庫)

ふさぎの虫にとりつかれたジュリー警視、休暇で訪れたヨークシャーのパブで、人品いやしからぬ婦人がいきなり夫を射殺するのを目にした。単純明快な事件のはずだが何か気にかかる。(本書あらすじより)

月一マーサ・グライムズ、第10弾。今作はいきなり600ページ超えですが、これが以前読んだ時はめちゃくちゃ面白かったはずなのです。
というわけで、6日かけてゆっくり再読。正直初読時より評価を落としてしまった感は否めないのですが、そんなことより、俺の記憶していた場面が出てこなかったのはどういうこと? 何かと混ざってる?

650ページという長さではありますが、そこまではっきりとしたストーリーはないですし、ぐいぐい読ませるような工夫があるわけでもありません。わらわらとまとまりのない登場人物たちをゆっくり描きつつ、ジュリー警視の目の前で起きた妻による夫射殺事件というあまりに明確な殺人に隠された真実がじっくりあぶり出されていきます。

手がかりが正直乏しいのですが(せめて動機の手がかりをもうちょい置いてほしい)、過去の少年二人誘拐事件の真相や、そこから引き起こされた事件の顛末、というミステリ部分は比較的好きなんですよね。物語の核となる、退廃的で、厭世的で、悪人ではないけどクセの強い一族のそろった貴族一家には、まさしく「血は水よりも濃い」を体現しているかのような互いをかばいあう人々が集まっています。本作のミステリ部分は「血は水よりも濃い」という言葉に真っ向から向き合ったかのような事件であり、そしてそれが実際かなり上手く描き出されています。
そして、本作のテーマであり全編を覆う「ロック」という音楽の影がまたすごく良いんです。終始登場人物たちは何かしらの音楽を聞き、何かしらの音楽について語っています。この部分、必要か不必要で言えば不必要なんですが、でもそれが事件を構成する一要素としてたまらなく魅力的であるのも事実。これを読んだせいで、ルー・リードを聴いてみたくなりましたからね、自分は。

650ページはやっぱり長く、作者が(良い意味でも悪い意味でも)ダラダラと書いてしまった感はありますが、でもこの長さは、音楽要素も含め、今作の雰囲気を形作る上での必要悪であり、そしてこの気だるげな雰囲気はやっぱ魅力的なんですよね……と思えたら、たぶんこの本はハマるんでしょう。っていうかグライムズにハマるんでしょう。ちなみに自分はハマっています。そういうことです。

原 題:The Old Silent (1989)
書 名:「古き沈黙」亭のさても面妖
著 者:マーサ・グライムズ Martha Grimes
訳 者:山本俊子
出版社:文藝春秋
     文春文庫 ク-1-9
出版年:1992.03.10 1刷

評価★★★★☆

『「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁』マーサ・グライムズ

 - 2019.10.18 Fri
グライムズ,マーサ
「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁
『「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁』マーサ・グライムズ(文春文庫)

休暇中に遭遇した奇妙な殺人事件の被害者の妻と、テムズ川で見つかった女性の死体の顔は驚くほど似ていた。ただの偶然とは思えない二人の関係を、ジュリー警視が追う。(本書あらすじより)

9月の月一マーサ・グライムズです。シリーズ第1作『「禍の荷を負う男」亭の殺人』の舞台であり、ダブル主人公の片割れである元貴族メルローズ・プラントが住む村、ロング・ピドルトンが舞台となっています。
好き嫌いが非常に分かれそうな作品。トリック面を評価するか、このエンディングを認めるか、あるいは放置プレイになっている様々な要素を問題視するか。極端な話、これは「名探偵が解決できないミステリ」なのです。

メルローズ・プラントの友人である古道具屋トルーブラッドが仕入れたばかりの家具から死体が発見された。状況から考えて、犯人はこの家具を売り払ったばかりの、死んだ男の妻ではないかと思われるが、ジュリー警視はすんなりその結論に納得できず……。

いわば「綺麗な解決」「ハッピーエンド」を時として好まないのがグライムズという作家なんですが、その特性が過去作にない形で現れたのがこの『「五つの骨と貝殻骨」亭』なんだと思います。それを成立させるためのトリックと、事件が、まさにこれ、という。
明確に「トリック」があるタイプのミステリであり、そんなに上手くいくかなぁと思ってしまうような真相ではあります。が、「上手くいってしまった」ということを全面に押し出すことでそれを解決するという、ある意味ずるい描き方であるため、そこまで違和感はありません。

とはいえ核となる人物の描写が、いつものグライムズだったらもっとみっちりやっているだろうに、意外とさらっとしているせいでやや味気ないのも事実。なぜ書き込みが足りないのかというと、偽の手がかりが多く作りすぎたから、と言う他ないのですが、問題はこの偽の手がかりたちが、読んでいる分にはかなり楽しくても、あれもこれもほったらかしで終わってしまっているところ。下手に容疑者を増やすくらいなら、もっと狭いコミュニティにして、短めの話で仕上げた方が良かったのかも。
そういうわけなので、シリーズ1作目の舞台と同じにしてシリーズキャラクターをぞろぞろ出す必要はなかったんじゃないのかな、とか、まぁ色々考えるわけですよ(作者が書きたかったから、あとはファンサービスが理由かなぁとは思いますが)。割と好きではあるけど、完成度としてはマイナスポイントが目立つ作品だと思います。

これで今年9作再読を終えたわけですが、マーサ・グライムズ、再読した何作品かに関しては、初読時に感じたシリーズとしての楽しさよりも、個々の作品の完成度が気になってしまうので、結果的にやや評価を落としている感が否めません。悲しいなぁ……。

原 題:The Five Bells and Bladebone (1987)
書 名:「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁
著 者:マーサ・グライムズ Martha Grimes
訳 者:吉野美恵子
出版社:文藝春秋
     文春文庫 ク-1-8
出版年:1991.03.10 1刷

評価★★★★☆

『死者の国』ジャン=クリストフ・グランジェ

 - 2019.09.23 Mon
グランジェ,ジャン=クリストフ
死者の国
『死者の国』ジャン=クリストフ・グランジェ(ハヤカワ・ミステリ)

パリの路地裏でストリッパーの惨殺遺体が発見される。パリ警視庁警視のステファン・コルソはこの猟奇殺人事件の捜査を進めるが、ほどなくして第二の犠牲者も出てしまう。被害者二人の共通点は、同じストリップ劇場で働いていたこと、そして二人とも、元服役囚の画家、ソビエスキと恋人関係であったこと。コルソはソビエスキを容疑者と考え、彼を追い詰めるが……『クリムゾン・リバー』の著者グランジェが放つ、戦慄と慟哭のサスペンス。(本書あらすじより)

ポケミス最長&最厚の作品が登場です。グランジェはかつて創元推理文庫から何作か出たっきりの、向こうでの人気と比べると日本ではそれほど……なフランス・ミステリ作家。ところが、昨年聞いたことのない出版社(失礼)から突如『通過者』が出て(TAC出版から700ページ超えの上下二段単行本が出ました)、そして今年はポケミスから、と、なぜか急にまた翻訳が続いています。去年は読みたいと思いつつ読み逃してしまったのですが、何と言っても今回はポケミスなので、分厚さにめげずに取り組んでみました。
なんでしょうね、色々な意味でこの本を消化しきれていない気がします。正直なところ、この厚さを気にせず読んで欲しい!とオススメできるかというと、微妙な作品です。

パリでストリッパーが惨殺される。時に強引な捜査を行ってしまうことで知られるコルソ警視は懸命に犯人を追うが、やがて二人目の犠牲者が。捜査の中で浮かび上がってきたのは、ストリッパーと付き合っていたという、世間で話題の初老の画家であった。犯人は彼だと狙いをつけて、コルソは執拗に調べを続けるが……。

絶対こいつが犯人でしょ、という謎の確信を抱いて読み進めていたのですが、とりあえず全然当たっていませんでした。
それはともかく、誤解を恐れつつ言うと、なぜ760ページもあるのかが分からない、というのが正直なところ。もっと短くできるでしょとかそういう意味ではなく(それもあるけど)、なんでたったこれだけのストーリーでポケミス最長になってしまっているのかが分からないのです。めちゃめちゃ読みやすいのは間違いないんですが……。
ややグロめの事件だったり、性癖オンパレードのアブノーマルセックス描写まみれだったり、陰鬱な真相だったり、という内容であるにもかかわらず、薄っぺらいとは言わないけど妙に、こう、「軽い」んですよ。そこに違和感があります。ストーリーはそれほどでもないけど、雰囲気などの色々な味付けで760ページになった……とかなら分かるんですが。いらない展開やら大したことない描写やらで長くなっちゃってるんだろうなぁ。

主人公のコルソ警視が、とにかく読者の共感を得られなそうな直感型突っ走り証拠なし逮捕暴力刑事なのは、ある意味ストーリー上の必要があるので、まぁいいとしましょう。ただ、そんな彼が、思い込みが激しい割に都合の良いところで急に考えをコロコロ変えるのにも違和感。ラスト、そりゃそうなるんでしょうが、お前色々カッタい考え方のくせになんでそんなあっさり思い切れるのかなぁ、とか。
あとは作者の書き方でしょうか。どんでん返しを仕込んでいるかのようなストーリーなのに、偽の真相らしきものに対して、はいこれは真相ではないっすよー!みたいな書き方をして読者の期待をへし折るのは何でですか、マジで。それと、連載小説みたいに前の章の内容をたまに説明しているのも何でですか。

決してつまらない、ってほどでもない、のがまた難しい……いやこうなるとつまらないのかもしれないけど……。どういう経緯でポケミスから出そうってなったのかも気になります(いやポケミス向きの話ではありますが)。グランジェの面白さを理解できたかと言うと微妙なので、とりあえず、復刊した『クリムゾン・リバー』とかを読んでみないとなぁ。

原 題:La Terre des morts (2018)
書 名:死者の国
著 者:ジャン=クリストフ・グランジェ Jean-Christophe Grangé
訳 者:高野優、伊禮規与美
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1944
出版年:2019.06.15 1刷

評価★★★☆☆

『指名手配』ロバート・クレイス

 - 2019.09.14 Sat
クレイス,ロバート
指名手配
『指名手配』ロバート・クレイス(創元推理文庫)

私立探偵エルヴィス・コールは、最近妙に金回りがいい息子タイソンのことを調査して欲しいという、母親からの依頼を受ける。どうやら少年は仲間と裕福な家からの窃盗を繰り返しているらしい。警察に捕まる前に逃亡中のタイソンを確保し、なんとか自首させたいという母親。だが、コールの先回りをするかのように、何者かが少年の仲間を殺していた。そしてタイソンの身も危険が……。大評判となった『容疑者』『約束』に続く第3弾登場。(本書あらすじより)

『容疑者』『約束』に続く創元ロバート・クレイス。『容疑者』は警察官スコットと警察犬マギーが主人公、『約束』はクレイスの主要シリーズであるコール&パイクシリーズにスコット&マギーが登場するという作品でしたが、今作『指名手配』は純粋なコール&パイク物です。従って犬は出ません。
単純に、コール&パイクシリーズは楽しい、という感想に尽きます。軽口&頭担当とバトル担当という私立探偵コンビに、キャラ立ちし過ぎ超有能殺し屋コンビをぶつけたら、そりゃあもう面白いに決まっているじゃないですか、っていう。

連続空き巣強盗事件の犯人である非行少年たちが、やばい物品を盗んでしまったため、命を狙われることに。私立探偵エルヴィス・コールは、少年の母親に依頼され、差し向けられた殺し屋たちから少年たちを守ろうとするのですが……という、ある意味ひねりのないストレートな話。読者には最初からヤバい二人組の殺し屋の存在が明かされている中で、じわじわとコールが確信に迫りつつ、追うものと追われるもののサスペンスが展開されます。

殺し屋コンビがいいんですよ、本当に。徐々に二人の関係性が明かされ、唐突に過去エピソードが語られ(だがそれがいい)、無情なんだけどただただ有能で意外と繊細なキャラクターが、それはそれは魅力的に描かれていきます。脇役・端役に至るまで個性的なのは、クレイスの本領発揮、といったところでしょうか。
また、アクション要素も重要です。最新機器と頭脳を駆使し、死体をあちらこちらに転がしつつ、探偵と殺し屋が全力で潰し合う……果たして決着は?という話の時点で正直もう超楽しいじゃないですか。コールとパイクの無敵感・全能感ハンパないのに、きちんとサスペンスとして危機感が出ているのも良いです。

ただ……あくまでこれは個人的な意見ですが、すらすら読めるし、厚さは一切感じないし、最初から最後まで面白かった一方で、もう少し話が広がってもいいのに、とは思いました。『約束』と比べると『約束』の方が断然好きとは言っておきます(『指名手配』がつまらないとかではないですよ、誤解なきよう)。
やっぱりコール&パイクシリーズは素晴らしいので、全部読みたいなぁと思うのですが、新潮文庫のやつにしろ扶桑社ミステリーのやつにしろ、どんどんレアになっちゃってて半分くらいしか買えていないんですよね……どうしろっちゅうの。

原 題:The Wanted (2017)
書 名:指名手配
作者:ロバート・クレイス Robert Crais
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 ク-23-3
出版年:2019年5月10日 初版

評価★★★★☆

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Author:ヨッシー
クリスティ、デクスター、グライムズ、ディヴァインが好きな、ヨッシーことTYこと吉井富房を名乗る遅読の社会人3年目が、日々読み散らかした海外ミステリ(古典と現代が半々くらい)を紹介する趣味のブログです。ブログ開始から9年になりました。ちなみにブログ名は、某テンドーのカラフル怪獣とは全く関係ありません。
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