荒野のホームズ、西へ行く
『荒野のホームズ、西へ行く』スティーヴ・ホッケンスミス(ハヤカワポケミス)

仕事にあぶれたおれたち兄弟はふとしたきっかけで鉄道会社に雇われ、鉄道保安官の職に就くことに。荒野に出没する強盗団から列車の乗客と鉄道会社の財産を守るのだ。ところが、乗りこんだ急行列車にはワケありの乗客と怪しげな荷物が満載。はたせるかな、サンフランシスコ目指して列車が走り出したとたん、手荷物係が何者かに殺害された。もちろん、かの名探偵の魂を宿す兄貴のオールド・レッドが、この事件を見逃すはずもない。体調不良にもめげず、さっそく調査と謎解きに乗りだすが……痛快カウボーイ探偵が、愛馬を列車に乗り換えて大活躍!好評のシリーズ第二弾登場(本書あらすじより)

タイトルも著者名も長い話(笑)
いやはや、ホッケンスミスがこんなに伸びる作家だったとは驚きです。第一作は、途中ちょっと長すぎる……というか飽きさせる感とか、謎にいまいちくいつけなかったりした感があったんですが、今回は最初から最後までひたすら突っ走るのみ。本格ミステリでありつつも、西部劇風味をうまーく合わせてる秀作です。

まず、事件が魅力的。舞台を列車に置いたのは、よく考えたもんだなと感心します。別に列車だからといって旅行ミステリなわけでも、アリバイトリックがあるわけでも、クリスティばりの密室空間が生まれるわけでもありませんが。あくまで「西部」であるからには、ピッタリとしか言いようがないです。最後の展開は、ロンドンじゃ出来ないしね。

乗客がまた魅力的。この辺は、『オリエント急行の殺人』がちょっと念頭にあったのかも。主人公兄弟や乗客との会話が、前作に増して冴えており、ユーモア的な楽しさがまた倍増しています。これがまたいい味付けなんですね。明らかに、ビッグ・レッドは物語を書くのが上手くなってるし。

とにかく物語的楽しさが多いんですが、ミステリとしても解決過程がよく書けています。実際、犯人が誰かというオールド・レッドの推理は非常に論理的で、言われて「ああ!」と気付くようなものばっかり。フェアプレイでもあるのに撃ち合ったりもするんだから、サービス精神が本当に旺盛ですこと。

とまあ楽しい一冊でした。特に前作との繋がりもないので、これから読むのでいいと思います。

書 名:荒野のホームズ、西へ行く
著 者:スティーヴ・ホッケンスミス
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1825
出版年:2009.6.15 初版

評価★★★★★
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荒野のホームズ
『荒野のホームズ』スティーヴ・ホッケンスミス(ハヤカワポケミス)

洪水で家も家族も失ったおれと兄貴のオールド・レッドは、いまでは西部の牧場を渡り歩く、雇われカウボーイの生活を送っている。だが、ある時めぐりあった一篇の物語『赤毛連盟』が兄貴を変えた。その日から兄貴は論理的推理を武器とする探偵を自認するようになったのだ。そして今、おれたちが雇われた牧場は、どこか怪しげだった。兄貴の探偵の血が騒ぐ。やがて牛の暴走に踏みにじられた死体が見つかると、兄貴の目がキラリと光った……。かの名探偵の魂を宿した快男児が、西部の荒野を舞台にくりひろげる名推理。痛快ウェスタン・ミステリ登場(本書あらすじより)

変わり種の小説でしたね。「ウェスタン・ミステリ」なんてジャンルがあるのかは知りませんが、19世紀末の西部をうまく題材に使えていると思います。

派手なトリックとかはないものの、堅実なミステリでもあり、オールド・レッドの推理はまさに論理的。それに加え、ピストルを撃ち合ったり、馬に乗ったり、カウボーイの仕事が事細かに語られたりと、ウェスタン小説としての要素もしっかりと折り込んでいます。カウボーイたちの野卑な冗談もなかなか効果的。

ただ、長編一冊目というせいか、あまりこなれていないかなぁと思う節もあります。一度でもミステリを書こうとした人は分かると思うんですが、主人公が容疑者に話を聞いて回るというのを描くのは非常に難しいんですよね。そういうせいもあり、全体的にテンポが上がらない、という印象を受けました。これ以降の作品には期待したいところです。

……とまあやや批評的に書きましたが、ぶっちゃけなかなか面白いですよ。暇つぶしにはちょうどいいかもしれません。

一つ面白いと思ったのは、ホームズが作中では実在している点です。アメリカンミステリにはちょっと珍しい設定ですが、これも19世紀を舞台にしてこそ成立可能な訳です。あと8年くらいしたら、ホームズが登場するかもしれませんね。
あと、公爵のワトスンを見る目が面白すぎる(笑)

書 名:荒野のホームズ
著 者:スティーヴ・ホッケンスミス
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1814
出版年:2008.7.15 初版

評価★★★☆☆