『闇夜にさまよう女』セルジュ・ブリュソロ - 2017.11.19 Sun

『闇夜にさまよう女』セルジュ・ブリュソロ(国書刊行会)
頭に銃弾を受けた若い女は、脳の一部とともに失った記憶を取り戻そうとする。「正常な」世界に戻ったとき、自分が普通の女ではなかったのではと疑う。追跡されている連続殺人犯なのか? それとも被害者なのか? フランスSF大賞等受賞の人気作家ブリュソロの最高傑作ミステリー 、遂に邦訳!(本書あらすじより)
セルジュ・ブリュソロといえば、角川文庫から出ている『真夜中の犬』でフランス犯罪小説大賞(フランス冒険小説大賞)を受賞した作家……ということしか知らないのですが、この度国書刊行会から単行本が出ましたので、いざ読んでみたわけです。
最初50ページくらいまで読んだ時は、ずっとこの感じだとしたら傑作じゃないか?と思っていたのですが、うーん400ページやってこういうオチなのかぁ。300ページだったら、もうちょっと評価したかな、という感じ。
何者かに狙撃され、記憶をなくした女。記憶はないながらも、重大な秘密を知ってしまったため命を狙われているのだ、と語る彼女と共に、ボディーガードの女性は逃避行を始める。はたして彼女は正気なのか狂人なのか、その人物だけが目撃しているという敵は現実なのか妄想なのか……?
というミステリなのですが、フランスにはフランシス・リック『危険な道づれ』という先例があることだけは言っておきたいのです。似てるってレベルじゃねーぞ。
ただし、『危険な道づれ』と『闇夜にさまよう女』は、あらすじこそ似てはいますが、やろうとしていることや結末は大きく異なります。『闇夜にさまよう女』については、要するに彼女の夢、ことば、妄想は、全てそういう理由だったのか、と綺麗にまとまるところが頑張りどころでした。とはいえ、いかんせん長すぎだな……。
ラスト50ページは良く出来ていますが、そこに至るまでが何も起きない or 淡々としすぎ、でややつらいのです。地下の無菌室にいる男だとか、迫りくるインディアンの顔だとか、奇想っぽいところも楽しめますし、終盤の旦那登場からはかなりかっ飛ばしているのですが、おすすめするかっていうと……うーむ。
というわけで、フランス・ミステリの良いところとダメなところ(心理描写のくどさが悪い方に出たやつ)が合わさった、いかにもなフランス・ミステリですので、ボアナル好きなんかは読んでみるべきでしょう。あとは、あらすじに興味を持ったら、で十分かなぁ。
原 題:La Fille de la nuit(1996)
書 名:闇夜にさまよう女
著 者:セルジュ・ブリュソロ Serge Brussolo
訳 者:辻谷泰志
出版社:国書刊行会
出版年:2017.08.25 初版
評価★★★☆☆
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