『悔恨の日』発売

2018-02

『刑事くずれ』タッカー・コウ - 2017.12.10 Sun

ウェストレイク,ドナルド・E(コウ,タッカー、スターク,リチャード)
刑事くずれ
『刑事くずれ』タッカー・コウ(ハヤカワ・ミステリ)

ミッチェル・トビンがニューヨーク市警から追われることになったきっかけは、ディンクという窃盗常習犯を逮捕したときだった。逮捕は何事もなく済んだが、そのときトビンはディンクの細君、リンダ・キャンベルに出会ったのだ。リンダは小柄で愛嬌があり明るい女だった。彼らは関係を持つようになり、それはトビンの相棒、ジョックが射殺された日まで続いた。
ジョックが射殺されることになった犯人逮捕は、ディンクの逮捕と同じほどに簡単に済むはずだった。だが、それが上手くいかなかった。相手の賭博犯が、知らぬ間に麻薬患者になっていたのだ。ジョックはトビンをリンダの所でおろして、ひとり死神に会いに行った。そして、彼のポケットには、緊急の際相棒に連絡すべくリンダの電話番号が入っていた……。
警察当局は彼を許さず、彼自身も自分を許すことはできなかった。この裏切りは彼を徹底的に打ちのめした。シンジケートのニューヨーク支部長ケンベクが、組織内の殺人事件――多額の金を持ち逃げし、何者かに殺された彼の情婦リタ――の犯人を捜すよう依頼してきたのはトビンがようやく過去から立ち上ろうとした矢先だった!
落伍した刑事の汚名を負いながら、組織内の殺人という困難な事件を追う元刑事ミッチ・トビン。ハードボイルドと本格推理の魅力をもつ鬼才コウのシリーズ第1弾!(本書あらすじより)

ウェストレイクの別名義、タッカー・コウによる刑事くずれシリーズ第1作。ハードボイルドと、本格ミステリとしての両要素で有名なシリーズで、以前第3作『刑事くずれ/蝋のりんご』を読んだことはあるのですが(なぜか感想記事がないやつ)、あちらはホワイダニットの名作でした。
で、今度は1作目を読んでみたのですが……あんまりにも面白いもんで、一日で読み切ってしまいました。やっぱりすごいわ、ウェストレイクさんは。ぐうの音も出ない完成度の高さではないでしょうか。

諸事情あって(あらすじに書いてあります)刑事をやめることになったミッチ・トビン。そんな彼の元に、犯罪シンジケートのボスから、組織内部での殺人を調べてほしい、という連絡があった。ボスの愛人が、お金を持ち逃げし、死体となって見つかったのである。組織の内部の人間の仕業であることは明らかなようだ。あまり乗り気ではないものの、金のためから、トビンは久々に捜査を行うのだが……。

あとがきにあるバウチャーによるウェストレイク評「プロッティング、会話、性格づくりにおける完全無欠なプロ作家の職人芸」が完璧に発揮されていて、実に素晴らしいです。事件の全貌が一気に解きほぐされていく終盤の謎解きは圧巻でしょう。
特に、ここまで容疑者を明確に限定してガチフーダニットやろうという根性が良いのです。組織内の殺人犯を探すというフーダニットに持ち込む流れがまず完璧で、殺人犯以外の様々な人物による行動で複雑化していた事件が順番に謎解きされるのはクリスティーのごとし。基本的に後半は容疑者巡礼ミステリではありますが、その中でもテンポ良く何かが起きるため、200ページ飽きさせることがありません。

それに加えてミッチ・トビンの過去とハードボイルドな語り、容疑者それぞれの明確に描き分けられたキャラクター、小気味よい会話と、とにかく隙がありません。元刑事トビンの、根本的に熱意があるわけではないけど、刑事としての習性に従って真相を追い求める様が名探偵でなくてなんだというのでしょうか。シリーズ1冊目なのに、元刑事という肩書きから想定されるようなめんどくさい展開(警察との確執だとか昔逮捕した犯罪者からの恨みだとか)に全く流されないのもポイント高いです。

というわけで、案の定めちゃくちゃ面白かったです。もしかして『蝋のりんご』より楽しめたかも(主としてホワイダニットへの興味のなさのせい)。残り3作、大事に読み進めていくことにします。

原 題:Kinds of Love, Kinds of Death(1966)
書 名:刑事くずれ
著 者:タッカー・コウ Tucker Coe
訳 者:村上博基
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1181
出版年:1972.08.15 1刷

評価★★★★★
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『悪党パーカー/逃亡の顔』リチャード・スターク - 2016.12.24 Sat

ウェストレイク,ドナルド・E(コウ,タッカー、スターク,リチャード)
逃亡の顔
『悪党パーカー/逃亡の顔』リチャード・スターク(ハヤカワ・ミステリ)

包帯がとれたとき、パーカーは鏡に写っている見知らぬ男の顔をのぞきこんだ。それから、その顔に向かってうなずき、鏡の奥に写っている整形外科医の顔を見た。
パーカーがサナトリウムに来てから、すでに4週間といくばくかになっていた。来た当初は、パーカーの顔は鉛の弾を射ちこまれたがっている顔をしていたが、今では誰もわからない、まったく新しい顔になっていた。長くて細長い鼻、平べったい頬、唇の薄い大きな口、そして突き出た顎。ひびのはいった縞めのうに似た、冷たくて厳しい眼――その眼だけは見慣れたいつものやつだったが、それ以外はまったく別の顔になっていた。『人狩り』で悪の限りをつくしたパーカーは、整形して逃亡の顔をつくりあげたのである。
上出来だった。1万8千ドル近くかけただけあった。……パーカーはもう一度新しい顔に向かってうなずくと鏡から向き直り、包帯などを屑かごに捨てた。洋服もすっかり新しく着替えて、サナトリウムを出た。 それは逃亡の顔であるばかりでなく、悪の世界に生きる一匹オオカミ、パーカーの新しい冒険のための顔でもあったのだ……! 悪を悪で制する男、パーカー。ハードボイルド小説に新機軸をひらいた悪党パーカー・シリーズ第2弾!(本書あらすじより)


マケプレオーバー2000月間、4冊目は泣く子も黙る悪党パーカーシリーズ2冊目、『逃亡の顔』です。初期悪党パーカー6作品は基本的にポケミスから出ていたものも含めてハヤカワ・ミステリ文庫入りしているのですが(『死者の遺産』なんて文庫オリジナル)、なぜかこの『逃亡の顔』だけ文庫落ちしていないのです。角川文庫パーカーに並ぶレアですね、はい。

読んでみてまず思うのが、とりあえずなぜこの作品だけ文庫化しなかったのかが分かりません。特に差別的な表現があるとか内容が劣るとかいうことはないと思うんだけど……。
第1作『人狩り』で組織に歯向かい組織から追われることになったパーカーですが、今回は逃走用の顔を手に入れたところから始まります。現金輸送車強盗を仲間と共に企むも、仲間の一人の様子がおかしく……という話。

相変わらず淡々とした文体・描写や全然淡々としていないその内容がキレッキレです(話のクライマックスのひとつである現金輸送車強盗のシーンが、わずか4ページで片付くんだぞ)。ただ、『人狩り』ほどの熱がなくて、シリーズの繋ぎっぽさが感じられたのが残念。続編としての話(パーカーが顔を作る話)と、今回の強盗の話の嚙み合い方が、もうちょっと上手くいっていればよかったのに、という。
とはいえ、ウェストレイク先生ですからつまらないなんてことはもちろんないのですよ。タフさとか非情さとかはやっぱり『人狩り』には劣るかな……と思って読んでいたら、最後にぐわしっとなりましたしね、さすがだと。当時は「ハードボイルド小説の新機軸」と捉えられたようですが、今ならばノワールだよなぁ。

4部構成であり、部が変わるごとに時には大胆に話をがらっと変えてしまうのも『人狩り』と同じですが、今回は特に第3部が(ある意味)浮きまくっていて面白いですね。いわゆる「悪」側の人間なんだけど、プロというほどでもない、ぶっちゃけダメな男の追跡劇です。
なお、小鷹信光さんによる解説「人騒がせなスターク=パーカー・シリーズ」が、ポケミスの解説としては破格の12ページなのですが、これはおすすめ。1968年当時の悪党パーカーシリーズの受け取られ方がよく分かり大変興味深いです。

というわけで安定のパーカーという感じでしたが(そんなこと言っていてまだこのシリーズ2作しか読んでいないけど)、ううとりあえず3作目以降を読みたいぜ。このシリーズ、犯罪小説の中ではかなり面白いんだよな……。読んでいない人はとりあえず傑作『人狩り』を読むのです。

原 題:The Man With the Getaway Face(1963)
書 名:悪党パーカー/逃亡の顔
著 者:リチャード・スターク Richard Stark
訳 者:青木秀夫
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1021
出版年:1968.01.31 1刷

評価★★★★☆

『ホット・ロック』ドナルド・E・ウェストレイク - 2016.04.23 Sat

ウェストレイク,ドナルド・E(コウ,タッカー、スターク,リチャード)
ホット・ロック
『ホット・ロック』ドナルド・E・ウェストレイク(角川文庫)

長い刑期を終えて出所したばかりの盗みの天才ドートマンダーに、とてつもない仕事が舞い込んだ。それはアフリカの某国の国連大使の依頼で、コロシアムに展示されている大エメラルドを盗み出すというもの。報酬は15万ドル。彼は4人の仲間を使って、意表をつく数々の犯罪アイディアを練るが……。不運な泥棒ドートマンダーの奇怪で珍妙なスラプスティック・ミステリー。(本書あらすじより)

ウェストレイクの代表作、ドートマンダー物の1作目です。ウェスレイクは実はぽつぽつとしか読めていない作家で、これまでノンシリーズのウェストレイク名義が2冊、リチャード・スターク名義1冊、タッカー・コウ名義1冊(『刑事くずれ/蝋のりんご』をちゃんと読んだんですけど、なぜかブログに感想をかきもらしています。今から感想はもう書けないな……めちゃくちゃ面白いハードボイルド本格ミステリであるとだけ言っておきます)といった感じ。つまりドートマンダー物を読むのは初めてなのです。
いやーこれ、すっごい面白かったです。面白すぎて珍しく一日で読み切ってしまいました。ユーモア寄り、スラップスティック寄り、とは知っていましたが、ここまで笑えるタイプの話だとは思っていませんでした。最後までしっかりと笑える、めちゃめちゃ良質なクライム・コメディです。

物語は、主人公である天才犯罪プランナー、ドートマンダーが刑務所を出るところから始まります。出所後最初に彼が手掛けることになったのは、アフリカの某国の国連大使の依頼で国宝を盗み出す、というものでした。優秀なメンバーを集めていざとりかかったドートマンダーですが、予想外のハプニングから事件は思わぬ方向に動き出し……。

この手の「計画犯罪が上手くいかないミステリ」の王道転がしパターンとしては、
①ドジな仲間がドジを踏んでしまう
②依頼人など関係者の裏切りにより罠にはめられ、警察、あるいは敵対者に追われることになる
といったものがほとんどだと思います。楽だし、長編をもたせる手段としては無難ですしね。
で、自分が嫌いなのがまさにこの2パターンなのです。①はプロフェッショナルの仕事にそういうハプニング自体がもうプロフェッショナルさを感じないので嫌いですし、②はそもそも無実の容疑で追われる話が苦手なのでやはり好きではありません。

で、この『ホット・ロック』がすごいのは、上記の2パターンに陥ることなく話をスラップスティックな方向に転がし、笑いを取りながらきちんと長編に仕立てている、ということなんです。これだけ「運のない」話であるのに、誰一人としてミスをしない、という点がとても好き。足引っ張る系の仲間付きコメディ駆逐委員会としてはこの作品を高く評価せざるを得ません。

途中からドートマンダー一味は堂々巡りというか負のスパイラルに陥ってしまうのですが、まさかこれ延々と繰り返されるのでは(しかもスケールアップしながら)と思ったらまさかのその通りで。こんなコメディの定石を丁寧にやられたら笑うしかないじゃないですか。しかもマンネリにならないところで話をきれいにまとめて決着をつけさせて。死体をひとつも出さずにこれだけ話を盛れるんだもんなぁ、すげぇ。

というわけで、ウェストレイクの代表作として名高いのも納得の一冊。以前のようにこの手の作品がもっと翻訳されてほしいのですが。
なお、これで東西ミステリー・ベスト100を67冊読み終わったらしいので、ようやく3分の2制覇。先は長い……。

原 題:The Hot Rock(1970)
書 名:ホット・ロック
著 者:ドナルド・E・ウェストレイク Donald E. Westlake
訳 者:平井イサク
出版社:角川書店
     角川文庫 ウ-11-1
出版年:1972.06.20 初版
     1998.09.25 改版初版
     2010.02.15 改版3版

評価★★★★★

『悪党パーカー/人狩り』リチャード・スターク - 2015.09.15 Tue

ウェストレイク,ドナルド・E(コウ,タッカー、スターク,リチャード)
悪党パーカー/人狩り
『悪党パーカー/人狩り』リチャード・スターク(ハヤカワ・ミステリ文庫)

パーカーは復讐に燃えて帰ってきた。十ヵ月前、”仕事”を終えた直後に妻と仲間に裏切られ、命さえも失いかけた男が舞い戻ってきたのだ。だが怯える妻は自殺し、裏切り者の男は巨大な犯罪組織のなかに身を潜めていた。パーカーはひるむことなく悪の組織に挑戦状を叩きつけた! 冷徹なプロの犯罪者を主人公に、血と暴力の世界を描くアメリカン・ノワールの傑作。巨匠ウェストレイクがスターク名義で放つシリーズ第一作。(本書あらすじより)

仙台から帰ってきました。また全然ブログを更新できてない……。
というわけで出ました、ド傑作です。完全に悪党パーカーをなめてました、反省します。
いやー、いまのいままで悪党パーカーシリーズを読むのを後回しにしてきたんですが、んもう震えるほど面白いじゃないですか。っていうかウェストレイクってどれ読んでも面白いですよね、いまさらですけど。
悪党パーカーは、巨匠ドナルド・E・ウェストレイクがリチャード・スターク名義で生涯にわたって発表し続けたノワールシリーズです。悪党パーカーはプロの犯罪者で、彼の犯罪計画が毎回描かれるわけです。この一作目はパーカーがいきなり復讐をするところから始まるので、まだ犯罪計画を扱う、というよりは一匹狼としてのパーカーの活躍がメインとなっています。ちなみに画像の表紙はメル・ギブソン主演の映画カバー版。

そしてまぁこれがべらぼうに面白いんですよ。裏切った仲間に復讐するためテンポよく人狩りを進める冷徹っぷりがすさまじいノワール、というだけじゃなくて、最後に巨大犯罪組織と戦うことで一匹狼としてのかっこよさを見せつけるヒーロー小説として超楽しいのです。
まずパーカー視点から彼が裏切られた過去、現在を無駄なく語り、ぜってえ裏切り者のマルをぶっ殺すというゆるぎない気持ちが描かれます(これで1/3)。続いて狩られる側である裏切り者マルの現在の犯罪組織に戻った地位が語られ、組織の様子と共に、パーカーに追われ始めビビるマルの様子が描かれます。
そして最後、マルと共に(特に恨みはないけど)組織もぶっとばそうとするパーカーの無双っぷりがひたすら綴られるのです。なにこのミッションインポッシブル。なにこの少年ジャンプ。一匹狼の犯罪者、というパーカーの姿をここまでかっこよく見せられるシチュエーションがあろでしょうか。なにしろ敵組織の幹部のもとを次々と訪れ、片っ端からぶっ殺していくんですよ。激アツ。

要するに、犯罪小説としてとか、ノワールとしてとか、そういう面白さをまずどっかりと支えるエンタメ性が素晴らしいのです。文章もキレキレで、あますところなくイライラするパーカーを伝えていていいんですよねぇ。いまさですが、今後ちゃんとシリーズ追っていきます。さいわい第二作の『逃亡の顔』を持ってるんですよね、自分。ふっふっふ。ブックオフで100円で買えちゃったのでした。

書 名:悪党パーカー/人狩り(1962)
著 者:リチャード・スターク
訳 者:小鷹信光
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 23-1
出版年:1976.04.30 1刷
     1999.04.30 4刷

評価★★★★★

『忙しい死体』ドナルド・E・ウェストレイク - 2009.12.20 Sun

ウェストレイク,ドナルド・E(コウ,タッカー、スターク,リチャード)
忙しい死体
『忙しい死体』ドナルド・E・ウェストレイク(論創海外ミステリ)

ギャングのエンジェルはボスに命令されて、墓に埋葬された仲間の死体を掘り返しに行った。どうやら25万ドル相当のヘロインを身につけたまま埋められたらしいのだ。だが、死体は墓から忽然と消えていた!死体を追って奔走するエンジェルの行く手に、謎の女や警官が立ちはだかる。それぞれの思惑が入り乱れて……。ウェストレイク初訳長編のユーモアミステリ。(本書あらすじより)

うーん、普通に面白いじゃないですか。何だって今まで未訳だったのか。ウェストレイク一流のドタバタ劇が楽しめるオススメの一冊です。

まず、何と言ってもこのストーリー展開がいい。「雪だるま式ゴタゴタくっつき」型の話なんですが、非常に計算されてくっつけていっているというか。といっても、『我輩はカモである』よりは落ち着いた印象ですね。時々家に帰ってるし。毎回のドリーからの手紙もコント並にお決まりになるのもいいですね。というか、ユーモアは全体的にかなり楽しいです。シリアスになりかける場面でも上手くやっちゃうんですよね(最後の方の××さんがスコップ持って追い回しているのは想像して吹いた)。

ミステリ部分がまたよく出来ているというか。結局犯人が誰かということに関しては、きちんとミステリであるんですね。確かに一番怪しいのはこの人でした。「消えた死体」というのが一番混乱させているわけですね。

えぇもぉ面白かったです。今年度ベストテンに何とか入れます。

書 名:忙しい死体
著 者:ドナルド・E・ウェストレイク
出版社:論創社
    論創海外ミステリ 87
出版年:2009.8.25 初版

評価★★★★☆

『我輩はカモである』ドナルド・E・ウェストレイク - 2009.09.06 Sun

ウェストレイク,ドナルド・E(コウ,タッカー、スターク,リチャード)
我輩はカモである
『我輩はカモである』ドナルド・E・ウェストレイク(ハヤカワ・ミステリ文庫)

フレッド・フィッチは詐欺にあっていつも騙されてばかり。うだつもあがらず、女性にももてない。そんな彼のもとに叔父の遺産が転がりこんできた。そのとたん、見も知らぬ親戚に金をせびられ、小悪魔的な女や荒くれ女にいいよられる。さらには遺産を狙う暗殺者に命まで狙われるはめに!歩けば不幸にぶちあたる、カモられ男フレッドの運命は?アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞したお墨付きのお笑いミステリ。(本書あらすじより)

うーーん……なんか悔しいんだけど、面白いんだよなぁ。

ウェストレイクは初読です。彼はハードボイルド作家としてデビューしたものの、しだいにユーモア・ミステリを意識した作品を作った方です。この話は、いわゆる「コン・ゲーム(confidence game)」小説の一種ですね。

さて、内容はあらすじまんまなんですが、まずはこの面白さがいいですよね。面白いってのは笑っちゃうってことですが、毎ページ一回は最低笑えます。フレッドが名前で呼ばせまいとするネタを後半にいきなり持ってくるとか、最後のオチとか、小ネタにも余念がありません。最初はただのカモられ男なフレッドが、だんだん人間不信に陥るさまが、一人称で自虐的に語られていく面白さ。惜しみなく笑いのネタを投入しています。もう最高です。これは訳者の池央耿(イケヒロアキ)さんによるところ大でしょう。

そしてやっぱりMWA賞を取っているわけですから、ミステリでもあるわけです。殺された叔父の周りをコソコソ嗅ぎ回りながら、フレッドが謎を解くわけです。そりゃ、一流のミステリではありませんが、作品全体に仕掛けられたトリックは、素直に「楽しい」と言えるんじゃないでしょうか。

まあ表紙から見くびっていたんですが、見事に裏切られました。オススメです。

ところで、学校の人がこの表紙を見て、「珍しく日本の話読んでるんだ」と言います。……外国の本はみんな真面目な表紙だと思われてるんだろーか。それともタイトルが夏目漱石っぽいからかな。原題は『God Save Thd Mark』(神はカモを救う)……なるほど。

書 名:我輩はカモである
著 者:ドナルド・E・ウェストレイク
出版社:早川書房
   ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ-12-9
出版日:2005.2.15 初版

評価★★★★★

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Author:ヨッシー
クリスティ、デクスター、グライムズ、ディヴァインが好きな、ヨッシーことTYこと吉井富房を名乗る遅読の新社会人が、日々読み散らかした海外ミステリ(古典と現代が半々くらい)を紹介する趣味のブログです。ブログ開始から7年になりました。ちなみにブログ名は、某テンドーのカラフル怪獣とは全く関係ありません。
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