棺のない死体
『棺のない死体』クレイトン・ロースン(創元推理文庫)

強大な権力を有する実業家ウルフには、死を異常に恐れる一面があった。怪しい男の来訪をきっかけに彼の周囲では怪異現象が続発し、ついにはウルフ自身が不可能状況下で殺害される! 何度死んでも生き返る“死なない男”の存在が不気味な影を投げかける、奇術師探偵マーリニが手がけた最大の難事件。カーと並ぶ密室本格派の名手が、二重三重の仕掛けを駆使した謎解き推理長編!(本書あらすじより)

積みっぱなしにしていたら復刊してしまい、何とかようやく読めました。初長編ロースンです。短編は『37の短篇』で読みましたね。
ぶっちゃけロースンは微妙だぞと、あまり期待するなと聞いていたので、覚悟して読み始めましたが……なんだろう、この……劣化版カーっていうか……密室とラブコメと怪奇(笑)みたいな……。

実業家ウルフの屋敷を舞台に、不可能殺人事件が起こります。ただこれは中盤以降で、それまでに死体を隠したり、その死体が消えたり、はたまた生きているのが目撃されたりと、死体もののコメディっぽい不可能状況も生じています。

基本的に物理(迫真)トリックの極致みたいな密室トリックが連発されます。ひとつだけ悪くないトリックもあるのですが、全体的に謎解きを最後に持ってこないというか、ちょこちょこネタをバラしながら話が進行するので、何の意外性も驚きもないまま終盤がもったりと進んでいきます。
マーリニのキャラクターも「奇術師」であること以外何にもないし(うんちくがつらい)、読みにくいわけではないですが、不可能興味だけで読み進めるのも(そのシチュエーションがそれほど魅力的でもないせいで)しんどいのです。何度も死ぬ男、というメインアイデア自体は悪くないんですが、いちいち後出しかつ驚かせ方が不十分で、提示の仕方がなぁ、微妙なんだよなぁ。

ふと思ったのですが、カーって不可能状況からトリックを考えていたのでしょうか。ロースンはマジックのネタからミステリを書いてるような気がするのです(だからシチュエーション自体はいまいち盛り上がらないのかなと)。事件自体は『三つの棺』レベルでめちゃくちゃ複雑なんですが、ワチャワチャしている印象しかないんですよね。鮮やかさには大いに欠けます。

というわけで、まだまだロースンの長編は未読があるのですが、確かにこの作家はトリックをバーンと示せば終われる短編型かなと思います。そう考えるとカーってすげぇな……。

原 題:No Coffin for the Corpse(1942)
書 名:棺のない死体
著 者:クレイトン・ロースン Clayton Rawson
訳 者:田中西二郎
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mロ-2-1
出版年:1961.05.19 初版
     1994.10.21 2版

評価★★★☆☆
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