8017列車
『8017列車』アレッサンドロ・ペリッシノット(イタリア捜査シリーズ)

1944年3月、連合軍占領下の南イタリアで起きた列車事故は大惨事となった。3年後に発生した連続殺人事件の現場には、「イタリア、1944年3月3日、わが復讐は汝がため」のメッセージが残され――トリノの居酒屋にはじまり、ナポリの裏町、南イタリアの山村へと、イタリア半島を縦断して20日間の捜査が展開される。(本書あらすじより)

いただきものです。柏艪舎のイタリア捜査シリーズといえばカルロ・ルカレッリのデルーカ事件簿シリーズ3冊の方が(比較的?)有名かなという気がしますが、本書はこのシリーズからもう1冊だけ出ているイタリア・ミステリ。1946年が舞台の社会派ハードボイルドなのですが、いやー予想以上に面白かったですね。

1944年に南イタリアで列車事故が発生し、多数の死者が出た。それから2年後、終戦後のイタリアで、鉄道員の連続殺人事件が発生した。終戦処理の中で不当にも鉄道公安官をクビになっていた主人公アデルモは、手柄を立て復職を図るために捜査に乗り出す。

1946年のイタリアを舞台に、1944年の事故を出発点とした連続殺人を描いているのですが、複雑な社会情勢や当時の人のリアルな感情を織り交ぜかつ整理して提示するのがめちゃくちゃ上手いのです。トリノ出身の男がナポリを訪れ、初めてピッツァと呼ばれる食べ物を目にするなんていう日常的な描写から、第二次世界大戦における南イタリアのバドリオ政権が与えた影響までが、イタリアに詳しくない人でも分かるよう、実に自然に物語の主筋に織り込まれ、語られていきます。
途中から、利己的な目的ではなく、真相を知りたいという欲求から捜査にのめりこむ主人公アデルモも良いのですが、何と言っても彼の捜査の行きつく先がお見事。陰謀論的な方に話が動くのかと思いきや、この時代設定でしか書けないところに着地したのが大変好み。あとミステリ的には、ある点での誤読を狙うミスリードもなかなか悪くありません。

総じて地味中の地味な作品ですが、社会派ハードボイルドっぽい話の進め方が思いのほかしっかりしており読みやすいので、興味を持った方はぜひ。イタリア・ミステリ、今年も少しだけ翻訳が出ていますが、派手なサスペンスばかりじゃなくてこういうのもあるならもっと読んでみたいなぁ……売れなそうだけど……。

原 題:Treno 8017(2003)
書 名:8017列車
著 者:アレッサンドロ・ペリッシノット Alessandoro Perissinotto
訳 者:菅谷誠
出版社:柏艪舎
     イタリア捜査シリーズ
出版年:2005.09.25 初版

評価★★★★☆
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