プラド美術館の師
『プラド美術館の師』ハビエル・シエラ(ナチュラルスピリット)

絵を通して霊的世界へ誘う。見事な手法と解釈で名画に隠されているメッセージを読み解く。そして、驚くべき結末が待っていた……。2013年スペイン国内フィクション部門年間ベストセラー1位!(本書あらすじより)

主人公である学生ハビエルが、ある日プラド美術館で謎の人物と出会う。彼は会うたびに絵画から読み解ける驚異のメッセージを教えてくれるのだが、しだいにハビエルは不可思議な出来事に巻き込まれ……。
というあらすじからして、なるほど『ダ・ヴィンチ・コード』+『風の影』だな、という感じです。実際その通りなのですが、小説としては落第点かなぁ。カラー図版で豊富に絵画が付いており、プラド美術館にある様々な絵画の解釈・解説を楽しめるのですが、小説としての何がしかを期待すると肩透かしだと思います。何がしかを期待感たっぷりに描くだけによけいにがっかりするのですが。

「プラド美術館の師」による絵画解説、およびハビエルによる調査&師の正体に迫るパート、が交互に描かれます。
基本的に師の教える解釈は、客観的というよりかなり強引なのですが、絵画には神秘主義的な思想が隠されていた、というものです(西洋人はやたらと神秘主義的思想を警戒するけれど、こっちからすると「楽しそう」みたいな感覚しかない……)。中世史〜ルネサンスあたりが好きな人は非常に楽しめると思います。っていうか楽しめました。どれだけ正しいかはともかく、あらゆる知識が縦横無尽に飛び交い絵画の物語が綴られる様はやっぱり面白いです。

問題は師の正体なんですよ。『風の影』に始まるサフォンのシリーズや西洋のホラー作品なんかも該当しますが、こっちのパターン多くないですか? 師は明らかに普通の人間ではなく、美術館の他の客から存在を認識されていないようであることからもそれは確かです。で、別に正体がこれなのは全然構わないのですが、その設定だけ作ってあとはぶん投げた、みたいな終わらせ方が、結局作者がそれほど真摯に物語を作らなかったんだなぁという感じがして残念。メインはそっちじゃないんだろうね、やっぱり。

というわけで、『ダ・ヴィンチ・コード』ほどのトンデモっぷりとストーリーテリングはなく、『風の影』『天使のゲーム』ほどの空想の楽しさもなく、という具合に実に中途半端な出来。最初から期待しないで絵画の解釈を楽しもうと読むのが一番だと思います。装丁と図版自体はめちゃくちゃ豪華で、見開きもばんばん入れており、美術本としての本の造りはナイスなので。

原 題:El maestro del Prado(2013)
書 名:プラド美術館の師
著 者:ハビエル・シエラ Javier Sierra
訳 者:八重樫克彦、八重樫由貴子
出版社:ナチュラルスピリット
出版年:2015.11.11 初版

評価★★★☆☆
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