盗みは人のためならず
『盗みは人のためならず』劉震雲(彩流社)

開発ラッシュの北京を舞台に、社会のあらゆる階層の人間たちが犯罪を犯して、二重三重に絡み合う意外な展開を、下世話でユーモアある語り口で描いた弱肉強食の中国社会!(本書あらすじより)

今年出た中国ミステリです。劉震雲は中国でかなり活躍されている作家だそうで、邦訳も何冊か出ています。どたばたミステリだそうで期待していたのですが……う、うーん、最後まで乗れないとかじゃなく、単純に面白くなかった……。
基本的には群像劇。盗んだり盗まれたりという関係の中で、様々な階層(社長クラスから窃盗団、果てはど底辺の人たちまで)の無関係の登場人物が交互に視点人物となります。彼らがだんだんとつながりを持ってくるところが群像劇らしく見どころのはずなのですが、そういう面白さがあまり感じられなかったのです。結構長めということもあり、読み切るのに苦労しました。

群像劇であることを強く意識した構成で、例えば各章のタイトルがその章の視点人物の名前であることからもこれは明らかでしょう。一応主人公である劉躍進というケチな人物が、踏んだり蹴ったりな目にあいながら色々なもめ事に巻き込まれていきます。そのつながりで、たくさんの人間がまるで舞台劇のように出たり入ったりするわけですね。
この登場人物たちが、案外つながるようでいてつながらないからなのが不満なのかもしれません。個々人のつながりが生まれても、大団円に突入するような感じではないというか(なくはないけど)。少なくともこれだけの長さの作品にするのであれば、もう少し構成を練ってほしいなと思わなくもありません。

また人間の悲喜劇というかユーモアの要素も、これはこれで好きな人は好きだと思うんですが、基本的にアメリカのコメディ的な悲惨になっていくところを楽しむタイプのユーモアなんですよ。ちょっと苦手です。少なくとも、どたばた、ってのとは違う……わけでもないのか。うーん、なんかもっと底抜けに明るいか、でなきゃブラックならいいのに(完全に好みの問題)。

というわけで、まぁこういう現代中国ミステリが翻訳されたこと自体はひっじょーに評価したいところですが、残念ながら内容はあまり楽しめなかった、というのが正直なところです。

原 題:我叫刘跃进(2007)
書 名:盗みは人のためならず
著 者:劉震雲 刘震云
訳 者:水野衛子
出版社:彩流社
出版年:2015.11.20 初版

評価★★☆☆☆
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