緯度殺人事件
『緯度殺人事件』ルーファス・キング(論創海外ミステリ)

十一人の船客を乗せて出航した貨客船。陸上との連絡手段を絶たれた海上の密室で連続殺人事件の幕が開く……。ルーファス・キングが描くサスペンシブルな船上ミステリ。〈ヴァルクール警部補〉シリーズ第三作、満を持しての完訳刊行!(本書あらすじより)

初ルーファス・キング。戦前に抄訳が出ていた作品の完訳版です。
本格ミステリとしてはやや厳しい出来たったのですが、ラスト付近で明かされるある趣向のみ、非常に高く評価したい作品です。いやね、これだけはすごいんだけど、これが明かされた後が停滞する一方だったのがちょっと……。


基本的には堅実でシンプルな本格。殺人犯が船に乗り込んだとの情報を得たヴァルクール警部補が同じく船に乗るのですが、殺人犯の特徴が書かれた電報を受け取った無線通信士の船員が殺されてしまいます。数少ない客たちの中から犯人を見つけ出そうと、ヴァルクール警部補が捜査に乗り出します。

ベーシック中のベーシックなシチュエーション本格なのですが、ラスト付近のある趣向でめっちゃニヤリとしてしまいました。これは上手いなぁ。本のページをパラパラ適当にめくっているだけで分かってしまう可能性があるので要注意。翻訳版での工夫も素晴らしいのですが、原書でどうしているかも気になります。

ただ……その後は全体的に低調。最後のどんでん返しは大いに評価したいのですが、犯人特定の伏線が一切ないのが厳しいです。犯人の行動やその目的も若干適当。犯人が男性だと序盤からはっきり確定させているわりに、男性の容疑者メンバーの書き分けが不十分なのも気になります。主要キャラや女性メンバーは全員個性強めなだけに、そのへんちゃんと書ける作者だと思うのですが、もったいないなぁ。

というわけで最後が惜しいのですが、とはいえクリスティーの大傑作『ナイルに死す』ほどではないにせよ、船上というアイデンティティーが隠された場所での様々な事件を綺麗にまとめあげるラストなんかは上手いわけですし、やっぱりルーファス・キングは名前が残っているだけはあるんだなと。めちゃくちゃ評判の良い『不変の神の事件』を今度は読んでみようかなと思います。

原 題:Murder by Latitude(1930)
書 名:緯度殺人事件
著 者:ルーファス・キング Rufus King
訳 者:熊井ひろ美
出版社:論創社
     論創海外ミステリ 168
出版年:2016.03.30 初版

評価★★★☆☆
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