ささやかな手記
『ささやかな手記』サンドリーヌ・コレット(ハヤカワ・ミステリ)

目覚めると、鎖をつけられ、地下室で監禁されていた――。ある事情から、人目を避けて南フランスの田舎の民宿に滞在していたテオは、周囲の山中を散策していたところ、廃屋めいた家に暮らす老兄弟によって囚われの身となってしまう。地下室の先住者リュックは、彼にこう告げる……「地獄にようこそ」。あらゆる農作業と重労働、家事に酷使され、食べ物もろくに与えられず、テオは心身ともに衰弱していく。ある日、老兄弟の隙をついて脱出を試みるが。フランス推理小説大賞、813賞の二冠に輝いた傑作サスペンス!(本書あらすじより)

さて皆さん、上記のあらすじを読んでみましょう。読みましたか。読みましたね。つらそうでしょう。つらかったです。最後までつらくてエグいままでした。以上です。

いやほんとね、主人公がね、なんやかんやあって、頭のおかしい2人の老人に捕まり、奴隷としての生活を送らされる、という、それだけの話なのです。200ページだから耐えられたと言っても過言ではありません。お、俺はこの作品を読み通すことで強くなれたぞ、間違いない。
実際のところ、『ささやかな手記』はどんでん返しもトリックもない(タイトルからして叙述っぽい、とか考えてはいけない)のです。ただし、紛れもなくフランス・ミステリのカテゴリで(も)語るべきどえらい作品です。アメリカのサスペンスと、フランスのサスペンスって、叙述の仕方とか雰囲気とか、明らかに違うんですよね。作者がどれだけミステリとして意識しているかは疑問ですが、『ささやかな手記』は、日本に翻訳されたポケミスのフランス・ミステリの諸作品の流れを継いだ作品、と捉えることが可能だと思います。
というのも、内容に目が行きがちですが(そして確かに内容が軸ではあるのですが)、この作品の9割は語り口にあるのかな、と思えるんです。21世紀のフランスで人知れず奴隷になってしまった男テオが、自分の人生を振り返り、共に奴隷となった人物と語り合い、自分を捕まえた老人たちを観察していきます。テオは自分を支配下に置き続けた兄を生ける屍になるほど痛めつけたことが原因で逮捕され、出所したばかりでした。テオは老人2人を見て、自分と兄の関係と重ね合わせて考えるようになり……そして、ラスト、どんでん返しでもなんでもないのですが、強烈な終わり方を迎えることになるのです。

というわけで、内容としては本当に好みではないのですが、なかなか一筋縄ではいかない作品なのかなと思わないでもない……。でもよく考えたら、拉致監禁小説としては凡庸だとも言えるのかなぁ。近年のポケミスの中では、相当変化球であることは間違いありません。

原 題:Des nœuds d'acier(2013)
書 名:ささやかな手記
著 者:サンドリーヌ・コレット Sandrine Collette
訳 者:加藤かおり
出版社:早川書房
     ハヤカッワ・ミステリ 1908
出版年:2016.06.15 1刷

評価★★★☆☆
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