サイモン・アークの事件簿Ⅲ
『サイモン・アークの事件簿Ⅲ』エドワード・D・ホック(創元推理文庫)

悪魔と超自然現象にまみえるため、世界を渡り歩く謎の男サイモン・アーク。狂信的な信仰行為で知られる痛悔修道会の儀式の最中、多数の同輩がいる中で一人の信者が刺殺された事件、呪いのナイフや女妖術師が引き起こしたとおぼしき殺人、警戒厳重な古城からのナチス戦犯の消失……いずれ劣らぬ怪奇な事件に、オカルト探偵が犀利な推理力で挑む8編を収録した、瞠目の第三短編集。(本書あらすじより)

サイモン・アーク物の第3短編集ですね。第2は未読です。第1短編集は、あれですよ、高校3年の時、うちの高校の野球部が結構勝ち進んで、水戸まで応援に行った帰りに古本屋さんで買ったんです。450円だから、安くはないですね……なんで買ったんだろう。一緒に『サム・ホーソーンの事件簿Ⅲ』も買ったんでした。いや、そんなことは置いといて。

第1短編集と比べて読みやすかった印象がありますが、これは自分が短編ミステリに慣れてきたせいかもしれません。不可能犯罪を扱っているものが大部分であり、いずれもそこそこの完成度で、そこそこの出来栄えです。「それでも、すごく突飛に思えるね」という「私」のセリフが作中にあり、ま、ホックのトリックは確かに突飛ですが、やはり一定の基準は上回った上で量産しているんですよね。すごいことです。
サム・ホーソーンは短編集を1つしか読んでいないんですが、オカルトというウンチクで武装し、舞台があちこちであるサイモン・アークの方が飽きにくいのではないかな、と思います。
あとは翻訳ですね……あまりに直訳調なのが毎回気になるんですよ。

以下、個別の感想です。ベストは「ツェルファル城から消えた囚人」「黄泉の国への早道」。サイモン・アークが悪魔を見つけられる日は来るのでしょうか……。

「焼け死んだ魔女」(1956)
女子大で謎の病気が流行った。何人かは意識不明の重体だと言う。どうやら自称「魔女」による呪いのようなのだが……。

うぅむ……初っ端のこれが、一番つまらなかったかもしれません。ちょっとね、トリックがいくらなんでも不可能としか思えません。犯人特定のロジックがいくらなんでもいい加減ですし。

「罪人に突き刺さった剣」(1959)
狂信的な信仰行為で知られる痛悔修道会の儀式の最中、多数の同輩がいる中で一人の信者が刺殺された。〈見えない〉犯人はどうやって入ってきたのだろうか。

サイモンの過去がちょこっと明かされます。トリックは別段優れてはおらず、ある人物が「犯人ではない」ことを示す理由もかなり微妙。ですが、犯人を特定するポイントはかなり上手いと思います。なるほどっ、と言う感じ。

「過去から飛んできたナイフ」(1980)
250年前、ある家の中で投げられたナイフが消失した。そして再び現れたナイフで刺されたとしか思えない状況で殺人事件が発生する。

この辺からようやく面白くなってきます。
ナイフ消失はまぁまぁ、しかしそこから導き出される犯人の意外性が、ホックによる展開の巧みさもあり、かなり上手いと思います。

「海の美人妖術師」(1980)
海上の船の上で、絞殺死体が見つかった。凶器は髪。残されたメモによると、彼は毎晩、女妖術師に会うためここまで来ていたというのだ……。

物語として面白いですね。これといったトリックが仕掛けられているわけではありませんが、読んでいて素直に楽しめます。

「ツェルファル城から消えた囚人」(1985)
四カ国が管理するドイツのツェルファル城は、あるナチス戦犯の刑務所だった。ところがどう考えても不可能な状況で、囚人が消失してしまう。

これは素晴らしいです。複数の思惑が複雑に絡まりあっている事件で、ホックにしては珍しく凝った真相です。消失トリックもかなり論理的に答えが導き出されており好印象。それにしても、だんだんオカルトがこじつけ気味て来たような(笑)

「黄泉の国への早道」(1988)
ロックスターが、皆が注目していた透明なエレベーターの中で消失し、その後別の場所から現れた。彼はいかなるトリックを用いたのだろうか。

これまた素晴らしいです。ロックスターとオカルト探偵の夢の共演……もはやオカルト何の関係もないですけど。提示される謎がとにかく魅力的。この短編集の中で、トリックの完成度が最も高いと思います。

「ヴァレンタインの娘たち」(1988)
サヴァレンタインという町では、ヴァレンタインに行う恒例のイベントがあった。その最中に起きた殺人事件。犯人は一体誰なのだろうか。

別段トリックや構成が優れているというわけではないですが、ホックのくせに雰囲気が何となく良いため、結構気に入っています。このイベント、ホックが考案したものなのでしょうか。現実にやっているならば、なかなか面白そうではあります。

「魂の取り立て人」(1989)
スウェーデンの友人が、「私」に助けを求めてきた。誰かに付けられているような気がするというのだ。しかしサイモンが助ける前に……。

ありきたりな題材ですが、異国の地での通り魔というのがなかなかインパクトがあります。それくらいしか言うことがないんですが(笑)

書 名:サイモン・アークの事件簿Ⅲ(1956~1989)
著 者:エドワード・D・ホック
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mホ-4-10
出版年:2011.12.22 初版

評価★★★☆☆
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サイモン・アークの事件簿Ⅰ
『サイモン・アークの事件簿Ⅰ』エドワード・D・ホック(創元推理文庫)

73人もの人間が崖から飛びおりた、謎の大量自殺事件を取材に出かけたわたしは、現場の村で不思議な男性と知り合う。悪魔や超常現象を追い求めつづけ、その年齢は二千歳とも噂される彼の名は、サイモン・アーク─。ホックのデビュー短編「死者の村」を巻頭に、世界じゅうで起こる怪奇な事件の数々に、オカルト探偵が快刀乱麻の推理力で挑む10編を収録した、待望の第一短編集。(本書あらすじより)

なかなか面白い短編集だと思います。全話とも、オカルト・魔術などなどを題材とした作品となっています。解説によりますと、1950年代から2000年代までをバランスよく取りそろえたようですね。登場作で「わたし」(本名不明)はサイモン・アークと知り合い、その後は普通に友人関係を刻んでいくので(だって連絡先とか知ってるし)、フラリとあらわれてはいなくなる、という探偵ではありません(アガサ・クリスティの「クィン氏」を想像していたけど、だいぶ違う)。っというか、大学で講座とかもやっている始末。

前期の作品と比べると、後期の作品はだいぶオカルト色やサイモン・アークの不思議さが減り、アークはただのオカルト関係に強い探偵になってしまっているのが、ちょっと残念ですね。前期は、いかにも超常現象な事件なのに対し、後期は、サム・ホーソーンな話に近くなっています。いわゆる、オカルトに見えて実は本格、な話ではなくなってっちゃうわけです。

それでも楽しめる一冊、以下収録作品です。
「死者の村」
「地獄の代理人」
「魔術師の日」
「霧の中の埋葬」
「狼男を撃った男」
「悪魔撲滅教団」
「妖精コリヤダ」
「傷痕同盟」
「奇蹟の教祖」
「キルトを縫わないキルター」

やっぱり表題作の「死者の村」は面白かったですね。謎が魅力的です。「妖精コリヤダ」は、最後にパッと展開するのがいい。「キルトを縫わないキルター」は、ラスト2ページに関する限り、前半の流れが思いっきり関係ない、っていうオチがいいんじゃないでしょうか。

個人的には、「サム・ホーソーン」シリーズよりは楽しめました。別に、オカルト関係が好きなわけじゃあありませんが、全体的に事件が魅力的です。ホーソーンは、ややマンネリになっちゃうんですよね。

書 名:サイモン・アークの事件簿Ⅰ
著 者:エドワード・D・ホック
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mホ-4-8
出版年:2008.12.26 初版

評価★★★☆☆
サム・ホーソーンの事件簿Ⅲ
『サム・ホーソーンの事件簿Ⅲ』エドワード・D・ホック(創元推理文庫)

まあ僕は短編集はそんなに好きじゃあないんですが、安かったので、何冊か買ったワケです。その一冊がこれ。不可能犯罪で名高いホックの、不可能犯罪にこれでもかとばかり遭遇するホーソーンの事件簿です。

以外と物理トリックが多いことに驚きました。正直、80年代にもなって、紐とか使うのってどうよ、な感じですが、しかし独創的なトリックを考えるという一点において、ホックのアイデア力には驚かされます。

あと、訳を何とか出来ないんでしょうか。あまりにも直訳では……。例えば「~と認めた」「~と述べた」「あなたにそうさせるよう私は言われたのです」みたいな。!マークも多すぎるような……。

「ハンティング・ロッジの謎」
いや、バレるでしょう、これは。展開もやや急すぎます。

「干し草に埋もれた死体の謎」
状況からも、犯人は一人でしょう。ありきたりなトリックです。

「サンタの灯台の謎」
いくら何でもこのトリックは……。

「墓地のピクニックの謎」
ありきたりのトリックですが、よく出来ています。ひっかけも効果的だし、証拠も以外とあちこちにあります。

「防音を施した親子室の謎」
コナンでも似たようなのがありましたね。面白いですが、現実には無理だと思います。これが分からなきゃ、サムは医師失格です。

「危険な爆竹の謎」
以外と盛り上がってます(笑)簡単な話です。

「描きかけの水彩画の謎」
犯人がほぼ限定されていますが、どんなトリックを使ったのかを見抜こうとすれば、読んでて楽しいでしょう。

「密封された酒びんの謎」
なかなか面白い作品だと思います。

「消えた空中ブランコ乗りの謎」
うーーむ、いったい何だったんだ……。

「真っ暗になった通気熟成所の謎」
うまいですねぇ。いいと思います。ただ、犯人はこんな危ない方法を使わなくてもいいんじゃないかと。

「雪に閉ざされた山小屋の謎」
……うん、ま、いいんじゃない。僕は認めんがな。

「窓のない避雷室の謎」
ミステリのやっちゃダメ原則××を使ってます。反則的です。

「ナイルの猫」
傑作です。正直、この作品がなければ、評価2にするとこです。この一作品のみ、素晴らしい出来栄えでしょう。不可能物じゃなく、10ページの犯罪小説です。本屋さんで立ち読みしてください←おい

書 名:サム・ホーソーンの事件簿Ⅲ
著 者:エドワード・D・ホック
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mホ-4-4
出発日:2004.9.24 初版

評価★★★☆☆
『大鴉殺人事件』エドワード・D・ホック(ハヤカワポケミス)

「ミステリの世界の紳士淑女諸君。今夜皆さんとともにあることは、私の光栄とするところであります」その夜最高の受賞者、合同放送のロス・クレグソーンが口をひらいた。だれもがテレビを通じて彼を知っていた。「私はミステリが若者を退廃させるという考え方に必ずしも同調するものではありません。しかし、特殊なケースとして申し上げるのですが、この私自身、ミステリの影響で堕落したといい得るかと思うのであります。これから皆さんに私がこれまで一度も人にしたことのない話を聞いていただこうと思います。22年ほど前のことです……」
それが彼の最後の言葉だった。突然轟音とともに弾丸がマイクロフォンから発し、彼の顔に襲いかかった。壇上に倒れた彼は何か言いたそうだったが、弾丸が入った口からは血が溢れるだけだった。しかし、ロス・グレグソーンは最後の力を振り絞った。彼は死を前にしてなお何か伝えようとするかのように、司会者の手から陶器の大鴉像をもぎとり、それを壇の床に打ち砕いたのだ!
アメリカ探偵作家クラブ受賞パーティ、300人のミステリ作家と編集者の眼前での大胆不敵な殺人。死のメッセージ”砕かれた大鴉”とは? 相談をうけるエラリイ・クイーンをはじめ、多数の実在のミステリ作家を登場させた新鋭ホックの期待の本格処女長篇! (本書あらすじより)

すいません、あらすじ長すぎて(汗)まあいろいろ評価の別れる話だとは思いますが、高評価はとれないでしょうね。最後はあっけないし、ミステリとしてはお粗末だし、証拠が弱くてむしろ犯人は自滅に近いし。あんな情けない証拠でシラを切らないのはややがっかりです。

それから、実際のミステリ作家とか、有名な編集者が出てきまくるんですが、正直、日本ではなじみのないかたが多かったですね。というか、名前だけで、セリフは全くないのはやや不満です。主人公はいつのまにかエラリー・クイーンと電話したみたいですが、それだってきちんと書いてほしかったです。

ただ、着々と読み進められるんですよね。あまりに平凡すぎるんですが、だからこそ安心して読めるというか。オススメはしませんけどね。
ホックの処女長編だというのもあるんでしょうが、やっぱり彼には短編が似合います。

ちなみに、「鴉」って字の読みを初めて知りました(笑)

書 名:大鴉殺人事件
著 者:エドワード・D・ホック
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1186
出版日:1972.10.31 初版

評価★★☆☆☆