友はもういない
『友はもういない』ユージン・イジー(ミステリアス・プレス文庫)

シカゴの金庫破りフェイブと麻薬課の捜査官ジミイ―子供時代からの無二の親でありながら、二人はまったく別の道を選んだ。しかし二人は、お互い相手の仕事には干渉しないはずだった。フェイブが相棒と押し入った部屋で、無惨な女の死体と大量のコカインを目にするまでは…。クライム・ノヴェルの次代を担うと絶賛される大型新人が放つ鮮烈なデビュー作。 (本書あらすじより)

先日ツイッターでミステリアス・プレス文庫のおすすめ作品を大量に聞きまして、これは積んでいるミスプレを読むチャンスだろうと。『友はもういない』は数年前にやはり複数の方からおすすめされたものでした。ユージン・イジーは日本ではミスプレからしか出ていない作家です。
元刑事の金庫破りが最後の仕事に挑み、麻薬がらみの事件に巻き込まれてしまうという、ある意味典型的な巻き込まれもので、ヒリヒリするような、だがどこか感傷的な犯罪小説でした。街のあらゆる人物のパワーバランスを上手く処理した知能的などんでん返しに感心します。

元刑事フェイブは現在は金庫破り。親友である麻薬課の警視ジミイとは、お互いのことについて不干渉なラインを設けながらも定期的に会っています。フェイブは最後の大仕事として相棒の黒人ドラルと共に医者の部屋に忍び込みますが、予期せぬ出来事により計画が大きく狂いだします。
街を牛耳るボス・ディナードの麻薬取引をめぐるトラブルに巻き込まれたフェイブが、そこから逃れようとし、相棒のドラルとも対立し、さらに親友のジミイからも麻薬への関与を疑われてしまう、というザ・巻き込まれ&破滅まっしぐらな展開がつらい……ここまでが前半。
タイトルの通り親友である相棒&警視との仲が試される展開ですが、過去のエピソードや現在の心情描写に筆が費やされるため、話はむしろゆっくりとしています(やや遅いと言ってもいいかも)。多視点を駆使して各キャラクターの思惑も描かれるので余計にしめっぽいのです。あぁつらい。

後半になると、一転物語は大きく動き出し、要するにバンバンしたり駆け引きしたり死んだりするのですが、ここが非常に上手いです。ありとあらゆる犯罪者&警察官の企みが一気に動き出し、主人公まさかの生還ルートに向けてどんでん返しがきれいにきまります。複雑になりそうな話なのに、作者の視点の使い方が上手いせいか、実にスッキリとした印象を受けました。
そして”友はもういない”ラストに落ち着くわけで……なんかねぇ、すごく、いい話なんですよこれ。上質な犯罪小説を読んだなぁという気持ちになります。

というわけで、ザ・アメリカ王道犯罪小説として、かなりいい線いっている作品でした。この手の作品群に興味がある方なら外れないと思います。

原 題:The Take(1987)
書 名:友はもういない
著 者:ユージン・イジー Eugene Izzi
訳 者:安倍昭至
出版社:早川書房
     ミステリアス・プレス文庫 37
出版年:1991.04.30 初版

評価★★★☆☆
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