図書館大戦争
『図書館大戦争』ミハイル・エリザーロフ(河出書房新社)

秘密の力を持つ7つの本をめぐり、図書館・読書室の暗闘がはじまる。
叔父の遺産を処分するため、青年アレクセイはウクライナからロシアに向かう。そこで出会ったのは、亡き叔父を司書とする「シローニン読書室」の面々だった。忘れられた社会主義時代の作家グロモフの7つの本(「記憶」「力」「喜び」「忍耐」「権力」「憤怒」「意味」)。恐るべき力を秘めたこれらの本を、「図書館」・「読書室」が血で血を洗う決闘によって奪い合う。知略に富んだ慈悲深きマルガリータ、鎖分銅の使い手チモフェイ、長剣の名手ターニャ、ルーブル硬貨で鎧を仕立てるグリーシャ……。古強者揃いのシローニン読書室は、やがて強大な「図書館」との抗争に巻き込まれていく。ソ連崩壊後の世界に生きるひとびとを活写した驚異のスプラッターノヴェルとして、賛否両論ありながらロシアブッカー賞を受賞した問題作、ついに邦訳なる!!!(本書あらすじより)

11月に刊行され、やや話題になっていたロシアの小説です。読むと謎の力を得られるグロモフの7つの本だとか、その本の信者が作る団体〈図書館〉同志が争う〈スプラッターノヴェル〉だとか、もういろいろ意味不明じゃないですか。というわけで読んでみましたが……な、なんか期待と違う……。
冒頭のグロモフの本の歴史・〈図書館〉形成の歴史の部分はめちゃ面白いのです。これぞ奇想、ってな感じで。ファンタジー歴史大河みたい。ところがその本筋ではない歴史部分が面白さのピークで、その後の青年アレクセイが〈読書室〉抗争に巻き込まれていく部分がいまいち乗れず。せっかく壮大な物語を提示したのに、〈図書館〉ではな〈読書室〉という、1ランク劣る小規模なところが舞台になっちゃったからかもしれません。最後まで冒頭のピークを超えることはありませんでした。

読む前に懸念していたスプラッター感は実は大人しめです。メインは本を管理する強大な権力に対抗しようとする、主人公が所属する〈読書室〉のジジイとババアの奮闘(敗北すなわち死へとまっしぐら)、およびひたすら流され巻き込まれ体質の主人公の流されっぷり、なんですよね。終わりに近づくにつれ話がどんどん暗くなるのも致し方ないというか。
物語の後半ではグロモフの7つの本の中でも最レアな「意味の書」をめぐるあれこれが主軸になったりならなかったりするのですが、このへん結構雑プロットで、勢いはあるのになんだかもったいないところもあります。全体的にはある程度ストーリーで殴ってくるので、楽しいことは楽しいんですが、ラストはもうなんか「意味の書」と世界が何とかとかがサッパリ分かりません(本当になんだったんだあれは)。要するにソ連ってよかったねという話でしたが、うん、まぁやっぱりよく分かんなかったね……。

というわけで、思ったほど自分にはハマりませんでした。ネタとして紹介する分にはいいのですが、ネタ部分が先行してしまうとこの本の実際以上に魅力的に見えてしまうかも。ということはビブリオバトル向き?

原 題:The Librarian(2007)
書 名:図書館大戦争
著 者:ミハイル・エリザーロフ Mikhail Elizarov
訳 者:北川和美
出版社:河出書房新社
出版年:2015.11.30 初版

評価★★★☆☆
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