2009.07.18 『魔性の馬』
『魔性の馬』ジョセフィン・テイ(小学館)

「あんた、あいつに瓜二つだ」飲んだくれの役者ロディングがロンドンの街頭で出逢った孤児のファラー。彼はロディングが彼の親戚アシュビー家の行方不明の長男パトリックと間違えたほど、そっくりだった。金に困っていたロディングは、彼を説得して家督相続者である行方不明の兄が戻ってきたという触れ込みで、アシュビー家に彼を送り込んだが…。(本書あらすじより引用)

テイを読むのは3作目になります。そんでもって、やっぱり『時の娘』には勝てないかなぁと思います。「魔性の馬」はいわゆるノンシリーズにあたり、事件全体も本格とはちょっと一線を画す話です。前半が単調だったという感が否めませんね…。ミステリーというよりは、青春小説にさえなりそうな感じで。読みにくいということはないんです(実際、このネタで飽きずに読めるんだからスゴイ)。ただ、犯人が誰かということは、作者はこだわっていないようですし、トリックも意識してるようには見えません。

ただ、ミステリーとしてではなく、孤児だった主人公の成長物語として見るなら面白いと思います。家族の人達を含め、個性的な村人たち、優しい牧師、馬のこと、などなど、古きよきイギリスを彷彿とさせる物語です。こうした作品が好きな人はまだまだ多いでしょうし、おとなし目のクライムノベル(なんじゃそりゃ)が好きな人にはおすすめです。主人公なんか、最後思いっきりハッピーエンドだし。

ところで、どこかのサイトで書いていましたが、ロディングを2回出さない、というのは確かによかったと思います。推理小説ではこういった位置付けの人物(清廉潔白な主人公に悪いことをさせる人)はいやらしく何回も出てくることが多いですが、そういうことはありません。そのおかげで、好印象で、スッキリとした話に仕上がっているんでしょうね。

書 名:魔性の馬
著 者:ジョセフィン・テイ
出版社:小学館
      クラシック・クライム・コレクション('03)
発 行:2003.3.20 初版

評価★★★☆☆
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『ロウソクのために一シリングを』ジョセフィン・テイ(ハヤカワポケミス)

英国南部の海岸に、女の溺死体が打ち上げられた。すぐに身元は映画女優のクリスティーン・クレイと判明。現場の状況から事故死とも考えられたが、ロンドン警視庁のグラント警部は背後に殺人の臭いを嗅ぎとった。容疑者としてクリスティーンの別荘に滞在していた青年ティズダルが浮上するが、警察の動きを察知して行方をくらましてしまった。そんな折り、クリスティーンの遺言が開示され兄ハーバートへの奇妙な遺言が明らかになった!(本書あらすじより)

この前紹介した『時の娘』と同じ作者さんです。『時の娘』がおもしろかったので、読んでみたのですが…。

ちょっと期待外れな感じがありましたね。読んでいて無駄が多いというか、あまりきちんと練られているという印象を受けませんでした。ディズダルの逃亡もなんだかよくわかんないし、あらすじにあるような奇妙な遺言でもなかったし。というか、あの遺言は実際どういう意味があったのか、そこんところが微妙です。

しかし悪い本かというと、そうでもないんですよね。前半は果てしなくだれますが、後半からは割と一気に話が進みます。やっぱヒッチコックにより映画化されるだけあって(「第三逃亡者」)テンポはよく進むんでしょう。

それでも、ジョセフィン・テイなら『時の娘』でしょうね。

書 名:ロウソクのために一シリングを
著 者:ジョセフィン・テイ
出 版:早川書房
   ハヤカワポケミス 1704
発 行:2001.7.15 1刷

評価★★★☆☆
2009.06.04 『時の娘』
『時の娘』ジョセフィン・テイ(ハヤカワ・ミステリ文庫)

薔薇戦争の昔、王位を奪うためにいたいけな王子を殺害したとして悪名高いリチャード三世─彼は本当に残虐非道を尽くした悪人だったのか?退屈な入院生活を送るグラント警部は、ふとしたことから手にした肖像画を見て疑問を抱いた。警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、純粋に文献のみからリチャード三世の素顔を推理する。(本書あらすじより)

ジョセフィン・テイ初読です。
英米で歴史ミステリの傑作として名高い作品で、日本の歴史ミステリを書いた作家さんも影響されたらしいです。全編にただようイギリス的なユーモアがいい感じ。一気に最後まで読めてしまう作品です。海外ミステリに注目している人は一読の価値アリですよ。

とにかく、忠実に史実を追って真相が明らかになっていくのが非常にいい感じです。予備知識がないと読みにくいとは思いますし、薔薇戦争自体を知らない人もいる日本人には向いていないという意見もありますが、きちんと順を追って読んでいけば大丈夫なはずです。僕としては、読みながら過去の人物の登場人物評リストを作ることもお勧めしますけど。

グラント警部個人の個性的なところはあんまりないんですが、しかし忠実に思考の問題であるミステリーでもある、つまり足を全く使わないわけなので、主人公としては最適である気がします。

ついでに、薔薇戦争に興味ある人も読んでもいいかも。むしろ、歴史に詳しい人の方が分かりやすいかもしれません。途中まで僕もイマイチ分からなかった(笑)読んで歴史の先生をギャフンと言わせられる!…かも。

これを元にして夏休みの世界史のレポートを作ったのは秘密です(笑)

書 名:時の娘
著 者:ジョセフィン・テイ
出 版:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1
発 行:1977.  初版発行
     2005.3.15 23刷発行

評価★★★★★