アンブローズ蒐集家
『アンブローズ蒐集家』フレドリック・ブラウン(論創海外ミステリ)

SF・ミステリの鬼才フレドリック・ブラウンが放つ“エド・アンド・アム・ハンター”シリーズ最後の未訳作品がついに完訳! ある日突然、探偵の伯父が消息を絶った。甥で同じく探偵のエド・ハンターがアム伯父さんを救出すべく奮闘する!(本書あらすじより)

いやー、年末ミステリランキングの時期ですね。
普段はあまりあの内容についてコメントしないんですが、よく考えたら自分もかれこれ5年くらいは投票に関わってきたわけですよ。コメント書いたりもしてるし。それも今年最後というわけなので、せっかくですから、このミスの結果が出たあたりにでもちょっと記事を書こうかなと思っています。サークルとしてというより、個人的な新刊ランキングくらいは書いてみようかなと。ご期待ください。

さて、相変わらず1ヶ月以上遅れて読んだ本の感想を書いていますが、今回はフレドリック・ブラウンのエド・ハンターシリーズから、唯一未訳だったもののついに翻訳された4作目です。『シカゴ・ブルース』に始まる私立探偵小説シリーズですが、自分、読むの初めてなんですよ。というかそもそもブラウンの長編自体読んだことなかったですし。
傑作と言うんじゃないけどしみじみ面白い作品でした。特に最後のほろ苦い感じがすごくいいです。青春ハードボイルドでありつつ、都市伝説的な魅力ある謎で読者をまず惹きつけるあたりが上手いなぁと。ぜひシリーズを追ってみたいなと思わせるだけの力のある一作です。

雇われ私立探偵エドの伯父(同じく探偵)アムことアンブローズが行方不明に。奇しくも「アンブローズ・コレクター」なる、アンブローズさんを蒐集しているという謎の男のウワサ話を聞き不安に思ったエドは、雇い主の探偵事務所総力のバックアップのもと、伯父探しに奔走します。

このシリーズ、基本的に若いエドと経験豊かな伯父アムがコンビで捜査するようで、エドの一人称によりエドの成長物語にもなっている、というテイストみたいですが、しょっぱなからアム伯父が行方不明なので、結局ほとんどアムを見ることが出来ませんでした。とはいえ、アム伯父を探す過程でアム伯父について詳しく知っていくことにもなる、という構成ですので、シリーズ未読者でも大丈夫だと思います(特に分からないこととかはなかったです)。
で、これ、軽めの一人称ハードボイルドですが、主人公がとても若いので、青春小説・成長小説としての味わいがいいんですよ。優秀な私立探偵である伯父を探すために、エドは探偵事務所所長の助けを借りて頑張って探偵をします。手がかりがほぼ皆無の事件だからこそ、若造で未熟なエドの実力が試されるわけです。アム伯父の足跡をたどるところなんかは、アム伯父になりきって考えたりするので、捜査というより探偵の修行をしているかのようです。
「アンブローズ・コレクター」というディーヴァーばりの犯人の謎は早々と大人しいところに着地しますが、他にも地元の賭博不正事件などを絡めながら上手いこと犯人当てをちょこっと入れており、なかなか一筋縄では終わりません。謎解きをし、かっこよく私立探偵らしいところを見せて終わる、という丁度良いこじんまりとした感じがすごく好きです。

他にも、シリーズの中で登場人物の変遷をしっかり描いており、これ全部読めばさぞ面白いんだろうなぁと思わされました。長い付き合いの娘エステラ(超美人)とエドの関係が、(過去作読んでる方が面白いんだろうけど)かなりはっきりと揺れ動いた末に、ちょっと苦いラストになるあたりが青春小説として素晴らしい出来栄え。途中でいちゃこらしているだけに素晴らしいです。うーん次作が気になるな……。

というわけで、全体的に好きな私立探偵小説でした。また読まなきゃならない&集めなきゃならないシリーズが出来てしまった……。

書 名:アンブローズ蒐集家(1950)
著 者:フレドリック・ブラウン
訳 者:圭初幸恵
出版社:論創社
     論創海外ミステリ 153
出版年:2015.08.30 初版

評価★★★★☆
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