リモート・コントロール
『リモート・コントロール』ハリー・カーマイケル(論創海外ミステリ)

D・M・ディヴァインを凌駕する英国の本格派作家。新時代の巨匠ハリー・カーマイケル、満を持しての日本初紹介!男女関係という“千古不易の謎”にクイン&パイパーの名コンビが迫る。(本書あらすじより)

D・M・ディヴァインと同時代の、じみ~な英国本格ミステリ作家の初紹介作品です。M.K.氏による名同人作品『ある中毒者の告白』(未訳ミステリレビュー本)くらいでしか紹介されていないというハリー・カーマイケルですが、実は80作品くらい書いているようです(なんで紹介されてなかったんだ?)。これ絶対好きですよと言われて読んでみたんですが、なるほどね……これは確かに俺が好きなやつだ……。
交通事故死という見た目は派手ながら結局地味すぎる事件を発端に、自殺なのか?みたいなこれまた地味な事件を重ねつつ、往年の黄金時代っぽいトリックを炸裂させます。ツッコミどころは多々あるし、はっきり言ってディヴァインの全作品より下だと思いますが、いやーいいよー、俺はこういう作家を待っていたんだよ、どんどん出してください。

新聞記者クインは、酒場の飲み友達パイパーの起こした交通事故事件になぜか巻き込まれることに。ついに起こった死亡事件で容疑者とされてしまったクインは、友人である保険調査員パイパーに協力を頼み、疑いを晴らすため真相を調べようとするが……。

このクインのキャラがいいのです。疎遠になってしまった友人からご飯に誘ってもらいたいなー、でも彼は結婚するしめんどくさいんだろうなー、あー俺は孤独だなー、って最後までぼやいているんですよなにこの人。しかもその友人ってもう30作くらい共演してるシリーズ仲間なのに。ロスマクっぽい、とカーマイケル作品が形容される理由がたぶんこのクインさんですね。

メイントリックは予想範囲内で、分かっちゃう人も多いでしょう。これを成立させるため犯人が仕掛けたもう一つのトリックはああなるほどねと感心しますが、これだけだったら相当小粒なミステリどまりだったはず。いや実際小粒ですが。
(……というか、よく考えたら真相の明かし方が独特で、トリック明かす前からかなり小出しに読者に情報をばんばん明かしていくんですけど、これはなぜなのかな……タイトルも含めてあんまりこの点でサプライズを仕掛ける気がなかったんでしょうか。よく分かりません。)
けど、その真相の暴き方が、死んだ女性の死ぬ直前の心理状態を推理していく、という流れから綺麗につながっているのがいいのです。彼女は果たして自殺したがっていたのか?という疑問が、複数の矛盾し合う証言からするすると解けていきます。うわっすごいマジメな作風。

240ページという分量の丁度良さや、読み進めやすく雰囲気全体から英国現代本格らしさが漂ってくるところといい、かなり好み。次は大きなトリックのない、さらに小粒な作品が読みやいのでぜひぜひ紹介をお願いします論創社さん。

書 名:リモート・コントロール(1970)
著 者:ハリー・カーマイケル
訳 者:藤盛千夏
出版社:論創社
     論創海外ミステリ 151
出版年:2015.07.30 初版

評価★★★★☆
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