復讐の子
『復讐の子』パトリック・レドモンド(新潮文庫)

“私生児”と蔑まれながらも才能に恵まれ、美しい少年に成長したロニー。豊かな幼少期を過ごしたものの、母親の再婚とともに不穏な世界へと突き落とされたスーザン。多感な年頃に出会ったふたりは、待ちに待っていたかのように惹かれあう。だが、ロニーがスーザンに打ち明けた秘密は恐るべきものだった……。愛情を憎悪に変え、悲劇の連鎖を引き起こす戦慄の少年少女を冷徹に描く力作。(本書あらすじより)

パトリック・レドモンド。そう、あの大傑作『霊応ゲーム』の作者です。その作者によるもうひとつの邦訳作品が、この『復讐の子』なのです。これだけダサいタイトルであっても、傑作オブ傑作『霊応ゲーム』の作者であることを考えると、面白くないわけがないのです。期待せざるを得ないのです。

読みました。

くそーー! おもしれーなーーー!! パトリック・レドモンドめっちゃおもしれーなーーー!! なんで2作しか訳されていないのかなーーー!!! もっと読まれてほしいんだけどなーーーーーーーー!!!!
というわけで、今回もおすすめです。

あらすじは超普通。私生児であり、過酷な親戚のもとで少年時代を過ごした美しく賢いロニー。彼はやがて、表面的には優等生を演じつつ、影で自らと母親に害をなすものに対して容赦ない罰を与えるようになってしまいます。
これだけならどこかで見たことある話なのですが、作者が上手いのはこの先。ロニーの話と並行して、別の町に暮らす美少女スーザンの物語が描かれるのです。スーザンはこれまた複雑な過程に育ち、過酷な少女時代を過ごすはめになります。ひたすらエグいです。ロニーの比ではないどん底の生活なのです。
この2人が後半に出会い、ついに、物語は大きく動き出すのです。

『霊応ゲーム』ほどの衝撃やカタストロフィはありませんが、それでも非常に読ませる作品。少年少女のつらい幼年時代(ベタ)からの復讐(ベタ)というテンプレートで殴る面白さがたまりません。終盤に明かされる過去のインパクトも良いですね。670ページもあるのにとんでもなく読みやすいので、厚さが苦になりません。
心に闇を抱えた復讐の子、ロニー・サンシャインの狂気譚……というだけなら、ありきたりかなとは思うのです(それでも十分面白いと思うけど)。ところが同じく復讐の子であるスーザン・ラムジーの話も並行させているあたりが上手いんだなぁ。成長したふたりがついに出会い、大人たちへの反逆を企てるんですよ、めっちゃお話として強くないですか。
救いのあるラストが光りますが、これはスーザンの強さあってこそのものですね。

というわけで期待にたがわぬ面白さでした。レドモンド、あと3作未訳の作品があるようなのですが、頼むからどうにかして紹介されてくれませんか……。
というわけでまずは『霊応ゲーム』がもっと売れなければ困ります。とりあえず未読の人は『霊応ゲーム』を読むのです、話はそれからです。分厚いと思うかもしれないけど気にしてはいけません(めっちゃ読みやすいし)。寄宿舎BL興味ないとか言っていないで読むのです。登場人物も多いけど気にしてはいけません(どうせみんな死ぬ)。そしてハマった方は、『復讐の子』もぜひ。

原 題:Apple of My Eye(2003)
書 名:復讐の子
著 者:パトリック・レドモンド Patrick Redmond
訳 者:高山祥子
出版社:新潮社
     新潮文庫 レ-9-1
出版年:2005.03.01 1刷

評価★★★★☆
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霊応ゲーム
『霊応ゲーム』パトリック・レドモンド(ハヤカワ文庫NV)

「復刊ドットコム」で絶大な支持を得た傑作サスペンス、待望の文庫化! 1954年、イギリスの名門パブリック・スクールで学ぶ14歳の気弱な少年ジョナサンは、同級生ばかりか教師にまでいじめられ、つらい日々を送っていた。しかしある時から、クラスで一目置かれる一匹狼のリチャードと仲良くなる。二人が親密になるにつれ、ジョナサンをいじめる悪童グループの仲間が一人、また一人と不可解な事件や事故に巻き込まれていく……彼らにいったい何が? 少年たちの歪んだ心を巧みに描いた幻の傑作!(本書あらすじより)

傑作
いやー、ほんと、『霊応ゲーム』の復刊が決まった時はめっちゃ嬉しかったんですよ。入手が難しいハードカバーとして有名だったものがようやく復刊! そして復刊に値する傑作です。うわっ分厚いと思うかもしれませんが、のけぞることなかれ。あなたは長さにではなく内容にのけぞるのです(ドヤ顔)。
英国寄宿学校で起きた恐るべき事件とは?というNV文庫で(そういうことだ、察して)、生徒同士の独占欲と嫉妬のもつれた関係に、複雑な事情を持つ教師や保護者を絡めて濃厚で歪んだドロドロ人間関係を描き、カタストロフィにまっしぐらな600ページ。素晴らしかったです。

気弱ないじめられっ子(けどイケメン)ジョナサンは、強烈なカリスマ性を持つ一匹狼リチャードと友人になります。しかしリチャードが異様な独占欲を示したことで、ジョナサンの友人や、ジョナサンをいじめていた男の子らとの関係に危うさが生じることに。さらに、リチャードを危険視する校長や、ジョナサンを気に掛ける歴史の先生、ジョナサンをいじめるラテン語の先生、リチャードの親族などもそれぞれ複雑な背景を持ち、リチャードとジョナサンの関係に巻き込まれていくのです。そしてついに学校で恐るべき事件が連続するように……。

中盤まで特に大きな事件が起きるわけでもないのに、とにかく不安で不穏な雰囲気が立ち込めていてもうぐいっぐい読めます。リチャードの危うさを認めつつも共依存関係から抜け出せないジョナサンはずぶずぶと関係を続け、どんどんみんなが不幸に。こわいよリチャード。こわすぎるリチャード。
みんなが不幸になり、絶望感漂う中、壮絶なラストへと突入してくのです。もうここのカタストロフィっぷりがやばいのです。近年読んだ本の中でも圧倒的にやばい。すごいんですよ、だってみんな(ピー)なんですよ。うひゃあ。

ちなみにある重要なシーンを描いていないため、あの要素がこの作品全体に影を投げかけつつも、終盤までほとんど出て来ない、ということになっています。このほのめかすだけの書き方は結構好きなんだけど、ちょっとラストあたり急じゃないか?という気はするし、物足りなさを感じる人もいるようです。でもまぁほら、NV文庫だし……(どういうこと?)。

英国寄宿学校小説として、特にBL要素の強い小説として薦めるコメントが多く、いや実際そういう方はもうマストリードですが、えーそういうの興味ないわーみたいな方もいっぱいおられようかと思います。関係ないです。そういうの抜きで普通にどろどろサスペンスミステリとして面白いからみんな読みましょう。手首にダメージが来るレベルで分厚い文庫(値も張る)ですが、今年の作品の中でもベストを争う面白さ(復刊だけど)。おすすめです。


書 名:霊応ゲーム(1999)
著 者:パトリック・レドモンド
訳 者:広瀬順弘
出版社:早川書房
     ハヤカワ文庫NV 1343
出版年:2015.05.15 1刷

評価★★★★★