グリーン・マイル 上 グリーン・マイル 下
『グリーン・マイル』スティーヴン・キング(小学館文庫)

大恐慌さなかの一九三二年、アメリカ南部、コールド・マウンテン刑務所。電気椅子へと続く通路は、床に緑のリノリウムが張られていることから通称“グリーン・マイル”と呼ばれている。ここに、双子の少女を強姦殺害した罪で死刑が確定した黒人男性ジョン・コーフィが送られてくる。看守主任のポールは、巨体ながら穏やかな性格のコーフィに一抹の違和感を抱いていた。そんなある日、ポールはコーフィの手が起こした奇跡を目の当たりにしてしまう……。全世界で驚異的ベストセラーとなったエンタテインメントの帝王による名作が、十七年の時を経て鮮やかに蘇る。(本書あらすじより)

つつつ、ついに初キングですよ。ディーヴァ―、コナリーと並ぶ手を付けてないエンタメ巨匠軍団(勝手にまとめた)。3月の千葉読書会でこちらが課題本だったので、ようやく読めることになったわけです。いや、ホラーとかほんとダメなんですけど、こういう話ならまだいけそうだし。

冒頭でキングが説明していますが、本書はもともとキングが1996年、本国アメリカにて全6冊と予告した上で、毎月ペーパーバックで1冊ずつ発表する、という形で出版されたものです。ディケンズの新聞連載の向こうを張ったみたいですね。日本では雑誌連載が多いですが、欧米では書き下ろしが基本のため、こうした試みは初のものだったそうです。まぁ、日本でも毎月「本」の形で出していく、ってのは聞きませんね。
で、読書会で訳者の白石朗さんからお聞きしたのですが、それを受けて、日本でも毎月新潮文庫からほぼ同時並行で翻訳作業がすすめられていったそうです。だから1冊目の翻訳作業中にはまだ第6巻が出ていないということになるわけで。伏線その他もろもろもよく分からず、さらに毎月出版なので何冊分もの原稿とゲラとが飛び交うという大変な作業だったそうです。アメリカでは同年中(だったかな?)に加筆修正された単行本が出て、日本でも2000年に新潮社からそのバージョンの『グリーン・マイル』がやはり単行本で出ています。2014年に出たこの小学館文庫版も、単行本版をもとにしているそうです。

という前置きはさておき。個人的には大変面白く読むことが出来ました。何がいいって、この分冊形式がやっぱり肌に合うんですよね。200ページおきに大いに盛り上がり、次巻への気になる引きが出て来るわけでしょう。要するにマンガの週刊連載みたいな感じだから、続きが気になること気になること。

物語はジョン・コーフィという囚人を見届けることになる看守主任ポールの視点から語られます。死刑囚独房で働くポールは、死刑囚の最後の日々を共にし、その処刑を行う、という仕事をしています。数々の死刑囚を見て来たポールですがある日入所してきたコーフィに対して、本当に人を殺したのか?という疑問を感じてしまいます。やがて、刑務所内で驚くべき奇跡が起きるようになるのですが……。

善と悪の対立が非常にはっきりしているせいか、読み物としての面白さがしっかりしています。ポールをはじめとする看守たちは基本的にいい人ばかり。数人の死刑囚たちも、おだやかな人たちばかり。ところがここに、乱暴な看守ポールや、調和を乱したがる問題囚人などが入ってきて、緊張状態に突入します。こうした緩急の付け方が、なんというか、さすがベストセラー作家という上手さ。
さらに、メインとなる「奇跡」などのファンタジー的な面白さ。非常に賢いネズミであるミスター・ジングルスの存在や、ジョン・コーフィという謎の囚人などなど。いくつかの謎解き要素もはらみながら、物語はこの奇跡をめぐるあれこれを描き続けています。ジャンル横断的な小説ってまさにこういうのだよなぁと思います。
ちょっと不思議なのが、作者が次に何が起こるかを常にほのめかしながら、時には言ってしまいながら書いていること。そのため、展開上の意外性というものはあまり演出されていません。やっぱりキングですから、少々グロい処刑シーンとかも出てくるんですが、それも前もって言われているので心構えが出来るし。たぶん、分冊ペーパーバックという形式から、誰にでも入りやすい読みやすさに配慮しているせいじゃないかと思うんですが。

というわけで面白く読めたんです。が、『ライトニング』もそうですけど、どうもこういうジャンル横断エンタメって「あー面白かった」で終わっちゃってなーんか物足りないんですよね。どこがどうとは言えないんですけど。小学館文庫でがっつり上下巻読んではい終わりというのじゃなんかつまらない。いやそんなこと言ったら、本格ミステリなんてそれ以上に何にも残らないんですが。これ、やっぱり分冊で毎月読んでいくスタイルの方が、素直に楽しめそうな気がします。
次のキングは『シャイニング』を読めと言われたんですが、だからホラー読みたくないんだけど……。

書 名:グリーン・マイル(1996)
著 者:スティーヴン・キング
訳 者:白石朗
出版社:小学館
     小学館文庫 キ-4-2,3
出版年:2014.07.13 初版

評価★★★★☆
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