世界を売った男
『世界を売った男』陳浩基(文藝春秋)

香港西区警察署の許友一巡査部長は、ある朝、マイカーの運転席で目が覚めた。酷い二日酔いで、どうやら自宅に帰らず車の中で寝込んでしまったらしい。慌てて署に向かったが、どこか街の様子がおかしい。署の玄関も改装されたように様子が変わっていて、ポスターを見ると2009年と書いてある。「馬鹿な、昨日は2003年だったのに?!」許巡査部長は一夜にして6年間の記憶を失っていた。呆然とする許だが、ちょうどそこに女性雑誌記者・蘆沁宜が現れ、許が昨日まで捜査していた夫と妊娠中の妻が惨殺された事件の取材で、許と会う約束をしたという。6年前の事件の真相と己の記憶を追い求める許の捜査行が始まる。奇想天外な発端と巧妙なプロットで圧倒的な支持を受け、第2回島田荘司推理小説賞を受賞。香港の鬼才が放つアジア本格の決定版。(本書あらすじより)

この間更新した記事は第1回島田荘司推理小説賞でしたが、今日は第2回です。あらすじをご覧ください。隅から隅まで新本格です。
6年間の記憶を亡くした刑事が過去の事件を調べていくうちにうんたらかんたらという21世紀本格。終盤のどんでん返しの畳み掛けは圧巻で、いくつか想定範囲内でもこれだけ重ねられるとかなり複雑な真相になってきます。そこそこ読ませるし、良作かなといったところでしょう。

記憶を亡くしている主人公は、いろいろと不穏なもの・違和感を覚えまくり、読者をもやっと感に叩き落とし続けます(持っている手帳の内容が6年前で終わっている、というは良かったですね)。これらが強引にせよ最後にきっちり合理的に説明され、その上でひっくり返すのでかなり上手いなと思いました。
正直ひっくり返したもん勝ちみたいなところはあるんですけど、これだけやりつくした感があるならまぁ許せます。文章はまた平べったい文章ですが、これはまぁ小説力を求められてるわけじゃないので仕方ないね、うん。ただ、面白くはあったけど、感心はしなかったので、全体的にはあと少し、といったところ。

3作読んだ中では、『世界を売った男』が一番頑張ってましたかねー。次が『蝶の夢』かな。ただ、どれも一定水準以上の出来ではあると思います。

書 名:世界を売った男(2011)
著 者:陳浩基
訳者:玉田誠
出版社:文藝春秋
出版年:2012.06.10 1刷

評価★★★★☆
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