ライトニング
『ライトニング』ディーン・R・クーンツ(文春文庫)

不幸な生い立ちの作家ローラには、「守護の使い」がいた。幼い頃、危機に陥るたびに、稲妻と雷鳴とともに謎の男が救いに現われたのだ。そして今、家族を持った彼女を謎の暗殺者たちが執拗に狙う。決死の逃亡を決意した彼女の運命は? 刊行当時に本好きたちを徹夜させた無敵のジェットコースター・スリラー。海外ミステリ・マスターズ第3弾!(本書あらすじより)

今年から文春文庫で始まった海外ミステリ・マスターズの1冊。品切れになっている過去の文春文庫の名作を続々と復刊していくというナイスな企画です。いまもう4冊出てますね、『真夜中の相棒』『ライトニング』『「禍いの荷を負う男」亭の殺人』『遥かなるセントラルパーク』。続きが楽しみです(別に全部読んでいるわけでもない人がほざく)。
で、これを現代海外ミステリ読書会の課題本として選んでみたのですが……謎の男がローラを救いに何度もやってくる前半は圧倒的に面白いです。この何が起きてるんだおらわくわくすっぞ感はすごくいいですよ。ただ、後半に入り悪者からの逃避行になると、終盤までがやや冗長で、前半の魅力が急になくなるのが惜しいんだなー。エンタメ力は高い、ジャンル横断型の作品。

とにかくローラの人生が面白いんです。不幸のオンパレードみたいな感じですが、そんな中どこからともなく助けに来る〈守護の使い〉のかっこよさ。けどただの白馬の騎士物語ではなく、ローラが人生を切り開いていこうと奮闘する物語として純粋に面白い話となっています。
特に孤児院時代が良いですね。彼女の周りのキャラクターの描き方も常にいいんですけど、孤児院時代はここにたくましい双子の姉妹や引きこもりがちな女の子など数多くの魅力的な登場人物を投入して、不幸な物語を盛り上げていきます。やっぱりディケンズ的な、孤児院で強く生きる子供の物語って普遍的な面白さがありますね、いやほんと。

そして前半は、この〈守護の使い〉の正体は何か?という謎もあってぐいぐい読ませます。なぜ彼はローラがピンチに陥るたびに都合よく現れる(ことが出来る)のか?という大きな謎。そしてなぜローラを助けに来るのかという謎。この謎、もうあれしかないっしょという感じで、しばらくすると作者も隠さなくなりますが……。
ところがどっこい、この謎は、ある程度まで読者の想像通りではあるんですけど(何しろ作者が途中からばらしだすし)、そこにしっかりと捻りが加えられているのです(これは後半に明かされます)。あの瞬間は確かにぞくぞくっとしました。いいぞ守の使い、がんばるんだ。

……そして後半は、守護の使いが、えー、がんばらない話になります。要するに追手が来るので逃げなきゃならなくなるんですが、この守護の使いが全く役に立たなくなっちゃうので、変わってローラが対処しようもない敵と戦うことになります。まぁ、この戦い方は確かに難しいだけにがんばってるし、上手いこと成立させてはいるんですが、でも最終決戦までが長いですね。躍動感はあるけど、冒険小説的にもやっぱり物足りないし……。
息子クリスのため孤軍奮闘するローラの戦いっぷりは、悪くはないですよ、でも正直言って前半からの変化に俺の体が適応できません。だって前半がむちゃ面白いんだもん、しょうがあんめぇよ。

というわけでなんとも尻すぼみな読書になっちゃいましたが、全体として楽しめたのは確か。じゃあクーンツの他の作品を読むかと言うと……うーん、いまはそこまでそうはならないのも事実だな……。

書 名:ライトニング(1988)
著 者:ディーン・R・クーンツ
出版社:文藝春秋
     文春文庫 ク-5-18
出版年:2014.08.10 1刷

評価★★★☆☆
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