ラスト・タウン―神の怒り―
『ラスト・タウン―神の怒り―』ブレイク・クラウチ(ハヤカワ文庫NV)

※以下の内容は、あらすじも含めて、ブレイク・クラウチの前作『パインズ』『ウェイワード』を未読の方にはネタバレとなっております。というわけで未読の方は読まないほうがよいのですが、ざっくり気になっている方にだけお知らせしますと、『パインズ』が星5つ、『ウェイワード』が星4つだったとするならば、『ラスト・タウン』は星3つでした。えーとつまりそういうことです(ラストだけ頑張ったんだけどね)。







保安官イーサン・バークの告発が引き金となって、町を外界と隔てるゲートは開け放たれた!異形の生き物が群れをなしてなだれ込み、人びとに襲いかかる。凶暴な牙と爪!血塗られた町を飛び交う恐怖の叫び!イーサンは住民を組織して、怪物たちや町の創設者に立ち向かう。だが、仲間は次々と怪物の餌食に……。人類最後の町の未来はいかに?『パインズ』『ウェイワード』に続く三部作の完結篇!(本書あらすじより)

というわけで、あらすじからして既に『パインズ』最大のオチどころか、『ウェイワード』衝撃のラストまで語っているわけです。大変危険です。というかタイトルすら既にネタバレです。書店でうっかりこれを手に取っちゃう人がいたらどうするんだろう。
で、最初に『ウェイワード』未読の人は以下読まないでねって書きましたけど、そもそも『ウェイワード』読んだ人は『ラスト・タウン』の内容が気になってしょうがないはずなんですよ。だからいくらここで自分が『ラスト・タウン』をこきおろそうがたぶん読むので、誰のための感想なんだって感じですが、まぁあくまで自分向けなので。

さて、今までのこのシリーズを総括するならば、『パインズ』は魅力的な謎とどんでん返しがやばいド級のエンタメ小説でした。『ウェイワード』は設定がまぁまぁ読ませる一方で最後が噴飯もののシリーズのつなぎ作品でしたそして3部作の最後は……なんと、チープさ200%増しでの化け物による殺戮祭り(だけ)なのでした。え、えーー。もっと頑張ってよクラウチさん。でもラストだけまた上手いオチが用意されているので、なんかもうあれですね、どうしようもない。

とにかく、前作のラストでモンスター祭りが始まりかけ、さぁどうなると思ったらマジで7割まではただの虐殺祭りです。そしてどう収束するのかと思ったら、結局これしかないようねという方法で楽々と説得が進み、なんとか片が付きます。ってこれでいいんかーい。
前作での胡散臭い登場人物(パムとかピルチャーとか外をうろついていたやたらと思わせぶりな情報を持っていそうな人とか)はみんな安易に処理されます。もうほんと行きあったりばったりのストーリーで、まったく練りこみがありません。特にパム。お前わざわざ生存ルート選んでおいてなんでそうなるのだ……。あともう言っちゃいますけど、世界の探索に出かけ、帰ってきたあのお方(『ウェイワード』の地味な衝撃)ですが、何の情報ももたらしません。世界はもう滅んでいるからもうダメだ、だそうです。あ、うん……まぁそうだよね……。それから作中でアビーを手なずけたっぽいおばあさんがいましたけど、え、あれ何の意味もなかったの?

そして、なるほど、このラストの解決方法は確かに偉いです。エピローグのあれも結構飛んでて笑っちゃいました。ブレイク・クラウチさん、一発ネタだけは頑張れるのね。プロットはダメだけど。でも結局全部ぶん投げただけとも言えるわけで……せめてさぁ、三部作なんだからもちょっと考えてよ……主人公これじゃただのバカみたいじゃん……バカだけど……。

結局3部作とはいえ『パインズ』大人気を受けて書かれた『ウェイワード』『ラスト・タウン』ということですし(バック・トゥ・ザ・フューチャーと同じ方式)、おまけに徐々に面白さが下降していくので、読むのは『パインズ』だけでいいのでは、っていう結論になりましたつらい。個人的には最初が星5、次が星4、最後が星3ってとこです。全作品めちゃくちゃ読みやすいのが救いといえば救い。

書 名:ラスト・タウン(2014)
著 者:ブレイク・クラウチ
訳 者:東野さやか
出版社:早川書房
     ハヤカワ文庫NV 1354
出版年:2015.08.15 1刷

評価★★★☆☆
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ウェイワード
『ウェイワード―背反者たち―』ブレイク・クラウチ(ハヤカワ文庫NV)

山間にたたずむ小さな町、ウェイワード・パインズ。絵に描いたように美しいこの町には、ある秘密が……。そんな町で初めての殺人事件が起こる。全裸で打ち捨てられていた女性の死体には、血が一滴もない上に、ひどい拷問を受けた形跡があった。保安官イーサンが捜査を始めると、そこには被害者の意外な正体と、偽りの町に潜む闇が浮かびあがるのだった。M・ナイト・シャマラン監督ドラマ化! 衝撃作『パインズ』続篇。(本書あらすじより)

さあ出ちゃいましたよ、シリーズ2作目が。もともと『パインズ』単発だったのに、人気が出て(ドラマ化もしてで)3部作になっちゃったのでした。あひゃあ。ちなみに3作目(タイトルが危ないのでここでは伏せます)が今週にはもう出ます。はやっ。
というわけで、ここから先は『パインズ』を読んだ人だけ読んでね! ちなみに『パインズ』はもうジャンルぐちゃぐちゃのやばい感じの作品で気軽におすすめ出来ないB級アメリカドラマ感のあるNV文庫(意味深)だよ!

さて、『ウェイワード』です。前作の世界観をさらに広げた上で、今度は「監視社会における殺人事件」を取り上げるその発想に脱帽。思ったよりプロットも練られていて、前作ほどの破壊力・導入の魅力はないのですが、それでも結構面白かったです。くそ……こんなくだんない話ごときに……。

作者は最初から3部作にするつもりはなかったそうで、前作で全て完結していたところを、さらにあちこち掘り下げつつ新たな要素を自然に挿入していくことで3部作としての奥行きを作り出しています。全部後付けっぽいんだけど、その練られっぷりがはっきり言って上手いので、なかなかうまくやったじゃねぇかと感心。
ウェイワード・パインズという町の秘密を掘り下げただけでなく、その成立過程、住民の秘密など、人間関係を複雑にしたドラマを作り出しているのです。殺人事件を発端として活用しながらパインズの限界とその先を描こうとしています。

前作からわずか2週間後というタイミングも良いですね。主人公のイーサンがまだ適応しきれていないあたりが。町の秘密を暴いたイーサンが主人公だからこそ展開しうる殺人事件の捜査と町の顛末。とはいえ全部3作目にぶん投げやがったので、そこらへんモヤっとな上になんだこのラストはうぉい。
ちゃぶ台返しくらいのどんでん返し(全く意外ではない)も仕掛けつつ、”衝撃のラスト”(かっこ笑いつき)なので、結局次作が気になってしまいます。いやもうイーサンはバカかと。3作目は阿鼻叫喚じゃないですか、最初から。ただやっぱり『パインズ』のジェットコースターと比べると、こっちはじっくり監視社会ミステリなので、そこらへん落差はあります。あくまで前作を好きな人だけにおすすめです。

というわけでいよいよ『ラスト・タウン』で完結するわけですが……ぶっちゃけいかにもありそうな海外ドラマ以上のものではない説があるので、クラウチさんにはぜひとも頑張っていただきたいなと思うわけです。

書 名:ウェイワード―背反者たち―(2013)
著 者:ブレイク・クラウチ
訳 者:東野さやか
出版社:早川書房
     ハヤカワ文庫NV 1334
出版年:2015.03.15 1刷

評価★★★★☆
パインズ ―美しい地獄―
『パインズ ―美しい地獄―』ブレイク・クラウチ(ハヤカワ文庫NV)

川沿いの芝生で目覚めた男は所持品の大半を失い、自分の名さえ思い出せない。しかも全身がやけに痛む。事故にでも遭ったのか……。やがて病院で記憶を回復し、みずからが捜査官だと思い出した男は、町の保安官や住民に助けを求めた。だが、この美しい町パインズはどこか狂っていた。住民は男が町から出ようとするのを執拗に阻み続け、外部との連絡にも必ず邪魔が入る――絶対予測不能の衝撃のラスト!(本書あらすじより)

現時点で、えー、今年の新刊の裏ベストです。ちゃんとベスト作るなら2位ですね。いやー、やばいっすよこれ。
ネタバレかもだけどあえて言うとミステリでホラーでSFでファンタジーと、とにかく盛り込みまくり。怪しげな町から住民が出させてくれないというのを発端に、猛スピードで話が展開していき異様に面白く、そしてドガンとオチ。うわぁお、なんというB級感。しかしそれがいいんです。

行方不明の捜査官2名(AとB)を探しに一見理想的な田舎町ウェイワード・パインズに来た捜査官バーク。ところが外とは連絡が取れず、町から出ようとすると住民の邪魔が入る。そして彼は変わり果てた(意味深)Aとさらに変わり果てた(超意味深)Bを見つける。この町は何かがおかしい!……というのが前半。
バークはこの町を生きて脱出しようと死に物狂いでサバイバルすることになるわけですが、あまりに展開が目まぐるしいので、彼は(そして読者は)推理したり状況を整理したりする暇がほとんどありません。ひたすら(常識的に言って)(現実的にも)ありえない超展開が続き、どうなるどうなると読者はもうたまらんわけですよ。
そうしてとんでもないところまで話は広がり、まぁもう合理的にこの説明しか無理だろという衝撃オチが畳み掛けられ、そして(何よりやばいことに)前向きに話が終わっちゃうんですよ! こんな話で! やべぇ、バークさんやべぇ。作者の思考回路もすげぇ。中盤のお祭りがいかにもモダンホラーって感じですがこれも頭おかしいし。

正直言ってホラーチックにえぐい場面とかはすごい苦手だったんですが、それでもこれはかなりキてる作品だと思います。ネタバレになってしまうのでこれ以上語れないのがつらいところですが、傑作というかケッ作というか怪作。やるなぁハヤカワNV。こういうジャンル横断的なわけわからん作品を読めるから、海外ミステリというくくりのエンタメは楽しいんです。ゲテモノ・キワモノ好きにぜひおすすめしたいですね。

書 名:パインズ ―美しい地獄― (2012)
著 者:ブレイク・クラウチ
出版社:早川書房
     ハヤカワ文庫NV 1303
出版年:2014.03.15 1刷

評価★★★★★