救いようがない
『救いようがない』リンウッド・バークレイ(ヴィレッジブックス)

家族思いだが極度の心配性のSF作家ザック。近所の少女が殺害されたことから、都会は危険と不平たらたらの妻子を連れて郊外に移り住んだが、そこで今度は死体を発見。さらに気のいい隣人にもじつは裏の顔が……。郊外も物騒に思えてきた矢先、家族の不用心さを戒めようと、よかれと起こした行動で、なぜか命まで狙われだして――。とんだお騒がせ男が巻き起こす痛快ミステリー!(本書あらすじより)

『失踪家族』とかの作者です、ということで全く読む気にならないつらめのサスペンスかと思っていたんですが、とある人が「これは『ホット・ファズ』っぽいブラックユーモアだ」とおっしゃっていたので俄然読む気に。読みましたよ。
で、これ、全然話題になっていないのでちょっと強めに言っておきますが、今年の新刊の中ではかなり好きな部類です。はっきりいってかーなーりーおすすめです。
冒頭から張っていく見事な伏線といい、ドジ踏みまくって事件に巻き込まれるんだけど途中からいいぞもっとドジれと言いたくなるようなドタバタ展開といい、語り口のユーモラスさといい、すかっとする終盤の畳み掛けといい、非常に良いです。素晴らしい。この手の健全でブラックなユーモアミステリの紹介が近年では少ない気がするんだよなぁ。

救いようがないドジでマヌケな心配性主人公が、やることなすこと裏目に出て何やら陰謀めいたものに巻き込まれて命を狙われる、というお話。いちおう家族のために行動しているんですけどね。巻き込まれサスペンスって見ていられないので基本苦手なんですが、こうもうまいことドジを重ねて巻き込まれていくと、なんかもうあれです、一周回って楽しいかも。
そして上質なコメディ映画のごとく、冒頭からあらゆることに伏線を張り、それらをきっちりと回収しながら話を収束させていく手腕も見事。登場した要素が全部リサイクルされたんじゃないのこれ。ここまでエコだと予想は付いちゃうんだけど、それでもむちゃ楽しいです。そうやコメディ映画ってやたらと伏線芸細かい気がするんですけど、なんででしょう。

家族思いなんだけど心配性すぎるせいで家族にやや疎んじられている(でも奥さんとは本当はラブラブ)主人公ザックが、妻とか息子とか娘とかとの関係を(ハッピーエンドに向けて)変化させていくのも楽しいですね。こういうちょっとしたドラマの使い方が上手いですよねぇ(そしてそれも伏線)。

で、『ホット・ファズ』っぽいと言いましたが、あの映画見てる人がここの読者にどれだけいるのか自身ないですが、善良そうな隣人は実は裏の顔が……みたいな展開です、要するに。ってか実は、っていうか明らかにこいつらおかしくね?感が序盤から醸し出されてるんですが、お人好しでドジ男のザックは全く気付かないんですよね……さすが主人公だ……。
だんだんと隣人の裏の顔が明かされる中、なんだかんだあって悪い連中とザックが対決していくのもダサヒーロー物っぽいというかまぁ王道で気持ちがいいです。隣人たちが主人公のバックアップをしていくあたりとかほんと楽しいじゃないですか。

最後のオチに至るまで中盤以降めちゃのめりこみました。このザックのシリーズ、すでに4作出てるらしいので早く続編も出してくださいお願いします。うーん、久々にいいもの読んだねぇ。

書 名:救いようがない(2004)
著 者:リンウッド・バークレイ
出版社:ヴィレッジブックス
     ヴィレッジブックス F-ハ19-3
出版年:2014.03.20 初版

評価★★★★★
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