ブロの二重の死
『ブロの二重の死』クロード・アヴリーヌ(創元推理文庫)

シモンがわたしに語ってくれた事件、これほど驚くべき事件が今まであっただろうか? パリ警視庁きっての凄腕探偵フレデリック・ブロが上司との約束の時間になっても現われない。異例の事態にブロ家を訪ねてみたシモンは、彼が銃弾を受けて死にかけているのを発見した! 茫然とした彼は、二度目の衝撃を受ける。部屋を仕切るカーテンの下からのぞく死人の手を見たのだ。そしてその死人は、またしてもフレデリック・ブロだったのだ! クロード・アヴリーヌの傑作。巻末に推理小説全般と自らの推理連作に関する著者自身による二重のノートを併録。(本書あらすじより)

フランスミステリ固め読み継続中。
さて、アヴリーヌの代表作……というか、アヴリーヌって『ブロの二重の死』と『U路線の定期乗客』と、あとジュヴナイルとかちくま文庫しか訳されていないんですが。この作品は一応ブロシリーズの一冊目ということになります。ブロ死んじゃうんですけどね。評判がよかったので、生きている間のブロの活躍を描いたミステリをその後数冊発表したということです。くわしくは、Aga-searchさんのサイトをご覧ください。

さて、とにかく、フランスの中でもかなり本格寄りの作家さんです。もともと純文畑の人でしたが、ミステリも好きだったようで、いっちょ俺もやってみるか、と、バカにされていた推理小説を擁護する立場で、一冊だけのつもりで書き始めたようです。
個人的には、非常に評価するのが難しい作品。魅力的な謎、意外な展開とどんでん返し、さらにシムノンっぽい人間観察。とこじんまりと良く出来たミステリなんですが、うーん、何か物足りません。これ、仏ミスじゃなくて、英ミスとかだったらもっと褒めてた気がするんですが、なんでしょうね。

名探偵として有名な捜査官ブロの家で、死体のブロと、死にかけのブロが発見されます。どちらが本物か?というのがストーリーの冒頭部分。このそっくりさんは誰か? 二人がお互いを撃ったのか? とかなり魅力的な謎をぶつけてきます。そしてそこからノンストップで意外な展開の連続。すごく面白そうでしょ、面白いんですよ。
さらにブロの家にある仕掛けがあることが中盤には発覚し(まさかの館もの)、二人のブロについての驚きの事実も明かされ、とにかく色々と盛り込んできます。だから読んでいて続きが気になるんですよねー。いったい事件はどう起こったのか?……と期待が高まるだけに、結末のありふれ感が、こう、肩すかしで……。
中盤までの盛り上がりと比べて超平凡。すげぇメグレ警視にありそうな感じです。確かにこの動機とかはこの二人のブロ事件だからこそ起きえたものだと言えるのですが、それにしてもこれは良くも悪くもなさすぎです。プロットをうまくしっかり組み過ぎたんですかねー。もっとラストに詰め込んだ方がよかったのかもしれません。全体的には、面白かったけど、あと少し、という感じ。

ちなみに『ブロの二重の死』は薄めの本ですが、実は巻末に文学者がミステリごときを書きやがってという批判に対する反論的なノートが結構あるので、実際はもっと薄いのです。ということを知らずに読むと、残りページ数的にもう一回どんでん返しがあるはずだ、とかそういう余計な期待をすることになるので注意しましょう。
なおそのノートですが、作者の推理小説論などで、1960年代くらいまでのフランスミステリ界隈の様子と、ピエール・ボストが読者が犯人物のミステリを1930年代に書きたがっていたこと、などが面白かったですね。おおむね文章がお固くてつまらないんですが。

書 名:ブロの二重の死(1932)
著 者:クロード・アヴリーヌ
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 168-2
出版年:1983.06.24 初版

評価★★★★☆
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