おれは暗黒小説だ
『おれは暗黒小説だ』A・D・G(ハヤカワ・ミステリ)

クリスマスの暁に豪壮な邸宅に招待され、見ず知らずの老主人から妻に子種を授けてくれと頼まれたら、誰だって夢かと思う。ましてやその妻が自分の女房だったら尚更だ。だがそれが暗黒小説作家ジェローム・ロッセの身にふりかかった現実だった……。
翌朝巨大なゴミ捨て場で目覚めた彼は自分が無一文のまま叩き出されたことを知った。居合わせた二人の乞食に高価なキッドの靴を二束三文で売って金をつくると、早速彼の版元のフィリップに助けを求めた。街路沿いのレストランで熱いコーヒーを飲み人心地のついたロッセは、靴を取り戻そうとゴミ捨て場に引き返した。そしてこめかみに鉤棒を打ちこまれた乞食たちを見た。
酔いどれ作家の周囲で不気味な陰謀の歯車が回転しはじめた。(かなり中略)濡れ衣を晴らすため、自ら暗黒小説の主人公となって戦う酔いどれ作家。〈セリ・ノワール〉の若き狼たちを代表する新人覆面作家が、俗語と暴力描写を武器に描く、痛快無比のフレンチ・ハードボイルド問題作!(本書あらすじより)

フランスミステリ固め読み中。相変わらずポケミスのあらすじは長い……打つ方が疲れちゃうわ……。
A・D・G(アデジェ)の代表作。たぶん、飲んだくれ主人公の一人称による巻き込まれサスペンス、と言えば間違っていないはず。しかし主人公含め全員行動がキテレツでおまけに訳文のべらんめえ口調が強烈なので、読んでいて非常に、こう、”変”なのです、おもいっきり。後半の異様な面白さとか何なんですかこれは。クセのある個性的なポケミスだなぁという感じです。

途中までのあらすじは上に書いた通り(裏表紙のあらすじを全部書くと話の7割くらいまでばらしちゃうので中略しました)。読めば分かると思いますが、すでに展開の意味が分かりません。
主人公は小説家で、それもあってかまずハードボイルドパロディっぽい雰囲気を感じます。だから展開が私立探偵小説っぽくなく、むしろ積極的に予定調和を乱しているんですね。中盤からキチガイじみたやばい奴(出会いがしらに相手の耳をちょん切ってそれを集めるような常に刃物を振りかざしている危ない人で、妹がさらにまた変)がが主人公サイドの味方に入って、さらにさらにやばいことになります。っていうかこの主人公もどう考えてもバカでしょ、どんだけ行き会ったりばったりなんですか。
おまけに語り口がべらんめぇでふざけきってて、こう、あまりにかっこよくないんです。ほとんど訳のせいだと思うんですが(訳者の岡村孝一さんは訳が個性的なことで有名ですけど確かにこれはすごい)。主人公の何とかしようという感じがマジで伝わってきません。飲んだくれがうーだうだ語りながらテケトーに行動しているという印象がさらに強まります。いやまぁ実際そうなんですけど。

だから余計に、ラスト主人公が理路整然と推理を語りだすから違和感半端ないですよね……ロジカルに矛盾とか指摘してるし……。このギャップも面白味のひとつ。そしてここで綺麗に終わりそうなものなのに、やっぱり最後はキチガイにノワールって終わっちゃうのです。いやはや頭おかしいです、この展開。
というわけでグダグダしているようで、終盤のハイスピード感とか結構のってしまって、全体的にはなかなか面白かったです。こういう変な作品はもはや21世紀には生まれるわけがないですからね、大事にしたいところです。同作家の『病める巨犬たちの夜』もそろそろゲットしたいな……レア本だからね……。

書 名:おれは暗黒小説だ(1974)
著 者:
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1324
出版年:1979.03.15 1刷

評価★★★★☆
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