パイは小さな秘密を運ぶ
『パイは小さな秘密を運ぶ』アラン・ブラッドリー(創元推理文庫)

11歳のあたしは、イギリスの片田舎で、化学実験に熱中する日々をすごしてる。ある日、何者かがコシギの死体をキッチンの戸口に置いていき、父が尋常ではない恐れを見せた。そして翌日の早朝、あたしは畑で赤毛の男の死に立ち会ってしまう。男は前日の晩に、父と書斎で口論していた相手だった……。活溌な少女の活躍を温かくのびやかな筆致で描く、CWAデビュー・ダガー受賞作。(本書あらすじより)

月イチで開催している現代海外ミステリ読書会第3回の課題本。ミネット・ウォルターズ、トマス・H・クックと重めが続いたので、ちょっと軽いのでも読もうかと。
11歳という年齢設定にしてはどう考えてもおしゃますぎる化学大好き女の子(何しろ家の中にスーパーな実験施設まである)フレーヴィアが、極めてストイックに殺人事件を捜査するというお話。警察によって容疑者にされた父親のことすら、中盤まで犯人とマジで疑うその科学者っぷりに惚れます。フレーヴィアの冒険が楽しい変わり種少女探偵ものといった感じでしょうか。

まずは、いかにも英国らしい(作者はカナダ人ですが舞台はイギリスだし)ユーモラスな文章がフレーヴィアの語りにぴったりなのです。何しろ彼女は平気で姉に毒物を盛るようなやばい子ですからね。相棒のちゃりんこにまたがり今日も聞き込みを行うのです。時にははめをはずして犯人に拉致もされちゃうぜ! いいぞ予定調和! ざ・少女探偵!
周りを固める登場人物もあんまり出しゃばってはいないけど個性的で面白いです。庭師ドガーのあのセリフとかね! 警部補もいいよね! 終盤いきなり出て来たあの名探偵さんもね! そして何より、ラストに出てくる裏主人公がきれっきれです、これはナイス。 こういう洒落たユーモア古き良きコージーみたいの大好きです。イギリスで三人姉妹で片親しかいなくて警部補が出てきて、ってなんだっけと思ったらあれです、クレイグ・ライスの大傑作『スイート・ホーム殺人事件』。あの手のが好きな人ならはまるはず。

推理は後出しじゃんけんも甚だしいのでロジカルさは期待できませんが(これでもシリーズ中では良い方らしいので要するに推理に期待してはいけないってことですな)、これは少女探偵の冒険を描く小説だからいいんです。1950年の英国の雰囲気と合わせて終始楽しく読めたので、満足。次作もいつか読んでみたいところ。
ちなみに作者のブラッドリーさんはイギリスに足を運んだことがなく、この作品がCWAとって授賞式のために初めてイギリス行ったらしいです。うーん、どうりで理想郷的なイギリスの片田舎なわけです。

書 名:パイは小さな秘密を運ぶ(2009)
著 者:アラン・ブラッドリー
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mフ-21-1
出版年:2009.11.27 初版

評価★★★★☆
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