最後の紙面
『最後の紙面』トム・ラックマン(日経文芸文庫)

米国人富豪がローマに設立し、50年後、経営不振で廃刊・閉鎖が決まった小さな英字新聞社。スタッフたちのほろ苦く、おかしく、切なく、ときに痛い生き様を通じて、人間の不完全さ、愛すべき姿を描き出す連作短編集。全米の話題をさらった気鋭新人作家のデビュー作。 (本書あらすじより)

イタリアの国際新聞社を主役に、短めの各章で、新聞社と関係のある人間の一コマがそれぞれ語られていく連作短編集。どの章も切なくてやりきれない人生の悲哀がシンプルに語られていくのですが、これがめちゃ上手いのです。おまけに連作短編集としての紡ぎだしていく構成も完璧。今年の新刊の当たり組ですね。……まぁミステリじゃないけど。

もちろん、ヒューマンな側面は素晴らしいです。訃報記者というポジションの低い位置にいる記者の話、新聞社に対して常に不満を抱いている校正係、さらには何十年分も新聞をため込んでいる老婦人など、どのエピソードも実に鮮やか。どれもちょっとだけ悲哀を感じさせるのですが、そのバランスが強すぎず絶妙です。
ただ、それだけじゃこんな高評価にはならないと思うんですよ。この小説の真の主人公は新聞社なのです。新聞社の成り立ちから始まるその人生が、少しずつ語られ、そして最終章へと至るんですが……この酷すぎる最後がなんだかふさわしく思えてしまうのはなぜなんでしょうね。

文体もキレッキレで、無駄な装飾がなく、言葉少なに、それでも饒舌に人間を描写していきます(先日お亡くなりになった東江一紀さんによる翻訳も非常に良いです)。この簡潔さは新聞っぽいのかもしれません。どうしようもない数々の物語が愛おしくってたまらないんですよ。この小説には、このよくある、登場人物のその後を順に紹介していくというエピローグの形式が一番合っているんじゃないでしょうか。
あと個人的な好みとして、登場人物が章をまたいでいくという、まぁよくある連作短編集の形式も、最後までぶれなくてすごく好き。よくある形式なんですが、なかなか上手くやっている作品に当たらないんですよね。デビュー作ということですが、この人ははっきり言って”うまい”作家さんだと思います。

というわけで、良かったですよ。地味ですが、こういう作品をしっかり需要できる人間になりたいものです。これこのミスに投票できないのがもったいないですね……面白いのに……。

書 名:最後の紙面(2010)
著 者:トム・ラックマン
出版社:日本経済新聞出版社
     日経文芸文庫 ラ-1-1
出版年:2014.03.05 1刷

評価★★★★☆
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