グルーム
『グルーム』ジャン・ヴォートラン(文春文庫)

ハイムには自分だけの「世界」があった。歪んだ性と暴力の気配に満ちた世界が。社会に適応できず、母親と2人、ひきこもるように暮らすハイムの病んだ妄想。それがやがて現実を侵し、おぞましい事件を引き起こす……孤独な青年の狂気が爆発するさまを、ノワールの鬼才がひえびえとした筆致で描いた、戦慄必至の傑作暗黒小説。(本書あらすじより)

ブログに迷惑コメントがついてました。困ったもんですね……そもそもこのブログにその手のコメントがあったところで何の意味もない気もしますけど。

さて、月イチフランスミステリ、今回はがっつりノワールです。やっぱり意味不明な登場人物しか出て来ないフランスミステリは、ストーリーとか置いておいても変人キャラだけで読ませるから面白いですね……。
引きこもり童貞の妄想が現実とごっちゃになり、突然狂気が暴走し、ノワる、という、なんだか分かんないけど激ヤバな感じに満ち溢れた小説でした。奇人変人が入り乱れ理不尽に人が死ぬのです(いいぞ)。章が短いのでテンポ良く狂っており、妙に引き込まれてしまいます。中盤ちょっとだれましたが、後半盛り返しましたし、うん、面白かったですね。

明らかに頭のおかしい男、ハイムが、自分の世界に引きこもりつつ、色々とやる、というのがメインストーリーです。読み進めるとどうも時系列が複雑だなと思いきや、多分に妄想が含まれていて、いったいどこまでが現実なのかよく分からないのです。次第にハイムのどこまでが妄想なのかが分かっていき、それとともに妄想が現実を侵食し始めていきます。妄想の暴走で人が死ぬのです。理不尽でノワール。おまけにハイムさん抜け目無いときました。
ハイムだけでなく、登場人物全員がずれててひねくれてておかしいんですよね。ざ・フランスって感じです。ハイムを追う刑事すらどこかマトモじゃなく、ハイムの暴走による被害者の家族もかわいそうなのにコミカル。このキャラクターで特に中盤は話を引っ張ってる気がします(ガソリンスタンドが燃えるシーンとかめっちゃ好き)。

という妙に迫力のある文章とキャラで、作者はこの世界のクソっぷりを高らかに描くのですよ。ひねくれているようでこの狂気とストーリーは極めてストレートで、そのままラストに突っ込みます。ちょっと厚いけど読んでいる間異様なテンションでしたし、これは良い作品です。他のヴォートランは引き続き捜索中……『パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない』とか読みたいんですよ、えぇもう。

書 名:グルーム(1980)
著 者:ジャン・ヴォートラン
出版社:文藝春秋
     文春文庫 ウ-14-1
出版年:2002.01.10 1刷

評価★★★★☆
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