養鶏場の殺人/火口箱
『養鶏場の殺人/火口箱』ミネット・ウォルターズ(創元推理文庫)

1920年冬、エルシーは教会で純朴な青年に声をかけた。恋人となった彼が4年後に彼女を切り刻むなどと、だれに予想できただろう──。英国で実際に起きた殺人事件をもとにした「養鶏場の殺人」と、強盗殺害事件を通して、小さなコミュニティーにおける偏見がいかにして悲惨な出来事を招いたかを描く「火口箱」を収録。現代英国ミステリの女王が実力を遺憾なく発揮した傑作中編集。(本書あらすじより)

初ウォルターズです。いえね、ウォルターズはあの『遮断地区』ですら30ページでやめちゃったほどなのでもう手に取ることはないんじゃないかと思っていたんですが、5月からサークルで「現代海外ミステリ読書会」なるものをおっぱじめてしまって、その第一回に最近やたらと評判のよかったこれを選んでしまったので、読んでしまったのです。中編集だから読みやすそうだし。おまけに16行という驚異の文字の少なさだし。

というわけで読んでみましたよ。「養鶏場の殺人」は、実際にあった事件をウォルターズが再解釈して小説に仕立てたもの。「火口箱」は、狭いコミュニティ内で排除されるアイリッシュ一家を中心にしたどんでん返し物です。
まぁね、面白かったですが、なぜここまで賞賛の嵐なのかはちょっとよく分かんなかったですね……人間模様を描くのがうまい作家さんだとは思いますが。

評判が良いのは「火口箱」の方でして、自分もこれで読書会をやったんですが、なるほど良く出来ている作品です。無残な老婆殺人事件が起こり、村のアイリッシュの若者が疑われます。同じくアイリッシュではあるものの、中流以上に属している女性シヴォーンは、事件について調べていきますが、やがて自分の見方がいかに部分的であるかが明らかになっていき、どんでん返しが連発する……というもの。再読した時の方が面白かったです。人間の偏見というものを上手く用いた作品と言えるでしょうね。ただ、すごいことはすごいけど、やっぱりこういう誰か登場人物の一人の正体を明かすことでどんでん返しを作る作品はあまり好きではないな……と思ったり思わなかったり。

一方、「養鶏場の殺人」は、破滅(殺人)に向けて突き進んでいくとあるカップルを描いた物語。実話で、最後にウォルターズが「こうこうこういうことだったのではないか」なんて書いています。こちらの方がミステリ的な意外性には欠けるものの、人間心理の奥深さというか、闇というか、身勝手さが、悲劇を引き起こす、という様をまざまざと描いており、迫力がありました。少ない登場人物を駆使してよくもまぁここまで書けるものだなと。最後の留置場の場面の雰囲気とか好きです。

というわけで、結局なんでこんなに高評価なんでしょう……いや面白いけど。

書 名:養鶏場の殺人/火口箱(2006.1999)
著 者:ミネット・ウォルターズ
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 Mウ-9-11
出版年:2014.03.14 初版

評価★★★★☆
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