あなたに不利な証拠として
『あなたに不利な証拠として』ローリー・リン・ドラモンド(ハヤカワ・ミステリ)

警官志望のキャシーが助けを求める女性のもとに赴いた時、その胸にはナイフが突き刺さっていた。彼女はレイプ未遂犯の仕業だと主張するが、刑事は彼女の自作自演と断定した。だが6年後、事件は新たな展開を見せる。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞を受賞した「傷痕」をはじめ、一人の男を射殺した巡査の苦悩を切々と描く「完全」など、5人の女性警官を主人公にした魂を揺さぶる10篇を収録。大反響を呼んだ傑作集。 (文庫版あらすじより)

あらゆるブックオフにこのポケミスがあることから言ってもいかにこいつが売れたかが分かるってもんです。
連作短編集です。目次を見れば分かりますが、短編ごとに主人公が異なり、10編計5人の女性警察官が主人公となります。そうして、女性警察官の生き様を色々な角度から描いているわけです。
作者が警察官だった経験を活かして書いているので基本的にリアルな話が多いのですが、最後の方の話だけ少し非現実的な趣がある短編が登場します。そんでもってこちらの方が面白いんですよね……ただ、特に飛びぬけた何かを感じることなく読み終わってしまった、というのが正直なところ。

女性警官特有の(?)心情やなんかを毎話うまく取り込んでおり、それぞれ妙に読後感の重い短編となっています。被害者との向き合い方、夫を警察官に持つこと、銃の扱い、とかそういう。どれもそれなりに面白いんですが、ただ全然読んでいて残らないんです。伝えようとする熱意は感じるんですが、作家としての力量が足りていないのかもしれないとちょっと思いました。
ラスト2話だけ非常にフィクションっぽい物語で、警官が集まって死者を弔ったり、主人公から現実から逃走したりとストーリーが面白いし読ませます。ただそうなると、そこまでで読まされたリアルなものがありきたりすぎるように思えてしまって。個人的には警官とかとりあえずおいておいて、ドラモンドさんの一から作った創作を読んでみたいかなと思いました(第2作のタイトルまで巻末解説では書かれていますが、本国でも刊行されていません、どうしたんでしょう)。

個人的には全体的に少々魅力に欠ける短編集でしたが、例えば女性が読むのと男性が読むのではまた感じ方が違ったりとかするかもしれませんし、まぁあれだけ売れたからには何かはあるんだと思うですけどね(適当な感想)。
ところで、この突き放した簡潔で読みやすい文体とか、雰囲気とか、最終話で異国行っちゃうとことか、めちゃくちゃ売れたところとか、いろいろとシーラッハ『犯罪』とダブって見えますが、このへんから海外小説の国内でのヒット条件が見えたりしませんかね、しませんね。

書 名:あなたに不利な証拠として(2004)
著 者:ローリー・リン・ドラモンド
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1783
出版年:2006.02.15 初版
     2006.04.20 5版

評価★★★☆☆
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