シャドー81
『シャドー81』ルシアン・ネイハム(新潮文庫)

ロサンゼルスからハワイに向かう747ジャンボ旅客機が無線で驚くべき通告を受けた。たった今、この旅客機が乗っ取られたというのだ。犯人は最新鋭戦闘爆撃機のパイロット。だがその機は旅客機の死角に入り、決して姿を見せなかった。犯人は二百余名の人命と引き換えに巨額の金塊を要求、地上にいる仲間と連携し、政府や軍、FBIを翻弄する。斬新な犯人像と、周到にして大胆な計画―冒険小説に新たな地平を切り拓いた名作。(本書あらすじより)

えーさて、新潮文庫ミステリチャレンジ第六弾です……ま、またまた更新が遅れてもうしわけないですね……いったい俺は何ヶ月前に読んだ本の感想をまとめているんだ……。
序盤がだらだら、中盤は怒涛の冒険小説(いいぞハイジャック、ユーモアもナイス)、終盤にちょっとしたサプライズとだらだら。うぅん、面白いんですが、両手を上げて褒めたくなるような話ではなかったかなぁ、という感じです。

まず、冒険小説としての面白みは十分でしょう。戦闘機によるハイジャックというアイデアがまず良いし、これにより引き起こされる数々の騒動も取材が行き届いていて描写が上手く読ませます。銀行強盗をする警官とか、水陸両用機を渡さないで代わりにバカ高い飛行機を要求する男とかで笑いを持って来るのも楽しいですね。
また、ハイジャックの計画、どう脅しどう奪いどう逃げるか、という部分に関してはとにかく感心させられっぱなしでした。プロ対プロに徹したミスのない展開も好み。終盤で明かされるある事実も結構驚きで、なるほどうまいことやるなぁと。読んでいてワクワクするこの楽しさはなかなかのものです。

……とこう書くと褒めてるだけみたいなんですが、ハイジャックまでとハイジャック後があーんまり楽しくないんですよ。だいたいはベトナム戦争描写なんですが、もうはっきり言ってどうでもいいんですよベトナム戦争とかこっちにとっては。地味だし。話の要素としては大事なんですが、作者が、ストーリーを作るのはうまくても、心情とか葛藤とかを書くことについてはステレオタイプ的なところを脱せられていないせいで、読ませる力に欠けているのかなぁと思います。こういう人の作品は2作目を読んでいろいろ考えたくなるんですが、これ1作しかないので仕方ありません。ただまぁ、東西ミステリーの順位は個人的にはちょっと高すぎかなとは思います。

ちなみに、なぜネイハムが2作目を書かなかったのか、というか『シャドー81』がアメリカでは売れなかったのか、という疑問ですが、自分は勝手に『鷲は舞い降りた』が本作と同年にイギリスで(さらには同年中にアメリカでも)発売され、爆発的大ヒットとなってしまい、埋もれてしまったのでは……と推察したのですが、どうでしょうね。単にネイハムさんがネタ切れになっただけかもしれませんが。

というわけで、新潮文庫ミステリチャレンジ、これにて終了です。初ブラッドン、初ハリス、初フリーマントル、初アーチャー、初バゼル、初ネイハムでした。この中だとフリーマントル『消されかけた男』が1位、ブラッドン『ウィンブルドン』が2位でしょうか。『ウィンブルドン』が絶版なのはもったいないですね……。

書 名:シャドー81(1975)
著 者:ルシアン・ネイハム
出版社:新潮社
    新潮文庫 ネ-1-1
出版年:1977.04.30 1刷
    1991.09.25 26刷

評価★★★★☆
スポンサーサイト