甦える旋律
『甦える旋律』フレデリック・ダール(文春文庫)

ヴァイオリンを胸に抱いて、ぼくの車に身を投げた女……その衝撃で過去の記憶をなくした彼女にぼくは恋をし、彼女の記憶が甦えるために色々なことを試みた。だが彼女の過去の断片が判ったとき、それは恐ろしい話だった。二人は逃げる。誰から? どこへ? ――フランス推理小説大賞を受賞した長編ラブ・サスペンス。(本書あらすじより)

読み始めて数ページでいきなり「甦った」ってことばが出て来て思わずぶん殴りたくなりましたよ。いやそこは「甦えった」でしょうが。このタイトル、一発変換できなくてめちゃくちゃめんどくさいんだから。
さてさて、フレデリック・ダールです。フランスミステリ界では(邦訳数的に)なかなかの大物。文春文庫や河出文庫や単行本数冊があります。非常に評判のよろしい『絶体絶命』はどこか復刊してくれるとこはないんでしょうか……。
記憶を失くした女(当然のように美人)と出会った男が、彼女の過去を調べていく中で衝撃の事実に辿り着き……というラブ・サスペンス。これまたザ・フランスミステリなお話。感情豊かな文章がわずか200ページの話を盛り上げます。でもちょっと物足りなかったかな、と感じました。

記憶を失くした女との情熱的かつ悲劇的な逃避行が破滅的なラストを迎える……というストーリーはわりとストレートで、だんだん記憶を女が取り戻してうぉぉぁぁぁぁってなるのもまた王道。ダールの文章は基本的にロマンチックで、これがサスペンスのいい味付けになっています。200ページしかないし本当に小品。
でも後半から狂気を交えていくのがちょっと急で、何となくストーリーに追いつけないんですよね。2人の関係もあっさり情熱的に(舞台はスペインだからね)描くのがいいのかもしれないんですが、やや物足りないし。個人的には惜しい作品でしたが、他のも読みたくなりました。

しかしこれでフランス推理小説大賞ですか……相変わらずよく分からん賞ですね……。あ、それと、最後の箱云々が何だか思い当たることがなかったんですが(どこかに出て来ましたっけ)、これ何のことだか分かる人、こっそりコメントで教えて下さい。

書 名:甦える旋律(1956)
著 者:フレデリック・ダール
出版社:文藝春秋
    文春文庫 233-1
出版年:1980.01.25 1刷

評価★★★☆☆
スポンサーサイト