羊たちの沈黙
『羊たちの沈黙』トマス・ハリス(新潮文庫)

FBIアカデミイの訓練生スターリングは、9人の患者を殺害して収監されている精神科医レクター博士から〈バッファロゥ・ビル事件〉に関する示唆を与えられた。バッファロゥ・ビルとは、これまでに5人の若い女性を殺して皮膚を剥ぎ取った犯人のあだ名である。「こんどは頭皮を剥ぐだろう」レクター博士はそう予言した……。不気味な連続殺人事件を追う出色のハード・サスペンス。(本書あらすじより)

しばらくブログほったらかしですみませんでした。一週間ちょっと中国に行っていたんですが、まー広い国ですね、やっぱり。中国語版の『しあわせの書』なんかを買ったりもしたんですが、そのへんの話はおいおい。

さて、新潮文庫ミステリチャレンジ第二弾、『羊たちの沈黙』です。映画が有名な。獄中の天才レクター博士とスターリング捜査官の知恵比べ……という趣に新鮮味のあった前半がとにかく面白かったかなと。レクター博士を作り出した作者は偉大です。一方、後半は普通のサイコスリラーっぽくなっちゃってレクター博士を生かせず、ちょっともったいなかったかなと思います。

読む前はてっきりレクター博士が推理するのかと思っていたんですが、世を騒がせている連続猟奇殺人犯の正体を博士はもう知っていて、スターリング捜査官が彼の出すヒントを懸命に追う……という話だったんですね。この二人の騙し合い、探り合い、つかず離れずの微妙な一体感が楽しいんです。お互いを利用しつつ、友情とは違う何かが生まれる両者の絶妙な関係を描いていくのがうまいんですよ。謎解きというよりは知恵比べ。頭のいい人たちが主役の本の安心感って好きです。
と、ここまでが前半。途中のトリッキーな展開はすごいんですが(あれにはびっくりしました)、そのあとはタイムリミット付き猟奇殺人犯捜索という、(今だと)ありがちな展開になっちゃうので、どうしても前半との落差を感じてしまいます。面白いんですけどね。作者の書き方がわりとあっさりしてるせいもあるのかな。

そんなわけで、全体としてはまぁまぁくらいだったんですが、一読の価値ある作品なのはたしかでしょう。なんかやたらと名作感にあふれていますし(笑) この作品以外でのレクター博士も気になるし、『ブラック・サンデー』もおすすめされたので、ハリスは今後も読むと思います。
ちなみにこの作品で、『東西ミステリーベスト100』のトップ10を制覇しました。ベスト100制覇はいつになることやら。

書 名:羊たちの沈黙(1988)
著 者:トマス・ハリス
出版社:新潮社
    新潮文庫 ハ-8-2
出版年:1989.09.25 1刷
    2000.06.30 49刷

評価★★★★☆
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