冷戦交換ゲーム
『冷戦交換ゲーム』ロス・トーマス(ハヤカワ・ミステリ)

退役軍人マックがボン郊外で経営するバー〈マックの店〉に突如闖入した覆面の二人は、客に銃弾を撃ち込み逃走した。マックの共同経営者で、実はアメリカのスパイでもあるパディロにかかわる出来事らしい。その裏には、重大なスキャンダルになりうる亡命事件が絡んでいた。真相を知らぬまま陰謀に巻き込まれたマックは、危険なゲームの渦中に……冷戦のさなか、緊張みなぎる東西ドイツに展開する白熱のスパイ・サスペンス!のちに犯罪小説の巨匠として絶大なる人気を得た著者が、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞に輝いた伝説のデビュー作。(本書あらすじより)

ロス・マクドナルドをロスマクと略すんだったら、ロス・トーマスはロスマスと略すんでしょうか。そんなわけないですね。というわけで初ロスマスです。
東西冷戦のさなか、諜報員として東ベルリンに潜入した友人のパディロを助けるため、ごくごく一般人(のくせに度胸座ってんなこいつ)のマックが西ベルリンから東ベルリンへと入り、二人で脱出を図ろうとするが……というのが大雑把な話でしょうか。単なる東西対立ではなく、複数の思惑が複雑に入り乱れた様を描いた、言わずと知れたスパイ小説の代表作ですね。
なんですけど、なぜこれがここまで評価されているのかがよく分からなかったというのが正直なところでしょうか。

確かに、まさに東と西が火花を散らす中、東側とベルリンの壁とさらにはアメリカ本国まで相手にして繰り広げられるスパイ・サスペンスは面白いです。短い話ながらよく練られており、少ない登場人物それぞれがキーキャラという感じで、丹念にプロットも作りこまれています。
ただ、まずこの文体にいまいち馴染めませんでした。極力感情表現を削ぎ落とした一人称文体で、これをカッコイイと見る人がいるだろうことは十分理解できるんですが、自分にはちょっと感情移入を妨げるものだったかなと思います。パディロとマックの両主人公にそこまで肩入れできないまま終わってしまいました。
また、ラストの大ボスというか、あの登場にもう少し伏線が欲しかったかなというのもあります。登場してからはいいんですよ、スピーディーなバトル展開から始まる怒涛のオチまで、マックの行動を追っているだけでもめちゃくちゃ楽しいです。アメリカ相手に啖呵を切るところとか、ホモの暗号解読者との関係の微妙な変化とかね、良いですよ。でもやっぱりあそこは急すぎるというか、事前の説明がやや欲しいところではありました。

というわけで、そこそこ楽しめましたが、それ以上ではありませんでしたね……。ロス・トーマスは非常に評価が高い作家ですので、まぁ『女刑事の死』以下いろいろ読んでみたいなとは思っているのですが。せっかく『クラシックな殺し屋たち』も持っているし。

書 名:冷戦交換ゲーム(1966)
著 者:ロス・トーマス
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ 1044
出版年:1968.7.15 初版
    1985.12.15 2版

評価★★★☆☆
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