盃のなかのトカゲ
『盃のなかのトカゲ』ピーター・ディキンスン(ハヤカワ・ミステリ)

ギリシャ南西岸沖、イオニア海に浮かぶ島、ヒオス。次第に忘れられていく古代の僧院と、不気味な毒トカゲの伝説が残る島。まばゆい陽光と美しい海に、ひとときの安らぎを求めて訪れる旅行者も少なくない。あるいはホテルで、あるいは別荘で短い休暇を楽しみ、去っていく。しかし、島一番の豪華な別荘では、大富豪タナトスに危険な影が伸びはじめていた……。
タナトスは、巨大な財力を権力で世界各地の実業界に君臨していたが、その強引さは多くの敵を作っていた。そして今度は、こともあろうに、西インド諸島のマフィアの利権を横取りしたのだ。組織の復讐は当然考えられる。富豪が信頼する四人の部下がヒオスに集められた。それに、専門家として、ロンドン警視庁の元警視ジェイムズ・ピブルが付け加えられた。五人の、マフィア対策の机上演習は、愛人トニーとたわむれるタナトスとは逆に、鋭い緊張感の中で始まった。正面からの襲撃か、あるいは姿を変えた刺客が忍び寄ってくるのか、それとも内通者が……? 島への上陸はすべてチェックされ、アメリカへはプロのボディーガードが要請された。が、ピブルの心を離れない危険の予感にもかかわらず、見えない敵は容易に姿を現わさなかった……。
二年連続CWA賞に輝く、イギリス・ミステリの実力派ディキンスン。ピブル警視シリーズ第五弾!(本書あらすじより)

マケプレオーバー2000月間、6冊目は、ポケミスから出ている全てがレア本のピブル警視シリーズです。初ピブル警視だったのですが(初でシリーズ終盤の作品読むのもどうかとも思うけど)……あ、合わない、絶望的に合わない……『生ける屍』レベルで楽しめなかった……。
単純に退屈だし、描写とか色々本当に読んでいて楽しくないのです。ラストも何なんだあれは。

事件自体はそこまで変ではありません。舞台はギリシアの島。金持ちがマフィアに狙われてるかも!となり、警察をやめ私立探偵となっていたピブルにその護衛の任務が依頼されます。小さな島の中で、麻薬だとかギリシア正教会の修道院だとか謎の過去を持つ女(ピブル含め登場人物軒並みに惚れられている)だとか、様々な要素が入り乱れる事態へと発展していくのです。

色々なサブプロットの合わせ方と騙し方とかは悪くはないっていうか、むしろ上手いとは思うのです。でも、正直目が滑るし、全然頭に入ってきません。なんとなく読者に不親切な説明、盛り上がらない描写。何も起きないわけではなく、殺人こそ起きませんが銃撃などもあるのでそこまで地味ではないんだけど……つまりこれ単純につまんねぇんだなぁ。もうダメだ。おまけに読み終わってこみ上げるフラストレーションがやばいし。ピブル警視のキャラクターも、これというほどの何かもないし。

というわけで感想もこれくらいで。『眠りと死は兄弟』も似た感じらしいから、次ディキンスン読むなら別のにします。『キングとジョーカー』は絶対面白そうなので、そっちかな。

原 題:The Lizard in the Cup(1972)
書 名:盃のなかのトカゲ
著 者:ピーター・ディキンスン Peter Dickinson
訳 者:大庭忠男
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1236
出版年:1975.02.15 1刷

評価★★☆☆☆
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生ける屍
『生ける屍』ピーター・ディキンスン(ちくま文庫)

医薬品会社の実験薬理学者フォックス。カリブ海の島に派遣されるが、そこは魔術を信仰する島民を独裁者が支配し、秘密警察の跳梁する島だった――。陰謀に巻き込まれ、人体実験に加担させられるフォックス。だが事態は大きく変転する。囚人との逃亡、クーデター、そして…。果たしてフォックスを嵌めた犯人は?幻の小説、復刊。(本書あらすじより)

ついに復刊してしまった(コラ)ピーター・ディキンスン『生ける屍』です。
いやでもこの作品、やたらと古書価は高いですけど、あまり良いウワサを聞かないような、と思って恐る恐る読み始めてみましたが……。う、うぅん、これは評価が難しい作品だ……自分はこういうのは苦手としか言い様がないですね……。
舞台はカリブ海の独裁国家。人々は土着信仰的な“魔術”の存在を信じ、支配者は事実魔術を使っている(らしい)……という設定は面白いんですけど。
独裁政治の風刺だとか科学と魔術の対比だとか「生ける屍」というテーマ(そして主人公)だとか、まぁ色々と読み方はあるんでしょうが、端的に言って話が面白くないのです。というか楽しめないというか。実験のことにしか関心のない科学者がカリブ海の小国に囚われ、魔術の力で状況を打開する……と話だけ抜き出せば楽しいのにダラダラダラダラとした物語に全く入り込めず。

全くヒーロー的なところのないクソ真面目科学者である超受動的主人公は主体性を持たない“生ける屍”で、嫌がってやらされたはずの人体実験も段々ガチでやっちゃっていつもの鼠の実験と同じだぜみたいなこと言い始めるし、革命とか政治よりも鼠の方が好き、という相当な人間です。うん、こういう意気地のない人間がしだいに変わっていく様を見るのは確かに楽しいですね。彼の態度の変化故に迎える後半の脱出劇と、彼独自の正義感に基づいたラストはなかなか味わい深いものです。

ところが登場人物のセリフや主人公の考えがいちいち長いし哲学的ってかだらだらしているもんだから(あくまで自分は)読んでいてすごく退屈だったんですよ。せっかく面白いストーリーもこうも説明臭く風刺臭くやられるとなんかどうでもよくなってきちゃうんだよなぁ。

というわけで、個人的にはオススメしにくい作品となってしまいました。非常に独特な、淡々としてぼんやりとした、かつ突き放したような雰囲気にいったんはまってしまえば、好きになれるんだろうと思います。とりあえず次は大傑作らしい『キングとジョーカー』を読んでみますかねぇ。

書 名:生ける屍(1977)
著 者:ピーター・ディキンスン
出版社:筑摩書房
    ちくま文庫 て-13-1
出版年:2013.6.10 1刷

評価★★☆☆☆