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『ゴッサムの神々』リンジー・フェイ(創元推理文庫)

1845年、ニューヨーク。火事で顔にやけどを負ったティムは、創設まもないNY市警察の警官になった。ある夜、彼は血まみれの少女とぶつかる。「彼、切り刻まれちゃう」と口走った彼女の言葉どおり、胴体を十字に切り裂かれた少年の死体が発見される。だがそれは、街を震撼させた大事件の始まりにすぎなかった……。不可解な謎と激動の時代を生き抜く人々を鮮烈に活写した傑作。(本書上巻あらすじより)

今年の新刊の中では、地味ながらそこそこ評判の良い『ゴッサムの神々』です。19世紀が舞台なのに、アメリカ物なのでヴィクトリアンミステリじゃないというね。ふむふむ、「ニューヨーク最初の警官」という副題も面白そうじゃないですか。

と思って読みはじめましたが、確かに面白いです。1845年のニューヨークが目の前に立ち上るかのようなリアルな描写は実際すごかったし、ストーリーもなかなか楽しめました。
……ましたが、個人的な意見ですけどね、なぜこれが各所で傑作傑作と連呼されているのか、いまいちピンと来ないというのが正直な感想なのです。

大筋としては、売春をしている(させられている)少年たちの連続殺人事件を、ニューヨークに創設されたばかりで、その第一世代の警官となった主人公ティムが、持ち前の観察力を見込まれて捜査していく……というものです。プロットはダレ気味とまではいかないけどちょっと単調で、ニューヨークの描写がなかったらもたないんじゃないかという気がします。「ニューヨーク最初の警官」というテーマも生かされてはいるけど、なんか序盤の設定に留まってしまっていて、やや物足りないかな。前半は勢いがあるんですが、後半追い込んだのに失速したような印象を受けます。
キャラクターもそりゃあ生き生きとしてはいますが、なんか面白くないんですよねー。放置気味な人が何人かいるし、主人公の兄やら主人公の恋する慈善精神溢るる女性やらがいかにも作られた人間っぽいところがあるせいで、キャラを抜き出して褒めたくなるほどではなかったです。さすがにこのへんの感想は人によるでしょうが。

おそらく見所の1つは、1845年のニューヨークの描写でしょう。これは非常に上手いですね。ジャガイモ飢饉により流入してきたアイルランド人とWASP間の宗教対立や、貧民街のうらぶれた様子が事細かに描かれ、目に浮かぶようです。物語全体の背景としてこれ以上ない魅力的な設定でしょう。なるほど、これはフェイさん偉い。
まぁちょっと、宗教対立をあれだけプッシュしたわりに、あの収束のさせ方はどうなのとは思いました。アイルランド移民の話を盛んに振るわりに移民の話が案外表面的なのがちょっと気になって。ただまぁ、これは歴史ミステリの限界でしょうね、史実に反しないよう書かなければいけないわけですし。
とまぁそんなことを考えながら読むうちに、突然、これ読むなら代わりにディケンズ読みたいなぁと思い始めてしまったのですよ。そりゃあ新人作家を大作家様と比べるのはどうかと思いますし、そもそも国が違うんですが。こういう元祖ニューヨークの描写はあくまで補強要素・強い背景要素に留まって欲しいよなぁと自分は思います。そこばっかり持ち上げるんじゃなくてね。やっぱりストーリーありきですから、こういうのは。

自分のモヤモヤ感を結局うまく説明できそうにないのでここらでやめます。合わなかったってことなのかなぁ。

書 名:ゴッサムの神々(2012)
著 者:リンジー・フェイ
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mフ-27-1、Mフ-27-2
出版年:2013.8.16 初版

評価★★★☆☆
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