お菓子の家
『お菓子の家』カーリン・イェルハルドセン(創元推理文庫)

数週間の入院生活を終え自宅に戻った老婦人が見つけたのは、見知らぬ男の死体だった。そのころ誰も知らぬある場所で、殺人者は高揚した気分で自らの行為を思い返していた。悔やんではいない。もっと苦しめてやれなかったのが残念だった。そう、これで終わりではない。ショーベリ警視率いる警察の調べはいっこうに進まず、そのあいだにも次の被害者が……。スウェーデン警察小説の鮮烈なデビュー作。ショーベリ警視シリーズ第一弾。(本書あらすじより)

プロットには捻りがなく察しのいい人なら寸分たがわず真相に気付けるだろうし、ずんどこ殺人が起こる割には展開がゆっくりかつ平坦であるなど、欠点の目立つ作品ではあります。
あるんだけど、刑事たちの描写が実に丁寧で魅力的であるため大いに引き込まれてしまいました。いやー自分でもびっくり。結構楽しめたのです。ホント大した作品じゃないのに。

ミッシングリンク的な連続殺人ものです。犯人の動機らしきもの(幼いころ、幼稚園時代のいじめ)は冒頭で読者にばっちり示されているので、読んでいる人にとっては全くミッシングしてませんが、刑事たちにはもちろん分かりません(そもそも連続殺人であることすら最初は分からないのです)。最初の事件の捜査に関わる主役の刑事たち、ショーベリ警視以下もろもろがいつまで経ってもそのことに気付かないせいで、どうしても展開が遅くなってしまうのはちょっと問題かな(気付いたら気付いたで犯人がそんなに賢くないからすぐ捕まっちゃうのもそれはそれで安易だし)。動機や犯人や展開に意外性はほとんどないと思います。ミステリを読み慣れている人ならまぁ気付くでしょうね。ここだけ見ると大したことはありません。

ただ、警察小説として見ると非常に面白い作品です。刑事たちの私生活や過去が、本筋とは全く関係はないのにやたらと語られ中盤までの話を盛り上げていきます(本当に関係ないんだから笑っちゃう)。ここが意外と面白いんですよ。北欧の家庭事情などが垣間見えるのも思ったより楽しかったし。380ページという決して長くない小説ですが、そういう部分にかなり筆を割いているあたり、シリーズ物として刑事たちを描こうとする作者の姿勢が見えるような見えないような。
それにまぁ、こんなこと言ったら身もふたもないですけど、連続殺人ものというのは、それだけでベタかつ王道ですから、そこそこ楽しくどんどこ読めちゃうんですよね。

というわけで個人的にはお気に入り。ただ、欠点がかなり目立つので、どれだけ評価されるかと言うと難しい……というか厳しいでしょうねー。最後とか色々ほったらかしたまま終わっちゃっているのはどうかと思いますし。いや冗談じゃなくどうかと思うので、ちゃんと続編出してよね、東京創元社さん。

書 名:お菓子の家(2008)
著 者:カーリン・イェルハルドセン
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mイ-4-1
出版年:2013.6.14 初版

評価★★★★☆
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