マーチ博士の四人の息子
『マーチ博士の四人の息子』ブリジット・オベール(HM文庫)

医者のマーチ博士の広壮な館に住み込むメイドのジニーは、ある日大変な日記を発見した。書き手は生まれながらの殺人狂で、幼い頃から快楽のための殺人を繰り返してきたと告白していた。そして自分はマーチ博士の4人の息子――クラーク、ジャック、マーク、スターク――の中の一人であり、殺人の衝動は強まるばかりであると。『悪童日記』のアゴタ・クリストフが絶賛したフランスの新星オベールのトリッキーなデビュー作。(本書あらすじより)

一時期は毎年のように訳されていたブリジット・オベールの処女作です。
フランスミステリにありがち(?)な、ワントリック&心理ものです。やっていることは面白いのですが、かなり反則気味であること、中盤がややダレることなどにより、手放しでは褒めにくい作品となっています。というか、欠点の方が目立っちゃってるんですね、はい。

殺人衝動を持つ男の日記、およびそれを偶然見つけてしまったメイドの日記が交互に語られていきます。日々書かれていく殺人犯の日記をメイドは読みながら、マーチ博士の四人の息子のうち、誰が殺人犯なのかを考えようとするのですが、次第に犯人もメイドが自分の日記を盗み見していることに気付き……というサスペンス仕立て。殺人者の日記と、メイドの日記では、訳者が違うのです。なかなか上手いことやったなぁと。
メイドが犯人の試みを阻止しようと奮闘し始めるあたりから物語に緊迫感が生まれてかなり面白くなるのですが、それまでは手記手記手記手記でちょっと(かなり)退屈。さらにこのメイドがいまいち頭が良くないせいで、終盤何だかよく分からない展開になってしまうんですよねー……この展開いるのかなぁ。デビュー作ということもあるとは思うのですが、単調かつメリハリのない展開は、正直いただけません。決してつまらなくはないだけにもったいないところ。

そしてラスト、驚愕の真相が明かされるわけですが……い、いやぁ、これは……伏線がなくはないとは言え、さすがに反則なのでは。自分はあんまりアンフェアとか言わない人ですけど、これはいくら何でも唐突過ぎます。「そ、そうだったのかー(棒)」って感じですよ、ちょいとちょいと。
それよりも、真相が明かされる前、お葬式のシーンの方がはるかに素晴らしかったですね。読者を一気にゾクッとさせる1文。これまで読んできた物語が全てひっくり返ってしまうような。……まぁ、その後の真相を読んで、悪い意味でひっくり返るというわけですが。

しかしこういうのを読むと、日本の新本格に最も近いのはフランスミステリ、という意見がなるほどなぁと思えてきます(そういうの抜きにして、『マーチ博士の四人の息子』は単に微妙な作品ですが)。一作ごとに大きく作風が違う作家らしいので、他のも読んでみるつもりです。

書 名:マーチ博士の四人の息子(1992)
著 者:ブリジット・オベール
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 213-1
出版年:1997.2.28 1刷

評価★★★☆☆
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