ローマで消えた女たち
『ローマで消えた女たち』ドナート・カッリージ(ハヤカワ・ミステリ)

ローマで女子学生が失踪した。彼女は未解決の連続誘拐殺人事件の新たな被害者なのではないか? ヴァチカンの秘密組織に属する神父マルクスは犯人を追うが、事件は見かけほど単純ではなかった……。一方、五カ月前に事故死したという夫が実は殺されたのではないかと疑うミラノ県警の写真分析官サンドラは、夫が死んだローマで独自に調査を始める。マルクスとサンドラの道が交わるとき、古都の奥深くに潜む戦慄の真実が明らかになる。『六人目の少女』で世界を席巻したイタリアの新星が放つ傑作サイコサスペンス!(本書あらすじより)

今年のポケミスです。
えー、皆さん、覚えてらっしゃるでしょうか。ワタクシが去年絶賛した『六人目の少女』なるキワモノ感極まりないサイコサスペンスを。あの作者の新作でございます。去年絶賛してしまった身としてはさっさと読むしかないのです。もう読む前から確実にキワモノであることが確定しております。メフィスト賞みたいなものです。いやほんとそうです。

結論から言いましょう。世紀の詰め込みすぎ風呂敷心配事案作でデビューしたカッリージさんの新作は、相変わらず詰め込み過ぎで、心底頭のおかしいオチがつき、おまけに畳めませんでした(完) うん……すごいねカッリージさんは……。
しかしやっぱりこの人の作品の頭悪そうな感じは好きです。ただし今作はミッションクリア形式の連続がやや冗長で、前作のようなリーダビリティには欠けるし、どんでん返しや話のまとまりから言っても(インパクトはあるけど)前作の方が出来は上です。

さて、ストーリーは、神父の属する秘密組織と謎の墜落事故死と誘拐殺人犯とインターポールと19年前の殺人事件と暗号とハンターとカメレオン症候群とがバラバラに進行していって果たしてどうつながるのかぁ???あれぇぇぇ???収束しないぞおぉぉぉ?????っていう感じです。全然伝わりませんね。伝える気がそもそもないので仕方ありません。公式あらすじは間違ってはいませんが、あんなもの氷山の一角です。
ま、要するに、記憶のあいまいな聖職者が、謎の裏ボスが示してくる手がかりを追って次々に悲劇を捜査していくというミッションクリア系で、様々な事件を解決していくことで真相にたどり着く、的なやつです。この聖職者の属する秘密組織の正体がまず噴飯物で、作者は天才だなとここで確信しました。モンテイエの某作を3歩くらい進めた感じです。ってモンテイエは1つしか読んでないんでした。
ただしこれが順繰りに手がかりを追うばかりでやや単調、おまけにポケミス500ページ超だから、さすがに長いですね。中だるみは否定できません。この秘密組織に巻き込まれた夫の事故死を調査する女性警察官なんかを絡めることで、ダブル主人公にし、頑張って話を引っ張ってはいるんですが、正直(ストーリーにもキャラにも)あんまり魅力がないんですよね。各ミッションというか事件は十分濃くて練られているので面白いのですが、これがいくつも続くとさすがに胃もたれしてくるし、メインの筋が全然進んでいないのにもイライラしてきます。そもそも真犯人は何をしたいのかさっぱり分かりません。頭おかしいんじゃないか……あ、そうなのか。

というわけで正直後半げんなりしていたんですが、ラストがね……なんかもうどんでん返しはさておき(これは普通に面白い)、わっけわかんないサプライズを唐突に投下してくるんですよ、全然いらないのに。これは笑うしかありません。こういうバカっぽいドガーン!みたいな結末、超好きです。

というわけで悪くはなかったのですが、ぶっちゃけオススメするほどではないかな……。『六人目の少女』の方が正統派的に面白いと思います。でもこういうチャレンジングな海外ミステリはもっと読んでみたいし、もっと紹介して欲しいですね。

書 名:ローマで消えた女たち(2011)
著 者:ドナート・カッリージ
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1884
出版年:2014.06.15 1刷

評価★★★★☆
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六人目の少女
『六人目の少女』ドナート・カッリージ(ハヤカワポケミス)

森のなかで見つかった六本の左腕。それは、世間を騒がせる連続少女誘拐事件の被害者たちのものだと判明する。しかし、誘拐された少女は五人だった。六人目の被害者は誰なのか。失踪人捜索のエキスパートであるミーラ・ヴァスケス捜査官は、高名な犯罪学者ゴラン・ガヴィラとともに特別捜査班に加わることになる。だが、警察の懸命の捜査を嘲笑うかのように、犯人は少女の遺体を次々と発見させて……。フランス国鉄ミステリ大賞、バンカレッラ賞など数々のミステリ賞を受賞した息もつかせぬ傑作サイコサスペンス。(本書あらすじより)

読み終わってからずっと、妙に偏愛している作品です。面白いよ、これは。
いかにもデビュー長編らしく、色々な要素を詰め込みまくって読者を飽きさせまいと次から次へと物語を動かしどんでん返しを何度も用意している作品。ザ・エンタメ。それが実に良いのです。これだけ面白く読ませる作品に文句なんてありません。

基本的には超天才犯罪者vs犯罪学者率いる特別捜査班、というお話。捜査班のメンバーを少ない人数に抑え、それぞれにしっかりエピソードを持たせることで物語に上手く絡めている点には感心。特に、子供の失踪専門であり飛び入り参加となっているミーラ捜査官と、チーフでありながら警察組織にはあくまで属していない犯罪学者ゴランという「外」に位置するキャラクターの使い方が優れています。
また、既に死亡が分かっている誘拐された5人の少女の死体を順に発見させる、というゲーム性の高い展開により、緊張感を保ちつつ一気読みさせることに成功していますね。これだけ長いのにダレません。先を期待させつつじっくりと話を進めているため、大量のネタが上手く長編の中に溶け込んでいるのです。

そんでもって、このネタの数が尋常じゃないんですよねー。終盤なんかこれでもかとばかりに衝撃の事実が次々と明らかになっていくわけで、ここら辺は好みが分かれるかも(ちょっと詰め込みすぎではありますしね)。それともう1点、どんでん返しというのとは違うけど、なかなか面白い展開があるのですが……いやぁ、自分はこういうの大好きですよ。怒る人は怒りそうだけど。こういうのがヨーロッパミステリの懐の広さなのかなぁと思ったり思わなかったり。昨年のポケミスのあれといい、最近のヨーロッパではこういうのが流行っているんでしょうか。

という感じで、やりすぎ感も大いにあるのですが、なかなか楽しめる一冊でした。このミスの投票の6位に入れたくなるような作品、というか(違うか)。程よく面白いサイコサスペンスを読みたい方にオススメです。
ちなみに本書はイタリアミステリですが、ポケミスに収録されているイタリアミステリは、これと、ルドヴィコ・デンティーチェ『夜の刑事』(ポケミス1110)しかないそうです。やはり紹介数が少ないですね……第二外国語イタリア語選択者としては残念。
ちなみにちなみに、カッリージさんと自分は同じ誕生日なのでした(どうでもいい)。

書 名:六人目の少女(2009)
著 者:ドナート・カッリージ
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1867
出版年:2013.1.15 1刷

評価★★★★☆