七人のおば
『七人のおば』パット・マガー(創元推理文庫)

結婚し渡英したサリーの許へ届いた友人の手紙で、おばが夫を毒殺して自殺したことを知らされた。が、彼女にはおばが七人いるのに、肝心の名前が書いてなかった。サリーと夫のピーターは、おばたちと暮らした七年間を回想しながら、はたしてどのおばなのか、見当をつけようと試みる。一作ごとに趣向を凝らすマガーの代表作!(本書あらすじより)

七人のおばのうち、誰が夫を殺したのか――という話ではあるのですが、殺人までの過程を回想シーンによりひたすら振り返る物語なので、フーダニットっぽさはあまりありません。サリーの回想なので、もちろん回想中に殺人などは起きず、ひたすらおばたちの起こす騒動が描かれることになります。強烈な個性を持つおばの居並ぶドロドロの家庭を、殺人事件なしに面白く描き切った傑作です。

七人のおばは、それぞれ七つの大罪を象徴しているようですね。それにより各々異様に個性が発揮されており、描き分けが非常にしっかりしています。彼女たちの起こす騒動を追っていくだけで楽しく読めるんですから、大したもんですよねぇ。明らかに一癖も二癖もあるおばたちが、一冊かけて延々と描かれていくのです。
しかも七人のエピソードがめっちゃかしっちゃか複雑に絡み合っているので、単なる昼ドラの寄せ集めにはなっていません。おばの年齢差により、騒動の起きるタイミングがいつまでも続くよう調節されているのも上手いところ。しっかしこんな家に住みたくないですねぇ……サリーの精神力すごい。

推理については、直前で非常に大きな手がかりを示していることもあり、分かる人は分かるでしょう。ぶっちゃけ誰が夫を殺していてもおかしくないですし、フェアとか論理とかそんなものはほぼありません。それでもきちんと意外性を持った真相を作り出しているのは上手いですねぇ、感心しました。さりげなく物語中に伏線を散らしていく様が、思ったより秀逸です。

……ただ正直言って、吉井さんそこまでメンタル強くないので、彼女たちの自分勝手さを読み続けるのがちょっと辛かったです。特にクララとアグネスとジュディね。特に特に前半はクララ、後半はジュディね。面白いことは面白いんですが……うぅぅぅやっぱちょっとだけしんどいっす。

とにかく、海外古典本格ミステリ好きであれば、必読の一冊でしょう。てっきり延々と推理を重ねていくような安楽椅子物を想像していたのですが、いやいやとんでもない、ひたすらうざったい家族を描く、実にイギリスらしいミステリでした(いやマガーはアメリカ人なんだけど)。オススメです。

書 名七人のおば(1947)
著 者:パット・マガー
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mマ-5-4
出版年:1986.8.22 初版
    1993.5.21 12版

評価★★★★☆
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