殺す鳥
『殺す鳥』ジョアンナ・ハインズ

夏のコーンウォールで、女流詩人キルスティンは死んだ。バスタブの中、裸で。自殺という検死審問の結論に、娘のサムはただひとり異議を唱える。本当に自殺なら、母の日記と、詩集の表題作になるはずだった詩「殺す鳥」はどうして見つからない? 消えた日記と詩を探すサムの行動が、事件に新たな局面をもたらす……。心理描写に長けた英国の才媛が贈る、サスペンスに満ちた逸品。(本書あらすじより)

読む前からあまり気持ちが乗らなかった1冊です。なんかなぁ、こういうサスペンス系を読むのって、いくら新刊チェックのためとはいえめんどくさいのです。
偉そうな言い方ですが、そんなに悪くはありません。作者が450ページかけて描き出そうとしたものは、地味ながらもかなり強烈です。こればっかはネタバレになってしまうので言えませんが、なかなかきついパンチであることは確か。

ただ、いくらその点を褒められるとしても、いかんせんストーリーに魅力がなさすぎるのです。わざわざ読むべきほどの作品かと言われると……うぅん、微妙ですね。
まずストーリー展開が不自然なのがよくありません。主人公サム(母親の死の真相を求めて奔走する美少女ではあるが、性格は結構いけ好かない)とミックがなぜいきなりくっつくのか? ホブデン裁判をBGMとして用いるならもっと全面に出すべきではないか? 犯人の行動の違和感は? つまり、雑なのです。粗が目立ちます。
一番良くないのが、終盤に入って唐突に○○が見つかること。これはいくらなんでも適当すぎでしょう。これ以降話はようやく盛り上がって来ますが、そこまでの物語にあまりに魅力がないので楽しめません。登場人物の心理描写や造形で読ませて欲しいのですが、彼らの人生に興味が湧かないし、共感も湧かないし。はっきり言ってハインズさん、そんなに上手くない気がするんだよなぁ。

『殺す鳥』のつまらなさとして登場人物をあげましたけど、その中でも主人公っぽいポジションのサムは致命的です。さっきも言いましたが、この子、とにかく身勝手・わがままで、一貫した魅力を全く持っていないように感じます。あらすじを読めば分かる通り、サムのせいで、「自殺」と判断されていた事件がぐちゃぐちゃとしていくわけですが、そのサムが自殺として終わらせたがらないのはまぁ分かるものの、サムに同情できるかと言えばはっきり言ってそうではないのです。じゃあむしろ読者はサムに共感できないように作者が狙っているのか、自分勝手な主人公、という設定を与えたがっているのかといえば、そうでもない気がするし。このサムのキャラクターについては、他の方に感想を聞いてみたいところです。

ということで、『殺す鳥』、さっきも言ったように悪くはないですが、両手をあげてオススメしたいような作品ではないなぁ、というのが正直なところ。もっと面白いミステリがいっぱいあります。たぶん。

書 名:殺す鳥(2006)
著 者:ジョアンナ・ハインズ
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mハ-20-1
出版年:2012.4.27 初版

評価★★★☆☆
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