アイ・コレクター
『アイ・コレクター』セバスチャン・フィツェック(ポケミス)

ベルリンを震撼させる連続殺人事件。その手口は共通していた。子供を誘拐して母親を殺し、設定した制限時間内に父親が探し出せなければその子供を殺す、というものだ。殺された子供が左目を抉り取られていたことから、犯人は“目の収集人”と呼ばれた。元ベルリン警察の交渉人で、今は新聞記者として活躍するツォルバッハは事件を追うが、犯人の罠にはまり、容疑者にされてしまう。特異な能力を持つ盲目の女性の協力を得て調査を進める彼の前に、やがて想像を絶する真相が!エピローグから始まる奇抜な構成、予測不能の展開。『治療島』の著者が放つ衝撃作。(本書あらすじより)

えー、まぁ、普段からこのブログを見ている人なら分かると思うんですが、この手のあらすじを見るだけで自分としては読む気が失せるわけですよ。「殺された子供が左目を抉り取られ」とか既にもう読みたくないですよ、はい。いくらフィツェックが有名とはいえ。
ところが、お偉いさん(書評家さんとか)達が、「フィツェックの中では一番の出来といっていいくらい素晴らしいので早く読め」と言ってくるので、しょうがねぇと観念して読み始めたわけです。


この小説、いわゆるノンブル(ページのことです)に面白い仕掛けがしてあります。最初のページ、405ページからどんどんページ数が減っていって、最後のページが1ページになっています。さらに、最初の章がエピローグで、章番号もどんどん減っていき、最後にプロローグがあるのです。
……と言われてまず想像するのが、つまりこれは一種の倒叙っぽい何かじゃないかな、ってことですよ。犯罪が行われたところから遡るとか、犯人逮捕から事件発生まで戻るとか、そういう感じ。

と思いきや、全然そんなことはなく、普通に話が進行します。それこそ普通に。つまり勘違いしては困るのですが、このノンブルの仕掛けというのは、いわゆる「トリック」的な仕掛けではない、ということなのですよ。
ところが読み終わってみると……うぉぉぉぉ、なるほど、これは確かにすごいです。ここまで「皮肉な結末」が強烈なのも珍しい。ぶっちゃけ全く好みではありませんが、してやられた、という気分です。見事に騙されたという思い&とんでもない不快感がごったまぜになって。よくもまぁこんなものを思いつくな、と。この仕掛けは、読後にあるインパクトを与えるために用いられているんですよ……としか言えないので、後は読んで確かめてください。

なお、この仕掛けを存分に味わうためにも、後書きを読むのは必ず最後にした方がいいですね。ネタバレではないですが……読まない方がもっと驚けます。


いや実際、危惧していたよりはるかに読みやすく、グイグイいきました。思ったほどグロくもなかったし。「サイコキラー」「グロい死体」に加え、「息苦しい」「うざい上司」「主人公が容疑者」などなど、自分が苦手な要素が次々に出て来て、あぁもう、これで「足引っ張る相棒」が出てたら大変なことになってたなぁとか思うくらい嫌な要素てんこ盛りなんですが。でもこれだけ楽しめたんだから、やっぱり面白いのに間違いありません。
……という感じで、ネタバレ防止のためにもあまり書けないのでここらへんでやめますが一つだけケチをつけます。無意味に章で引っ張るのはやめてください。次の章で、「……が、実は何でもなかった」みたいなのオンパレードで……これはちょっと興をそぎますね。はい、文句はこれだけです。

あ、あと、19ページの誤植、あれは直した方がいいですね。逆にぶったまげます。

というわけで、かなり印象に残るミステリであることは間違いないです。今年出た中ではかなり良い方だと思うんですけどねぇ。年末ランキングではどうなるでしょうか。
それにしても、ノンブルが逆、って結構良いですね……残りページが常に分かるって、案外便利です。

書 名:アイ・コレクター(2010)
著 者:セバスチャン・フィツェック
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1858
出版年:2012.4.15 1刷

評価★★★★☆
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