長いお別れ
『長いお別れ』レイモンド・チャンドラー(ハヤカワ・ミステリ文庫)

コーヒーをつぎ、タバコに火をつけてくれたら、あとはぼくについてすべてを忘れてくれ──妻を殺したと告白して死んだテリー・レノックスからの手紙にはそう書かれていた。彼の無実を信じ逃亡を助けた私立探偵マーロウには、心の残る結末だった。だが、別の依頼でテリーの隣人の失踪の理由を探るうち、マーロウは再度事件の渦中へと……ハードボイルドの巨匠が瑞々しい文体と非情な視線で男の友情を描き出す畢生の傑作。(本書あらすじより)

ハードボイルド読書会ということで、『マルタの鷹』に続いて読んだわけですが、うぅむ、これは確かに傑作と言えるでしょうね。1953年発表ですか……チャンドラーはずいぶん執筆期間が長いんですね。

とにかく名文に次ぐ名文。マーロウとテリーの美しくホモホモしい(コラ)関係。ただ、純粋な男らしさ、ハードなボイルドらしさでは、マーロウはサム・スペードに負けている気もします。文章も、案外感情表現が入りますし。しかしこの(ある種の)人間的弱さこそが、マーロウの魅力なんでしょうねぇ。
この「人間らしさ」が、ハメットと比べて随分強く出ているように思います。特に端役ですね。タクシーの運ちゃんとか道端のどうでもいい人とか、とにかくベタベタに良いエピソードを生み出しているじゃないですか(笑)こういった「街」を描いていることが、大きな魅力を与える一因であるのは間違いないでしょう。
まあ、確かに面白かったんですが、やっぱり自分は本格ミステリの方が好きなのかなぁという気もします。いくら面白くてものめり込む、というほどの物ではなかったですし、人生のバイブルにあげようとするほどでもありません。これは好みの問題です。

ちなみに、この作品を読むまでは飲まないと決めていたギムレットを、読んでいる途中で遂に飲んでみましたが、うん、これは確かにおいしいです。作中でテリーの好む作り方とは違っていたとは思いますが。マーロウ達が飲んでいるのはベタ甘らしいですね……今度その作り方で頼んでみます(笑)

いくつか気になった点を。
テリーの奥さん、シルヴィアは、重要な役どころの割に、異常に出番が少なく、印象に薄い人物です。ちょっとこれが不思議なのですが。冒頭でマーロウとテリーの友情を描く上で、やはり妻なんてものは邪魔だった、ということなのでしょうか。
マーロウがテリーとの約束を果たすべく、ギムレットを飲むシーンがありますが……えぇと、何で飲んだんですか。これ飲んだ後も、テリーのために突っ走ってますが……ラストを考えるとひょっとしてそういうことだったのでは、という気もしますが、うぅむ、なんででしょう。

書 名:長いお別れ(1953)
著 者:レイモンド・チャンドラー
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 7-1
出版年:1976.4.30 1刷
    2012.6.15 77刷

評価★★★★☆
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