ボーン・コレクター 上 ボーン・コレクター 下
『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー(文春文庫)

ケネディ国際空港からタクシーに乗った出張帰りの男女が忽然と消えた。やがて生き埋めにされた男が発見されたが、地面に突き出た薬指の肉はすっかり削ぎ落とされ、女物の指輪が光っていた…女はどこに!? NY市警は科学捜査専門家リンカーン・ライムに協力を要請する。彼は四肢麻痺でベッドから一歩も動けないのだが……。(本書あらすじより)

さーて、ここから文春文庫ミステリチャレンジスタートです!
……のつもりだったんですが、色々あって数冊で中断してしまいました。なんて適当なんでしょう……。まぁ読まずに終わったクックとかゴダードも今年中には読むはずですので。

さて、初リンカーン・ライムですよ。シリーズ第一作。ディーヴァーの長編はノンシリーズの『追撃の森』だけ読んでいます。
ディーヴァーといえばどんでん返しとよく聞きますが、この頃はまだそれほどでもなかったのでしょうか。こう落とせば驚くよね、という感じ。終盤よりも中盤までのボーン・コレクターとの知恵比べの方が普通に楽しく、終盤は、まぁ、そうですか、という程度だったかなと。

ボンコレ(略した)が拉致した被害者が発見されるたびに次の被害者の居場所を示す隠されたヒントが見つかり……というサスペンスで、「鑑識」の凄さを見せ付けられます。わずかな証拠から犯人に一歩一歩迫っていく組み立ては非常に上手いです。ちゃんと犯人にたどり着ける、ってのがよく出来ているんですよ。科学捜査のおしごと小説としても楽しめます。
合間にFBIとの管轄争いとか(俺が一番嫌いな展開)、四肢麻痺となったリンカーン・ライムとサックス巡査の物語が挿入されるのですが、うーんこれぞアメリカ発エンタメだなぁという感じです。犯人の行う拷問とかグロめの死体とかもそう(でもこのへんは合衆国読者に媚びてる感じがして正直微妙です)。

さて、こういうタイプのどんでん返しのミステリを、自分は勝手に「てってれー型」と呼んでいます。具体的に言うと、「○○は実は○○ではなくて××でしたー!」「な、なんだってー? そういやあの時こうだったしあれはああだったのか!!!」みたいな感じで読者を驚かせに来るやつです。そりゃあ驚くでしょ、っていう。最近のサスペンスに非常に多いのですが、自分はあんまり好きではないんですよね。
(余談ですが、こういうのを本格ミステリに入れていいのか……となると微妙です。本格ミステリ系読者からするとなんだか取って付けたというか、伏線を付け足しで説明しているだけでただひっくり返しただけというか、まぁそう思ってしまうようなアレです。)
だったのでどんでん返し自体はわりかしどうでもいいんです、本書に関しては。えーえー驚きましたとも。

ただとりあえず中盤までは何だかんだ読んでいるあいだは問答無用で面白いし、こういうグイグイ系サスペンスもたまにはいいものだなぁと思ったので、もっと評判の良い次作もなるべく早く読もうと思いました。次作はグロくないらしいので。それが一番大事です、いやマジで。
ちなみにこれ、自ら捜査の出来ない天才とその手足となって現場を動き回る女性警察官、という設定は『羊たちの沈黙』を意識しているんでしょう(ついこの間読んだ本を偉そうに引き合いに出す)。それよりも『ボーン・コレクター』がネロ・ウルフ賞を受賞しているあたりが個人的にはツボです。

書 名:ボーン・コレクター(1997)
著 者:ジェフリー・ディーヴァー
出版社:文藝春秋
    文春文庫 テ-11-3,4
     上巻 2003.05.10 1刷
        2007.12.05 3刷
     下巻 2003.05.10 1刷

評価★★★★☆
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追撃の森
『追撃の森』ジェフリー・ディーヴァー(文春文庫)

通報で森の別荘を訪れた女性保安官補ブリンを殺し屋の銃撃が襲った。逃げ場なし――現場で出会った女を連れ、ブリンは深い森を走る。時は深夜。無線なし。援軍も望めない。二人の女vs二人の殺し屋。暁の死線に向け、知力を駆使した戦いが始まる。襲撃、反撃、逆転、再逆転。天才作家が腕によりをかけて描く超緊迫サスペンス。(本書あらすじより)

人生初ジェフリー・ディーヴァーに『追撃の森』はやめろとか止せとかいや構わんとか十分面白いとか引き返せとか読んでから判断しろとか、何か色々言われながら読了です。とっても面白かったんですが、不満足、な作品……でしょうか。以下ディーヴァーの何たるかとか知らずにごちゃごちゃと。

とにかく難しいことは一切抜きのエンタメ。追う者と終われる者のサスペンス。どんでん返し。そりゃあもちろん面白くないわけがないですよ。当たり前です。
ただ、思ったほど「知力を駆使した戦い」じゃなかったのがまず問題。森に入ってから両者が火花を散らす回数が(このページ数にしては)少ないんですよね。裏を読んだりかいたり罠を張ったりといった知能戦が、ちょっと物足りないです。最初の方のアンモニア辺りが最高で、後はそれを上回れなかったかなあ、という感じ。

また、ぶっちゃけそれほど興味の持てない第二部が長いです。第一部と比べ一気にテンションが下がってしまいまして。どんなどんでん返しが来るかと思いきや(今まで自分が聞いた限りでは「どんでん返しのディーヴァー」なる二つ名があるらしい……いや、それを期待して読むのもかわいそうなんですが)割と大人しめで、何か期待していただけに不満足感を覚えます。
おそらく第二部のメインは、主人公ブリンを始めとする「家族」の物語、ということになるんでしょうね。それはそれで良いんですが、あれだけ熱いバトルを460ページもやっといて、ちょっと家族話も出した後に100ページは、やっぱり長いよなぁ、と思わないでもないです。というか思います。
……思ったんですが、ディーヴァーだとか知らなかったら、もっと素直に楽しめたんじゃないでしょうかね、私。気負い過ぎました。1時間も並ばせるくせに普通すぎる味を誇る松戸の名物鯛焼きみたい。

というわけで、やはりエンタメ作品らしくもうちょっと頑張って欲しかったなぁ、というのがディーヴァー初読者の感想です。次はちゃんとセオリー通り『ボーン・コレクター』を読みますね、はい。

書 名:追撃の森(2008)
著 者:ジェフリー・ディーヴァー
出版社:文藝春秋
    文春文庫 テ-11-21
出版年:2012.6.10 1刷

評価★★★☆☆