マルタの鷹
『マルタの鷹』ダシール・ハメット(ハヤカワ・ミステリ文庫)

ワンダリーと名乗る女が、サム・スペードの事務所を訪ねてきた。妹の駆け落ち相手サーズビーを尾行して、妹の居所をつきとめてほしいという。だが、依頼人の謎めいた美しさと法外の報酬につられてその仕事をかってでたスペードの相棒は何者かに撃たれ、その直後サーズビーも射殺された。サーズビー殺しの嫌疑をかけられたスペードに、ミス・ワンダリーは、訳も言わずただ助けてはしいと哀願するのだが……黄金の鷹像をめぐる金と欲の争いに巻き込まれたスペードの非情な行動を描く、ハードボイルド探偵小説の始祖の不朽の名作、新訳決定版!(本書あらすじより)

毎月のハードボイルド読書会用に読んだものです。思えば、この手の正統的なハードボイルド長編を読むのは初めてですね。まあ、ほら、カーター・ブラウンとか入れてもちょっと違うでしょ……あ、S・J・ローザンは読んでたな。ま、とにかく。

予想外に面白かったです。のっけから。とりあえず「スペードかっけぇ!!」と思うことが出来さえすれば、この本は勝ちです。サム・スペードに萌えて燃えることが全てな作品……と考えていいんだよね。スペードさんマジかっけぇっす。

自ら傷つきながらも、あくまで非情に、あらゆる場面で冷静に「探偵」としての職務を全うするスペードの活躍を楽しむのが主眼となっています。サン・フランシスコは俺の町だ、勝手に荒すんじゃねぇ、というわけですね。一応殺人事件が起きているので、犯人は誰か、という問題がなきにしもあらずなわけですが、はっきり言ってどうでもいいです。それよりも、知力・体力を駆使した様々な敵と駆け引きの方がよっぽどミステリらしい。ぶっちゃけへぼい敵役・読んでてイライラするヒロイン(的な)との攻防・直接的には語られない感情のやり取りこそが見所。ま、知能戦とかそういうものではないですけど。

故に、「マルタの鷹」というスパイもどきの代物にどこか違和感を感じてしまいます。ホンコンだのコンスタンチノープルだの、変に冒険小説っぽい感じが、どうも合わないんですよ。まぁ、ハードボイルドと冒険小説は相反するものではないと思いますが、それでもねぇ、うぅん。

読書会では、『マルタの鷹』は、感情を押し殺した文体だとは言え、結局行動からサム・スペードの感情が読み取れることこそが魅力なのではないか、という意見が出ていましたね。その通りだと思います。次に読む『長いお別れ』がどうなのかは知りませんけど、『マルタの鷹』の魅力の1つが、結局感情を押し殺せないスペードにこそあるというのは確かではないでしょうか。

とにかく、楽しめたので良いです。少なくとも、「ハードボイルド」というジャンルに対するイメージは大きく変わりました。来月は『長いお別れ』を読むわけですが、それまでに『血の収穫』も読め……ないですねどう考えても、はい。

書 名:マルタの鷹(1930)
著 者:ダシール・ハメット
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 143-1
出版年:1988.6.15 1刷

評価★★★★☆
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