通信教育探偵ファイロ・ガッブ
『通信教育探偵ファイロ・ガッブ』エリス・パーカー・バトラー(国書刊行会)

変装しても気づかれる、尾行をすればなぐられる。それでも僕は、ホームズみたいな名探偵なんだ。ホームズにあこがれ、「日の出探偵事務所」の探偵養成通信教育講座を受けて、立派な迷探偵になった、本業・壁紙張り職人ファイロ・ガッブ君の、ちょっとまぬけで愛すべき活躍を描いた短篇集、待望の初邦訳。(本書あらすじより)

1918年に発表された短編集に、単行本未収録作品「針をくれ、ワトソン君!」を足した、バトラーの本邦初作品集です。このシリーズはほぼ毎月雑誌に載せられていたもののようで、単行本未収録作品は他にもたくさんあるようです。
この手のユーモア系ゆるゆるクラシックミステリは、ゆっくりのんびりと読むに限ります。というわけで、20日かけて読み終えました。

目次
「ゆでたまご」(1913)
「ペット」(1914)
「鷲の爪」(1914)
「秘密の地下牢」
「にせ泥棒」
「二セント切手」
「にわとり」
「ドラゴンの目」
「じわりじわりの殺人」(ここまで1913年発表)
「マスター氏の失踪」
「ワッフルズとマスタード」
「名なしのにょろにょろ」(ここまで1914年発表)
「千の半分」
「ディーツ社製、品番七四六二〈ベッシー・ジョン〉」
「ヘンリー」
「埋められた骨」
「ファイロ・ガッブ最大の事件」(ここまで1915年発表)
【付録】「針をくれ、ワトソン君!」(1916)

まぁ、そんなに言うことはないんですが……。
とにかく、自分を名探偵だと勘違いしているおまぬけ探偵ファイロ・ガッブ君が、なし崩し的に事件を解決(?)していく話です。本人は何もやっていないに近いんですが、いつの間にか町での評判も……まあ、マシになるというか……。まっ、みんな、彼の運の良さは認めているようです(笑)

最初の2、3話はちょっとしんどかったんですよ。もう、あまりにゆるゆるで。第一話はちょっと捻りがないわけではありませんが、その後だれてしまうと言うか。
ところが「秘密の地下牢」あたりから、読者の注目がある種変わってくるわけです。ずばり、「ガッブ君はいかにして(なし崩し的に)金を稼ぐのか?」ということです。いろいろ理由はあるんですけど、要はガッブ君は10話以上にわたって金を巻き上げられるはめに陥り(本人自覚なし)、それにともない探偵の仕事でのもうけも(読者サービスで)増えてくるんですよ。この稼ぎっぷりが楽しめます。
こういった連作的要素が一つの見どころでしょうね。登場人物が話をまたいで登場したり、前作の出来事が次作に持ち越されたり。単行本で修正されてこうなったらしいですが、いや、これは良かったです。この頃のミステリで「連作短編集」というのは極めて珍しい気がするのですが。

「二セント切手」「にわとり」「じわりじわりの殺人」「マスター氏の失踪」「ワッフルズとマスタード」といった、この単行本の真ん中あたりの作品が一番面白いかなぁ。とにかく、ゆるっゆるユーモア系ミステリですので、その手に興味がある人はぜひ読んでみて、どんなもんなのかを見てみると良いと思います。その手のに興味がない人は……まあ、つらいかな(笑)

書 名:通信教育探偵ファイロ・ガッブ(1918)
著 者:エリス・パーカー・バトラー
出版社:国書刊行会
出版年:2012.4.25 初版

評価★★★★☆
スポンサーサイト