エジンバラの古い柩
『エジンバラの古い柩』アランナ・ナイト(創元推理文庫)

エジンバラ城の崖下で男の遺体が発見された。捜査をはじめたファロ警部補は現場付近で男性の肖像が描かれたカメオを拾う。さらに警官だった父の遺品から、40年前に城の壁の中から赤ん坊の遺体を納めた古い柩が発見されたという事件の記録と、現場で発見したものと対のメアリー王女のカメオを見つける。ふたつの宝飾品が示す驚愕の真相とは?英国史を覆しかねない大胆な傑作。(本書あらすじより)

自分はね、いつも、もっと面白いミステリを読みたいなぁと思いながら、本を手に取っています。つまり、そういうことです(意味深)。

これを読んではっきりと分かりましたが、どうもこのアランナ・ナイトさんと自分は反りが合わないのです。全然面白くないのです。第一作よかマシになるかと思いきや、それよりはるかに楽しめなかったのです。別に評判そこまで悪くないのに……。こりゃ、もう、しょうがないっすね(一種諦めの境地)。


割と真っ当な本格ミステリであった前作と比べ、フーダニット要素は薄いです。何と言ってもこれは歴史ミステリですからね。メアリー女王に纏わる真実が解きほぐされていくのです。おぉ、『時の娘』みたい!

……と思うでしょ?

この「歴史ミステリ」に意外性を求めてはいけないのです。なぜかと言えば、ぶっちゃけ序盤に明かされてしまうから。いやでも『時の娘』だって真相を明かしてから徐々に証拠固めをするじゃん、とおっしゃるかもしれませんが、別に証拠固めもしません。何やかんやで合っていることにされます。うわぉそんな。
ちなみに柩の件は事実らしいですが、現実では誰も真面目に取り上げていないようですね。義経=チンギスハン説みたいなもんじゃないかな(いやそこまでじゃないか)。

じゃあなぜ帯にデカデカと「歴史ミステリ」と書いてあるのか。そう、ここでいう歴史とは、ファロ警部補のお父さんの時代、19世紀前半のことなのです。つまり、ファロ警部補の時代(=19世紀後半)から、お父さんの時代(=19世紀前半、柩が見つかった頃)を説き明かそう、という、そういうことなんですよ。「19世紀を舞台に繰り広げる16世紀の歴史」ミステリの側面もあるにはありますが、メアリーやエドワード6世は中心ネタではなく、あくまでメインは1830年の柩です。


となると、読めばさらに分かると思いますが、これは陰謀物としての要素が強いんですね。いかに歴史が抹消されたのか、ケネディ暗殺は実は!みたいな。
ただ、その「陰謀」の面白さは認めますが、他がどうもなぁ。肝心の柩云々は根拠が弱すぎだし、犯人の行動も何だか方向性がなくてよく分からないし。
つまり、雑なんですよ。いきあったりばったり感が否めません。ネタを思い付いたはいいけど(これ自体は良い)、それを「小説」として生かしきれていない、というか。見せ方が下手なのです。最後にドーンと「陰謀」を見せて作者がドヤ顔しているに過ぎないんですよ。もはや別に柩じゃなくてもネタは何でもいいよね、という。そのラストだって、もっとファロが葛藤するところを見たかったですし。

あと個人差はあると思いますが、自分はファロ警部補に萌えないので生活パートがそんなに楽しくないのです。恋愛パートなんか前作の二番煎じっぽい何かですよ。

全体的に物足りないのでした。読んでいて楽しくないとも言います。


まぁでもぶっちゃけ、英国王室が扱われている時点で、日本人読者が楽しめる要素がある程度限定されてしまうのは仕方ないんですよね。メアリー大好きなスコットランド人なら読めるんでしょうが。結局身近じゃないから。そこが悔しいっちゃ悔しいかな。『闇と影』読了後も似たようなこと言いましたけど。

ってなわけで、”シリーズ続編としての”三作目は気になりますが(このラストをあっさり流すのではないかと予想してますけど)、そんなに興味が湧かないし、どうもこの作家さんとは合わなそうだなぁということで、もう読まないかもしれません。しっかし、『おやすみなさい、ホームズさん』といい、アランナ・ナイト2冊といい、『闇と影』といい、ここ1年間に読んだ19世紀ミステリのハズレっぷりがとんでもないような……あくまで個人的に。

ちなみにですが、ファロ警部補シリーズを見ると、『To Kill a Queen』『The Seal King Murders』『Faro and the Royals』『The Final Enemy』『Unholy Trinity』と、実にそそられる陰謀物くさいタイトルが並んでおります。うーん。

書 名:エジンバラの古い柩(1989)
著 者:アランナ・ナイト
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mナ-2-2
出版年:2012.7.27 初版

評価★★☆☆☆
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修道院の第二の殺人
『修道院の第二の殺人』アランナ・ナイト(創元推理文庫)

煙ただよう古都、ヴィクトリア朝エジンバラ。パトリック・ハイムズは修道院で働く妻と、そこの学校の教師だった女性を殺した罪で絞首刑に処された。しかし、彼は妻の殺害は認めたが、第二の殺人は頑として否認したまま死んだのだった。彼の最後の訴えを聞いたファロ警部補は、新米医師である義理の息子のヴィンスと再捜査を始める。歴史ミステリの大家が贈る、軽快な犯人捜し!(本書あらすじより)

うぅん……ぶっちゃけ、つまらなかったです。これはもう、向き不向き・好き嫌いの問題としか。

1870年、ヴィクトリア朝のイギリスが舞台だと聞くと、これはもうディケンズ的なザ・歴史ミステリに違いない!作者もディケンズ好きらしいし!……と思ったのがそもそも間違いなんですが。少なくとも、「歴史ミステリ」としての側面に大きく期待しない方が良いですね。この時代を舞台にしたのは、何と言うか単なる雰囲気のためであり、それほど必要性は感じません。随所で「ヴィクトリア朝っぽさを楽しめた!」という感想を見かけますが、個人的にはそれほどでもないというか、当たり前ですがディケンズには勝てないというか。せめて、現代とははっきり違うような文化的側面をもっと描いてくれれば良かったのですが……。

さらに、「歴史ミステリ」ということですが、ミステリとしての側面もイマイチでした。修道院の第一の殺人が結局放置されていたり、容疑者全員の扱いが均等でなかったり、決め手の証拠が皆無だったり、と、なんかこなれてないなぁという印象を受けます。
ということで、ほとんどキャラ小説なのかなぁ、と。ただ、登場人物が割と予定調和的というか、そこまで書きこまれたものではなく、どちらかと言うとありきたり。良い意味でも悪い意味でも緩すぎるんですよ。こういう読みやすい小説を好きな人は一定層いるはずですが、個人的には好みではなかったな、ということです。

とはいえ、続編の告知がね……。スチュアート朝の歴史を覆すらしいですよ。いわば、歴史を舞台に歴史ミステリってことですよ。英国史に挑戦とか、まさに『時の娘』!うぅん、結局続編も買ってしまうのかな……。

書 名:修道院の第二の殺人(1988)
著 者:アランナ・ナイト
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mナ-2-1
出版年:2012.3.16 初版

評価★★☆☆☆