ルシアナ・Bの緩慢なる死
『ルシアナ・Bの緩慢なる死』ギジェルモ・マルティネス(扶桑社ミステリー)

ある日曜日、作家である「私」の元に一本の電話がかかる。10年ぶりに聞くその声の主はルシアナ。有能な美貌のタイピストだった彼女は、いま命の危険を訴え彼に切実に助けを求めていた。この10年の間に彼女を襲った、近親者の相次ぐ不自然な死亡事故。しかし彼女は確信していた。一見無関係に見えるそれぞれの死の背後で、一人の偉大な作家が糸をひいていることを……。想像を凌駕する驚愕の展開。『オックスフォード連続殺人』の著者が贈る、罪と罰をめぐる究極のメタミステリー。(本書あらすじより)

皆さんは覚えているでしょうか。アルゼンチン出身の作家が書き、翻訳当時日本でかなり話題となり、ジョン・ハートとイライジャ・ウッド主演で映画化もされてしまった『オックスフォード連続殺人』という作品を。
そして皆さんは覚えているでしょうか。その作者ギジェルモ・マルティネスの邦訳第2作として出版されるも、まったく話題にならずに消えていった『ルシアナ・Bの緩慢なる死』という作品を。

……というわけで、ついに読みましたマルティネスの2作目。『オックスフォード連続殺人』を読んだの高2の時ですよ。どんだけ前の話だよ。ちなみに偉そうに書きましたが映画観てませんし、出版当時の話題っぷりは知りません。
大作家クロステルに家族や恋人を次々と殺されていると主張する女性ルシアナをめぐる状況を描いたサスペンスで、決してダメとは言いませんし、狙いもよく分かるんですが、とはいえめちゃくちゃモヤモヤする上にあんまり面白くないという何とも言い難い作品です。出来の悪いボアナルみたい。

全体としてサスペンスなのにもかかわらず盛り上がらないのは、話の9割がルシアナとクロステルと回想だからでしょうか。現在進行形の話は、ほぼラストだけ。だから、そういう作風とはいえどうにも動きがありません。
また、これが作者の狙いだというのを分かった上でも、このモヤモヤ感が……。クロステルが「1対7」で復讐をしている、というこの数字にすらモヤモヤするし、真相はたぶんああだろうなと思ってもやっぱりモヤモヤするし、そもそもルシアナ・Bの名字を最後まで明かさない理由も分からないし。『オックスフォード連続殺人』と重ねて考えてみると、作者の数学者らしい要素というか、好きな要素が見えてきて興味深くはあります。

というわけで、まぁ話題にならないよなぁ。『オックスフォード連続殺人』はゴリゴリの本格ミステリだったので、どうしても期待と違うというのもあるかもしれませんが、そうでなくともそもそもイマイチな気がします。っていうかこの人の他の作品ってどういうのなんだろう……全然予想がつかないんだけど……。

原 題:La muerte lenta de Luciana B.(2007)
書 名:ルシアナ・Bの緩慢なる死
著 者:ギジェルモ・マルティネス Guillermo Martínez
訳 者:和泉圭亮
出版社:扶桑社
     扶桑社ミステリー マ-25-2
出版年:2009.06.30 1刷

評価★★★☆☆
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『オックスフォード連続殺人』ギジェルモ・マルティネス(扶桑社文庫)

アルゼンチンからの奨学生として、オックスフォード大学に留学した「私」は22歳。渡英したのもつかのま、下宿先の未亡人の他殺死体を発見してしまう。一緒に第一発見者となった世界的数学者セルダム教授のもとには、謎の記号が書かれた殺人予告メモが届けられていた。その後も、謎のメッセージを伴う不可能犯罪が矢継ぎ早に起こって…。知の巨人セルダムの叡智がいざなう、めくるめく論理のラビリンス。南米アルゼンチンから突如現われた、驚愕の本格ミステリーに瞠目せよ。 (本書あらすじより)

どうでもいいですけど、ギジェルモ・マルティネスという名前が南米風で無駄にかっこいいと思います(笑)

なかなか面白かったと思います。似たようなトリックを作中に仕掛けた本があるらしいですが、それは知らなかったので、素直に面白いと思いました。アルゼンチンの作家ですが、作風はかなりイギリス的であるように思います。むしろ、そこが本書のよさなんですが。

犯人からのメッセージが、なんだってこんな無駄に数学っぽくなきゃいけないんだとはそりゃあ思いましたが、読み終えてみればきちんとした説明があったわけです。犯人にあまりにも都合のいい状況が続いたような気もしますが(というか、途中明らかに都合がいいのがあったのは事実だし、そこんとこ警察も適当だろうと思う)、そんなに気になるものではないと思います。動機も、ある種よく出来ていたわけですよね。

ちなみに、個人的に一番好きなのは、主人公がテニスコートでいちゃつく場面です(笑)

書 名:オックスフォード連続殺人
著 者:ギジェルモ・マルティネス
出 版:扶桑社
   扶桑社文庫
発 行:2006.1 初版

評価★★★☆☆