シャーロット・アームストロング名言2

2018-05

『必死の逃亡者』ジュール・ヴェルヌ - 2018.05.16 Wed

ヴェルヌ,ジュール
必死の逃亡者
『必死の逃亡者』ジュール・ヴェルヌ(創元推理文庫)

太平天国の乱が収まりやらぬ、清朝末の中国。大金持の金馥青年は、ニューヨーク株式市場の大暴落によって、一瞬のうちに全財産を失ってしまった。彼はついに自殺を決意したが、運命の皮肉はその前途にスリルに満ちた冒険と恐怖を用意していたのだ! 広東から万里の長城へと、広漠たる中国大陸を舞台にくり広げられる、波瀾万丈の大冒険小説。(本書あらすじより)

何を隠そう、実はジュール・ヴェルヌが大好きなのです。子供の頃、H・G・ウェルズにはハマらなかったけど、ジュール・ヴェルヌにはハマったのです。どちらも当時は「SF」とみなされた作品ですが、ウェルズがSFのど真ん中である一方、ヴェルヌって当時の最先端の科学を駆使した冒険小説としての趣きが強いじゃないですか。『海底二万里』は、正直、長くてアレだったけど、『十五少年漂流記(二年間の休暇)』とか、『神秘の島』とか、大好きでした。『神秘の島』がね……傑作なんだなコレが……。アンディ・ウィアー『火星の人』が大好きになった原因のひとつが、冒険小説としての『神秘の島』なんじゃね、という推測。

……と、ヴェルヌにアツい気持ちを抱いた中学生時代からはや10年、その後ヴェルヌを読むことはなく、『地底旅行』も『八十日間世界一周』も読むことはなく、大人になってしまったのです。『チャンセラー号の筏』が面白いらしい、など色々情報は入ってきますが、とにかく読んでいなかったのです。
それではいかんだろう!ということで、今回積ん読棚から引っ張り出してきたのが、創元推理文庫SFマークの『必死の逃亡者』です。どマイナー中のどマイナーじゃねぇか。ちなみにSF要素はゼロです。

あらすじ:生きる楽しみを見いだせない中国の金持ち青年・金馥は、自らが破産したことを手紙で知る。ならば生命保険を自分にかけて死んでやろうと、友人である元太平天国の老党員に暗殺を依頼する。ところが暗殺の期日目前、実は金馥は破産していなかったことが判明。慌てて暗殺を阻止すべく暗殺者を探し回るのだが……。
というストーリーの骨格は、異色作家の長編っぽくて地味に面白いです。設定だけは超秀逸だと思います。

『海底二万里』に代表されるように、ヴェルヌの冒険小説は風物風俗など旅行記的面白さの比重が時としてめっちゃ高くなるのではないでしょうか。少なくとも本書はそっち系。で、正直自分はこのタイプをあんまり楽しめないのかなぁ、と感じました。『海底二万里』も退屈だったし。
合間合間の清朝描写は確かに興味深いですし、当時の(ヨーロッパの)読者は興味津々で読んだことでしょう。ですが、いくら何でも長すぎたり多すぎたりで、ストーリーの面白さを損なっているように感じました。あと、単純に読みにくいし。

それから、良くも悪くも19世紀の冒険小説、なんですよね。清朝末期を舞台にした冒険譚で、主人公は中国人ですが、ヨーロッパの洗練された文化のもとで育った知識人である、というところから全部、「ザ・ヨーロッパ中心主義(19世紀)」って感じがめちゃ強いです。そして、21世紀の読者が19世紀のヴェルヌの冒険小説を読むと、どう見ても罠だとしか思えないものが罠じゃなかったり、死んだと思われた人が本当に死んでいたりするので、ある意味展開が意外でしかないのがウケます(一応最後にサプライズはあるけど)。

というわけで、子供の頃ほどの楽しさは得られませんでした。これは、自分が大人になったからなのか、それとも『必死の逃亡者』のせいなのか。この答えは、今後もヴェルヌを読んでいくことで分かることでしょう。

原 題:Les Tribulations d'un Chinois en Chine (1879)
書 名:必死の逃亡者
著 者:ジュール・ヴェルヌ Jules Verne
訳 者:石川湧
出版社:東京創元社
     創元推理文庫 517-2(SFウ-1-9)
出版年:1972.06.23 初版
     1991.06.28 5版

評価★★☆☆☆
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『狙った椅子』ジュリアン・シモンズ - 2018.05.13 Sun

シモンズ,ジュリアン
狙った椅子
『狙った椅子』ジュリアン・シモンズ(crime club)

グロス出版社推理小説課の編集者デイヴは、新しく創刊される雑誌「犯罪実話」の編集長に昇進の予定で、その見込みはほぼ確実だった。ところが課長会議の結果、意外にも新編集長はデイヴの同僚ウィリーに決まってしまった。やけくそになったデイヴは夜の女を拾ってホテルに……。ところが翌日、会社では警官が彼を待ち構えていた。新編集長が昨夜殺され、重大な嫌疑が彼にかかってきたのだ。デイヴはアリバイの証明に必死になった。しかし、彼の首にかかった輪は刻々と締まり、身動きがとれなくなってきた。課長会議の決定がなぜ逆転したのか、そこに秘密があるのではなかろうか?(本書文庫版あらすじより)

初シモンズ。創元推理文庫だとタイトルが『ねらった椅子』、 crime club だとタイトルが『狙った椅子』です。
ジュリアン・シモンズって、現在ではどういうイメージを持たれている作家なんでしょう。おそらくですが、『ブラッディ・マーダー』などの評論家としての方が名前を聞く機会が多いのではないでしょうか。ゴールド・ダガー賞受賞の『殺人の色彩』や、MWA長編賞受賞の『犯罪の進行』などが代表作ですが、「犯罪者の視点に立って犯罪に至る過程を描いた犯罪小説の書き手」とか言われても全然イメージがわいてこないわけですよ。
というか、ぶっちゃけ、シモンズの書く犯罪小説って本当に面白いの?っていう。絶対そのジャンルなら、近年もっと面白いのが出ているはずだし、みたいな。と思って今回初めて手に取ったのが、『狙った椅子』だったのですが……。55点くらいだろうなぁと思って読んでみたら、70点くらいだったので、地味に満足度が高くてビックリでした。うそだろ、結構面白いじゃないか……。

出世欲まみれの出版社づとめの自惚れサラリーマン、デイヴ。が、昇進確実と思われていたのに出世を阻まれ、さらに代わりに出世したウィリーが殺害されてしまう。自分にかけられた殺人容疑を晴らすべく、デイヴは奔走することになるが……。

ザ・いかにもな巻き込まれサスペンスではあります。ただ、主人公がかなりの欲丸出し野郎なせいで全然共感できないし、いい話風にまとまるかと思いきやそうもならないし、ラストも絶妙に不快な終わり方なせいで、良い意味で、クセのある作風に仕上がっています。そのくせ、なぜ昇進会議の内容が覆ったのか?から始まる謎など、内容は地味に本格、ってのも良いですね。
やや単調っちゃ単調ですが、過去の殺人犯の正体が出るところなんかは古典っぽい王道だし、悪くないんじゃないでしょうか。植草甚一の言うように、これは主人公のクズっぷりを笑うブラックユーモアミステリ、なんでしょうねぇ。

あくまで、70点は70点ですが、他のシモンズも読もうという気になったので、きちんと楽しめたようです。ポケミスも何冊か積んでいるので、またしばらくしたら手に取ってみようかな。

原 題:The Narrowing Circle (1954)
書 名:狙った椅子
著 者:ジュリアン・シモンズ Julian Symons
訳 者:大西尹明
出版社:東京創元社
     crime club 4
出版年:1958.06.30 初版

評価★★★★☆

『ドーヴァー⑦/撲殺』ジョイス・ポーター - 2018.05.03 Thu

ポーター,ジョイス
ドーヴァー⑦/撲殺
『ドーヴァー⑦/撲殺』ジョイス・ポーター(ハヤカワ・ミステリ)

警察部長ピンカム氏は、まことに面白くなかった。没落しているとはいえ、未だに”閣下”と呼ばれ、この地方に隠然たる勢力を持ち続けているクラウチ卿の言葉に、喉もとまでこみ上げていた抗議のセリフを引込めてしまったのだ。“ロンドン警視庁を呼びたまえ……”たかが、一人の平凡な若者が撲殺された事件の捜査ぐらい、地元の警察で充分なのに。卿の魂胆は見え透いている。物見高い観光客に開放して入場料を取っている、先祖伝来の豪壮な屋敷、ベルツア邸の派手な、しかも無料の宣伝に使いたいのだ。嫌々ロンドンに連絡を取ったピンカム氏にはもう一つ不幸が重なった。こともあろうに、ロンドンから派遣されてきたのは、史上最悪の探偵ドーヴァー主任警部だった……!
殺された若者はゲーリー・マーシ。ベルツア邸の会計係ミス・マーシが、妹の子と称して連れて来た男で、クラウチ卿の執事ティフィンの娘と婚約を交したばかりだったが、ミス・マーシの実の子ではないかという噂が流れていた。クラシックな殺人劇の舞台は、すべて揃っている田舎の豪邸、誇り高き貴族とその執事、そして撲り殺された男。しかし、マグレガー部長刑事を引き連れて、ドーヴァーが乗り込んできたとき、静かな村は上を下への大騒ぎがはじまった……。好調の、傑作ユーモア本格シリーズ第七弾!(本書あらすじより)

じわじわ読み進めているドーヴァー主任警部シリーズも、いよいよ7作目。年1冊ペースで読んだとしても、あと3年で終わってしまう……結構悲しいぞ。
はっきり言って、かなり好きなシリーズなのですが、うーむ、今回はややマンネリ感は否めませんでした。絶対最後に何かバカみたいなどんでん返しを仕込むと思ったのに(軍隊仲間が全員犯人とか、犯人がラスト殺されているとか)、そんなこともなく、平凡な作品に終わってしまった、という感じ。

古き良きイギリスの片田舎に派遣されたドーヴァー主任警部とマグレガー部長刑事。今回の舞台は、貴族の名士がまだまだ力を持つ村。殺された青年は貴族一家の隠し子ではないかというウワサが飛び交う中、ドーヴァーはカロリーの高そうな飯を求めて村人の間を渡り歩くが……?

謎解きはかなりしっかり目。犯人特定の決定的な証拠もなければ最後にどたんば証人という禁じ手ではありますが、ドーヴァーが犯人を決めつけた後の、なぜ殺人がこの日起きたのか、をたどるマグレガー怒涛の伏線回収がアツいのです。会話の隅々からよくもまあ拾ってこれるもんですよ。
とはいえ、ユーモア・ミステリとしては色々と過去作には及ばないのも事実。ドーヴァーがただただ無能で不快なだけのキャラになってしまった(いや実際そうだけど)のが、そろそろ話作りの限界だなぁと。一応、情報提供者とパブで待ち合わせするドーヴァーがビビりまくるシーン、みたいなネタもありますけど、ちゃんと見せ切れていない感じ。今回の主任警部はあちこちで飯だけ食ってます。

いわゆる田舎貴族風刺などを見ると、ジョイス・ポーターの今作のターゲットはいかにもな英国ミステリをぶっ壊すことなんだろうなぁとは思いますが、それこそいつもやってることなので、もっと思い切った真相を用意して欲しかったですね。村人全員が貴族の隠し子、くらいのことはやって欲しいし、この作者ならやれるはず(どういうこと?)。

総じて飽きずに読めるし、普通にスラップスティックドタバタユーモアミステリとして楽しいんだけど、ドーヴァーのキャラクターで持っているだけの作品でした。『⑥/逆襲』が色々な意味でキレキレだっただけに残念。もっと頭のおかしい作品を読みたいんじゃ俺は……と、40年前の作品にダメ出しをしたところで、ドーヴァーの新作が書かれることはないわけで、悲しみしかありません。
このマンネリから脱するための次作が『人質』なのかなぁ。残り3作、衝撃的なホワイダニット見本市としてのドーヴァーシリーズの本領発揮を期待したいところです。

原 題:It's Murder with Dover (1973)
書 名:ドーヴァー⑦/撲殺
著 者:ジョイス・ポーター Joyce Porter
訳 者:乾信一郎
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ 1257
出版年:1976.03.15 1刷

評価★★★☆☆

『悪魔のような女』ボアロー、ナルスジャック - 2018.04.29 Sun

ボワロ&ナルスジャック
悪魔のような女
『悪魔のような女』ボアロー、ナルスジャック(ハヤカワ・ミステリ文庫)

自殺と見せかけて妻を殺し、莫大な保険金を欺し取る――その戦慄の計画を考えついたのは、ラヴィネルの愛人の医師リュシエーヌだった。しがないセールスマンのラヴィネルにとって、彼女と暮らすためには他に方法はない。完璧に練り上げた計画は成功した。しかし、その直後、想像もできない恐ろしい事件が……予測不可能なストーリー展開、あまりに衝撃的な結末。あらゆる恐怖の原点となった、サスペンス小説の不朽の名作。(本書あらすじより)

ボアナルの合作デビュー作であり、代表作でもありますが、初期4作のうち、唯一なぜか読んでいなかったものです。
ボアナルと言えば、説明できない超常的・怪奇的な事件が発生するも、最終的に合意的な解決がなされる、というサスペンスを築き上げたコンビ作家なわけです。が、なぜかずっと、この作品だけ、ただの悪女もので、怪奇現象が起きないもんだと思っていました。起きました(そりゃそうだ)。

ラヴィネルは、保険金を得て、浮気相手のリュシエーヌと一緒になるため、妻を殺す計画を立てた。気弱なラヴィネルに対して、リュシエーヌは冷静沈着で現実的であり、彼女の指示のもと、計画通りに殺人は完了した。だがその後、説明できない得体のしれない出来事が続発し……。

ボアナル最大の弱点は、「でもどうせ論理的に解決するんでしょ?」という読者の視点から、どうしても構図が見えやすいことにあります。『悪魔のような女』はネタ的には古典中の古典と言ってよいので、そういう点では意外性には欠けます。相変わらず心理描写をねっとり描き、誰も何もしないでふわっふわしているだけで一気に100ページ進んだりするので、ストーリーも弱め。
しかし、サスペンスとして、描写や雰囲気づくり、持って行き方がやはりボアナルは上手いんですよね。徐々に怪奇に追いつめられていくラヴィネルの描き方が、というより、作者によるラヴィネルの追いつめ方が絶妙。250ページという短い中で、かなりじっくり読ませる良作ではあります。最後一行の怖さ、まだまだ続きそうな不穏な感じがたまりません。

ただ、初期4作(『悪魔のような女』『影の顔』『死者の中から』『牝狼』)の中では、残念ながら一番下かなぁ。トリック的にもそうですし、何が起こるか分からないストーリーの先の読めなさという点でも他の作品に負けます。一番良いのが『牝狼』なんだけど、これだけ文庫化してないっていう……なぜだ……。
ボアナルって、やっぱり今の視点で見ればトリックはどうしてもしょぼくなってしまうので、時代遅れのサスペンス作家ではあるんでしょう。それでも、驚けるものは驚けるし、話作りやクセの強い文章など唯一無二の作風、いかにもなフランス・ミステリ風味に、ハマれば最高、という作家でもあります。個人的には、今後もどんどん読んでいきたい作家。解説で皆川博子が、タイトルは思い出せないけどこんな内容のボアナルが良かった、とあげている作品、たぶん『呪い』と『女魔術師』なので、次はどっちかを読みたいですね。

原 題:Celle qui n'était plus(1952)
書 名:悪魔のような女
著 者:ボアロー、ナルスジャック Boileau-Narcejac
訳 者:北村太郎
出版社:早川書房
     ハヤカワ・ミステリ文庫 HM 31-3
出版年:1996.07.15 1刷
     1996.07.31 2刷

評価★★★☆☆

『脅迫』ビル・プロンジーニ - 2018.04.28 Sat

プロンジーニ,ビル
脅迫
『脅迫』ビル・プロンジーニ(新潮文庫)

事務所の椅子にもたれてパルプ・マガジンを読んでいると、その著者自身が現われた。そして盗作事件をタネにした脅迫状を差出した。五人の作家が同じ手紙を受けとったという。パルプ・マガジンの大会に出席した私は、たちまち奇妙な密室殺人に巻きこまれたーー。友人の無実を信じる〝名無しの探偵(オプ)〟は、ほとんど絶望的な調査を引き受けたが……。(本書あらすじより)

初ビル・プロンジーニ。名無しの探偵シリーズは、主人公の名前が明かされていないこと、主人公がパルプ・マガジン好きというオタク要素も持ち合わせていること、本格要素の高い作品が多いことで有名な私立探偵小説シリーズ。とりあえず、密室殺人がどかどか出てくるという第7作『脅迫』を手に取ってみました。『海外ミステリー事典』ではこれが代表作扱いで、高校1年の頃からずっと読みたかった本なのです。
いざ読んでみると、想像以上に最初から最後まで思いっきり本格ミステリ味を前面に出していてめちゃくちゃ好みでした。やっぱり1970年代以降の私立探偵小説は当たりが多いなぁ。

事務所の移転が間近に迫るも、なかなかやる気の出ない名無しのオプ。そこにやってきたのはパルプ・マガジン作家のラッセル・ダンサー。彼の所属する〈三文文士の会〉のメンバー全員に脅迫状が送られているため、近く行われるパルプ・マガジン大会に一緒に来て欲しいという依頼だった。個人的な興味もあり大会に出かけたオプだが、そこで待ちうけていたのは、ダンサーが犯人としか思えない密室殺人だった……!

作者による熱烈なパルプ・マガジン礼賛が実に気持ち良いですね。探偵小説オマージュ的な〈三文文士の会〉なる設定に、連続密室殺人、西部劇ばりの最後のバトルシーンがあり、パルプ・マガジンオタクの主人公が、「俺ってパルプ・マガジン的なハードボイルドに向いてないよね! タフさ的な意味で!」というメタ視点を入れつつ解決するのです。最高かよ。
事務所移転という名無しの探偵自身の話をちょっと交えることで、古き良き(または悪き)物に対するノルタルジックな雰囲気をどことなく感じさせるあたりがまた良いじゃないですか。全編、おとぎ話かよってくらい現実感がないのに、なぜか違和感なく私立探偵小説として仕上がっているのは、パルプ・マガジンという題材と、作者の持ち味なのでしょうか。

さらに、名無しの探偵の恋や、友人であり協力者でもあるエバハート警部のプライベートな問題などが、事件そのものとダブって見えるように描かれます。こういった本筋と関係はない部分を、ストーリーに自然に落とし込むのがめちゃくちゃ上手いんです。だから、捜査と並行して描かれる、例えばエバハート警部が主人公を訪れる場面とかがめっちゃ良くってですね……これぞ私立探偵小説ってなもんだよ。

ちなみに密室と謎解き、フーダニットについては、ちょっと面白い部分もあるよ、くらいなので、あんまり期待しないくらいの方が吉。とはいえ、なんちゃって密室ではなく、カーの名前を出してまで、私立探偵小説でこれだけのガチ密室にチャレンジしたことをきちんと評価したいです。

というわけで、普通に満足の一冊でした。くよくよ自省する私立探偵が好きなので、ハードボイルドを読むならやっぱり1970年代以降の私立探偵小説が向いているのかな。そして高校生の頃から読みたかった本を読めて、ちゃんと楽しめるの、むしろ珍しい気が……。
ところで、ビル・プロンジーニの名無しの探偵シリーズって、1971年の第1作から平均年1作ペースをきっちり維持し続けているんですね。すげぇ。晩年のクリスティーみたい。

原 題:Hoodwink(1981)
書 名:脅迫
著 者:ビル・プロンジーニ Bill Pronzini
訳 者:高見浩
出版社:新潮社
     新潮文庫 赤163-5
出版年:1983.01.25 初版

評価★★★★☆

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ヨッシー

Author:ヨッシー
クリスティ、デクスター、グライムズ、ディヴァインが好きな、ヨッシーことTYこと吉井富房を名乗る遅読の新社会人が、日々読み散らかした海外ミステリ(古典と現代が半々くらい)を紹介する趣味のブログです。ブログ開始から7年になりました。ちなみにブログ名は、某テンドーのカラフル怪獣とは全く関係ありません。
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フリーマン,オースチン (0)
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